3話
「だっ大丈夫、覚えてるし…」
「そうか?この前とは違うかもしれないのに?」
むつが離れようとすると、西原はむつの背中に手を回して引き寄せた。力が入りすぎたせいか、むつは西原の胸板に顔をぶつける形になった。
真っ赤な顔をしたむつが困ったように、西原を見上げていた。この流れはヤバいと思いつつも、西原はゆっくり顔を近付けた。今度は逃げられそうにもないと思ったが、むつが両手で西原の顔を押し戻した。
「臭いっ‼」
「お前、この流れで言うかそれ‼」
「言うよ‼無理、臭いもん」
「臭くなかったらよかったのか?」
「え…えっと、分かんない」
真っ赤な顔をして言うと、西原はむつの顔を両手で挟み、額に唇を押し当てた。
「少しずつ、下にいく作戦に変えるよ」
むつの少し開いてる唇を親指でなぞった西原は、その親指をぺろっと舐めてにやっと笑った。
「次は鼻な」
「うぅ…心の準備が出来そうです」
「おう、良い事だな」
嫌がられなかった事に西原は安心し、笑み浮かべるとむつの髪の毛を撫でた。しばらく、真っ赤な顔のむつを見て髪の毛を撫でていたが、むつがその手を取った。じゃれていた西原は、そんなむつの行動に喜ぶ事もせずに真顔になっていた。
「…何か」
「見られてる気がするな」
「うん…人、じゃないと思う」




