1話
「あたしにもよく分からないんだけどさ、黒ミサって言われるのはキリスト教、ユダヤ教とかのミサとは逆で悪魔、サタンを信仰するものって言われてて」
「だから、十字架を逆さまに?」
むつは困ったような顔をして、冷たくなった紅茶を飲んだ。テーブルに戻そうとしたが、そのまま膝に置いた。
「悪魔崇拝って言うのは、黒魔術とか系になるの?呼び出して願いを叶えてもらうみたいなさ」
「そういう感じかな」
「そう…依頼内容は学園内の調査か。けど、あそこってかなりの閉鎖空間よね?入れるの?」
「それよ問題は…臨時講師って名目を考えたりしたんだけど欠員居ないし。パパと相談してみる…ってやってくれるの?」
困り顔だった菜々の表情が明るくなった。
「だから、断れないねって最初に言ったでしょ?」
むつが、ふふっと笑ってそう言うと、菜々は嬉しそうに頷いた。
「けど、手掛かりが少なすぎるね。シスターは結局、自殺?他殺?死因は?」
「分からない。警察からは何も言ってこないし、最近じゃもう捜査にすら来てないし。けど、内部に犯人が居るって思いたくないわ」
「…あんた警官の名刺貰ってる?」
「貰ってる」
菜々は鞄から名刺を取り出すと、投げるようにしてテーブルに置いた。むつは、それをつまみ上げて苦々しい顔つきになった。
「貰ってるから、余計ここに来た。で、ついでに現状どうなのかも聞いてみたの」




