1話
「けど、やっぱりむつにはあの人もすーぐ話してくれるんだね。やっぱり嫌いだわ、あのいがぐり頭め」
「あたしを間に挟む感じで使うの辞めてくれる?何か2人って仲悪いよね…何かあったの?」
「何もない。それより、警官はあてになんないし…とりあえず、むつが協力してくれる事はパパに話してくる。で、どうにか中に入れるようにも手配するから」
菜々はそう言うと、丸めた名刺をむつに渡した。捨てておけ、という事のようだ。
「帰るの?」
「うん、とりあえず今日はね。むつが依頼を受けてくれるって分かったから安心だし。また近々、来ると思うからさ」
残っていた紅茶を飲み干すと、菜々は鞄を肩にかけて立ち上がった。すらっとした体型の菜々は、背も高い。ヒールのせいもあり、むつより5センチは高い。
こつこつとヒールを鳴らして、出ようとした時にオフィスに居た、颯介と祐斗が菜々に会釈をした。
「あら…ちょっとむつ、あの可愛い子は?」
「バイトの子」
菜々はじろじろと遠慮もせずに、祐斗を見ている。無遠慮な視線を向けられている祐斗は、困ったように笑みを浮かべていた。
「可愛い子ね。お姉さんと遊ばなーい?」
「こらこらこら、辞めなさい。まだ純粋な大学生なんだから」
「え、そうなの?だったら尚更、ねぇ」




