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3話
「何だよ、これっ‼」
西原は顔の前で腕を交差させ、その隙間から何が起きてるのか見ると、大きな烏が何羽も襲ってきていた。
「きゃあっ‼」
「むつ‼」
女の子らしい悲鳴が聞こえ、むつの方を見るとむつは足元をすくわれたのかうずくまるようにして倒れていた。西原は腕を振り回すようにして、烏を追い払いながら上着を脱ぐと、それをばさばさと振り回した。
「むつ、頭下げろ‼」
むつが頭をかばうように手で押さえ、地面に顔を押し付けるようにすると、西原はむつに群がる烏を蹴り上げた。数がそこそこ多いし、身体が大きいからか無闇に蹴っても当たる。西原に蹴り飛ばされた烏は、木に身体をぶつけ、ぎゃあと悲鳴を上げている。
身体の上から烏が減ると、むつは手で烏を振り払いながらよろよろと立ち上がった。西原はすぐにむつの所に行くと、ジャケットを頭からかぶせて庇うようにむつの前に立った。
「むつ、大丈夫か?」
「何とか…」
すがるように、むつが西原の背中にぴったりと寄り添い、ぎゅっとシャツを掴んだ。
「上にいっぱい居る」
「逃げるしかないな」




