3話
「菜々ときぃちゃん?」
声に耳を済ませていたむつが、ぼそっと呟くとそれが聞こえたかのように、烏たちが一斉にむつと西原の前から飛び立った。
「きゃあっ‼」
「菜々っ‼」
烏を追うようにむつが走り出すと、少し遅れて西原も追っていく。むつが茂みから出ると、菜々ともう1人の女子生徒に烏が群がっていた。菜々は悲鳴を上げながら逃げ回っているが、女子生徒の方は雄々しくも何か手にしている棒状の物を振り回していた。
「流石、木戸‼」
むつが誉めると西原が、そんな場合じゃないと言っていた。だが、西原も女子生徒の物事に動じずに、対応する姿は誉められる物だと思っていた。
「菜々っ‼頭下げろ」
西原に言われた事をむつは菜々にも言うと、菜々のくるくると綺麗に巻かれた髪を引っ張っている烏を殴り付けた。
「むつっ‼何よこれーっ‼」
菜々がむつに助けを求めるように抱き付くと、むつは足を滑られたのか菜々を抱き止めたまま尻餅をついた。
「重たい…」
「失礼な‼」
ぱちんっと菜々に叩かれたむつだったが、怪我が無さそうな菜々を見ると安心したように笑みを浮かべた。そして、菜々の頭をぐっと引き寄せ真っ直ぐ突っ込んできた烏に手をかざした。




