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3話
「説明を求めたらしてくれますか?」
「この状況下で?あなたも余裕ねぇ」
むつは玲子の隣に並ぶと、首を傾げた。この状況を脱した時には、菜々からも説明を求められるだろう。だが、むつには説明は出来なかった。何で、こうなったのかが、むつにもおそらく西原にも分かりはしない。
考えながらも、むつは烏を叩き落としていたが、殺してるわけではないし数も多くきりがない。ここから走って離れたとしても、追ってこないという事はなさそうだ。
「どうしましょ…」
そろそろ手も足も何度となく烏を叩いているせいか、痛くなってきていたし。ちらっと見れば、西原の方も苦戦している。嫌な顔をしたわりには、しっかりと菜々を守っている。
「先輩‼」
西原と菜々に視線を向けている間に隙が出来たのか、横から迫っていた烏の足がむつの顔をかすった。意外と鋭い爪なのか、頬がぴっと切れた。だが、その烏を玲子の振り上げた棒が、ばしんっと打った。
「余所見しないでください」
「あ、ありがと」
凛々しい玲子の姿をむつは、呆然としながら見ていた。むつは手の甲で、頬から流れた血を拭った。




