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3話
むつは烏を追い払いながら、こっちの烏がどんどん西原と菜々の所に矛先を変えていっている事に気付いた。むつと玲子は、そこそこ腕に自信があり自分の身は守れるが西原は菜々を守りながら烏を追い払っている。かなり分が悪い。何とかしなくては、とむつは思っていたが玲子の前で力を使う事に躊躇いがあった。力を使うか、元になりそうな物を探して叩くか。悩んだが、この状況で元を探せるほど集中は出来そうにない。
仕方ないと腹を決めると、むつは玲子の手を引っ張って走った。そして、烏から少し離れるとむつはなるべく見られたくないと思ってか、玲子を抱き寄せて顔を胸に押し付けた。驚いている玲子の手から棒状の物が落ちた。むつは、それを足で蹴りあげて拾うと西原の方に向かって投げた。
むつはそのまま手を西原の方に向け、きっと目を細めた。鼻の頭にシワを寄せて、何かを睨んでいるかのような表情だった。
ごおっと熱風のような物を感じた玲子は、何事かとむつから離れようとした。




