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4話
顎に手を当てて、じっと絵を見ていたむつだったが、平らになってる所に手をつくと、かたかたと揺れる怖さを堪えてむつは平らな部分に足を乗せた。そして、本当にゆっくりと立ち上がった。
怖さで足が震えると、脚立も揺れる。
「あぁ…止めとけば良かったかも」
むつは独り言を言いながら、右手を伸ばした。左手では。ぎゅぅっとシャツを掴んでいる。怖さと緊張で手には、びっしょりと汗をかいていた。
ごくっと唾を飲みこみ、絵に触れようとした時が、むつは手を止めた。何かが動いたような気がしたからだ。だが、風があるわけでもなく、こんな天井付近で動く物などない。
そうっと辺りを見回したが、当然何もない。もう1度、手を伸ばしたむつは今度こそ触れようとした。
「あ…」
また何かが動いた気がした。虫も何もいない。むつは、目の前の絵に注目していた。そんなはずはないと思っていても、動いたとすればこれだと思ったのだ。




