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浮遊大陸アトランティス - 警邏員アルファの日常

作者: 翡翠 蛍

短編書くのは初めてです。面白かったら評価、感想などください。

浮遊大陸アトランティス。高度に発達した文明は、およそ五千年前、ついに一つの大陸とそれに付随する数百の小群島(ラグーン)を地表千メートルの高みへと飛翔させることに成功した。技術開発に携わった人物の名はタウロ=ヤマディス、これまた小さな島国の小さな工場の技術者だったというから驚きだ。

地上の国々からの反発は当然ながら強烈に存在した。連合軍が空軍艦隊を編成して襲撃を繰り返したこともあったそうだ。それも無理からぬことだ。自分の頭の上に、自分たちよりも科学力にて勝る、超巨大飛行兵器ともいうべき存在が突然現れることになったのであるから。しかし、アトランティスを浮遊させるだけの科学力の地力の差、アトランティスからの大陸間レーザーによる首都への攻撃などにより、次第に『恭順』の道を辿ることとなる。下手につつかなきゃ良かったのにね。

それから幾星霜。このアトランティスでも多くの国が滅びと栄えを繰り返していった。ファウロス歴二九九八年二月、三度目のミレニアム(千年祭)とやらを二年後に控えた帝都クリスクルシュでは、皇歴三千年祭と同時に行われると目されている、第四皇女セアラ様と空軍将軍リョウガ様の結婚式に伴う特需を見込んでの異例の建設ラッシュとバブルに沸き、土建系の野太い職人声があちらこちらで飛び交っている。皇位継承権が低く、権力闘争から身を引き、奉仕活動を中心に庶民に愛されている第四皇女セアラ様と、平民出身でありながら愛機【雷獣】を駆り、戦場を駆け回る空軍将軍までのし上がった英雄物語の主人公のようなリョウガ様との恋は、おとぎ話さながらであり支持率も高い。

この国 – クリスクルシュ帝国はアトランティス大陸本土には存在していない。大陸の南東に位置する百ほどの|小群島’ラグーン》からなる、いわゆる「島国」だ。そして、そんなクリスクルシュにあるここ、「ポズナス警邏所」が俺、アルファ=ヘネシーの職場である。



 アルファ=ヘネシー、二十九歳男性、彼女なし。理想の女性、第四皇女セアラ=クリスクルシュ様。彼女は現在まだ十四歳のため、口さがない連中からは「ろりこん」というありがたい称号を賜ることとなった。うるせぃ、空軍将軍のリョウガ様も二十四歳だからな。似たようなもんだ。まぁ、向こうは俺より五歳も若くして将軍様だが、こっちは漸く二年前に主任に昇格したばっかだが。…悲しくなってきた。

 さ、さて。俺の仕事の内容について話そう。警邏所ってのは要は町の治安を維持するところだ。主な仕事は、酔っ払いや掏摸、強盗等の対処、害獣の処理などだ。

♪RRRRRR…

「はい、ポズナス警邏所のアルファでございます、…はい、ええ、場所は三丁目の…、ええ、酒屋の隣ですね。…かしこまりました。二十分ほどでそちらにお伺いできるかと思いますので、出来るだけ相手を刺激しないようお待ちください」

 電話の相手は一般市民。「警邏所」なんて名前はかっこいいが、要は俺は下っ端公務員だ。俺は特製の防刃防弾スーツを着込みながら上司であるマイタナスへと報告する。

「課長、三丁目でゴブリンが三匹ほど暴れているそうですので駆除してまいります」

「ああ、ご苦労さん、…いや待て、念のためポッドを連れて行け」

「ゴブリン三匹相手に、ですか?」

ゴブリンは害獣となる魔物の中でも最下位の力しか持たない。子供と一対一であれば危ないが、大人であれば素手同士でなら軽傷を負うのが精々だ。拳銃があればものの一分もあれば片付いてしまう。

「三丁目といったな?隣の管轄に近い場所だ。向こうの所で昼にグレイウルフが迷い込むニュースがあったろう?念のためだ」

「あれは片付いた話かと思っていましたが…。承知しました。ポッドを連れていきます」



 俺はロッカールームに入り、自分のロッカーに目と手をかざした。静脈パターン、網膜パターン、指紋の三重認証システムだ。よく、俺を殺して死体をかざせばいけるんじゃね?とか言われるが、その辺は大丈夫らしい。どういうシステムなのかは企業秘密と機密性のために教えてもらえないけどな。

「キュルビス、起きろ、行くぞ」

 ドッジボールほどの大きさで卵型。薄水色の表面には継ぎ目一つない。それどころか何の模様もない。

 ピクリ、と明滅したかと思えば、表面に二つの目玉が浮き上がった。

「仕事であるかな?我の出番であるかな?兄上よ」

「ああ、ゴブリン駆除だ。数は少ないが託児所が近くにある。さっさと行くぞ。それと俺はお前の兄上じゃない」

 ゴブリンは力も弱く、今回は武装している情報もなかった。ただ、弱い者いじめが大好きで、さらに若い女性を襲う。託児所には若い母親が多く、それらの面倒を見るものもまた若い女性だ。

「女子どもを守るは我が役目にして本懐。喜んで力を貸そうぞ、兄上よ」

 卵型の表面がグニュグニュと形を変えたかと思うとそれは一羽のフクロウへと変化した。しかし、色は茶やグレーではなく、透き通るような朱色であった。

 これが、大陸間レーザーと並ぶ、動物型個人用端末、通称ポッドであった。



「おいおい、話が違うぞ」

 現場に到着した俺は思わず独り言ちた。

 ゴブリン()確かに三匹だ。しかし、ゴブリンの上位種のアニキゴブリンが一匹いて、しかもそいつがサバイバルナイフで武装して、母親を一人捕虜にしてやがる。さらに…。

「裏口に何かがいるな…。こいつにはまだ誰も気付いてないか…。しかもこの気配、飛行タイプだな」

 面倒だ。全く以て面倒だ。

「ただ…面倒なだけだな。キュルビス、行くぞ?」

「承知の内だ、兄上。ゴブリン三匹とアニキゴブリンは任された」

「見てる中には女子どもが多い、やり過ぎるなよ?」

「合点承知の助」

「あ、やべ、人質が先走りそうだ。行くぞ!」



「ギョギョギョガギャグゲ!」

「ギョギャ!」

「グゴギォ!」

「ギャスェ!」

 一際大きなゴブリンが三匹のゴブリンに何やら命じ、捕虜にされている私の前に一人の少女、いや、まだ幼女といって差し支えない子どもが連れてこられた。

「アリサ!!」

 それは私のたった一人の愛娘、アリサだった。薄い金髪に痩せた体。特徴的なのはその耳だ。細く尖り、先だけが少し丸まっている。エルフの夫との間に生まれた私の大事なアリサ。ハーフエルフとして奇異な目で見られようとも私が大事に守り抜くと決めたのだ。

 思わず飛び出そうとした私の身体に生臭い息が吐きかけられ、小柄に見える青緑の腕が思わぬ強い力で引き戻す。私の首元には錆び付いたサバイバルナイフ、背中には体に似合わず巨大ともいってもいい男性のシンボルが硬くそそり立ち押し当てられている。

 犯し、殺される。

数多く女性と子供がいたこの施設だが、エルフの寵愛を受け、魔力の高まった私とアリサの身体はゴブリンの苗床として最適なのだろう。

 冗談ではない。私一人ならともかく、アリサだけでも…!そう思い、刺し違え覚悟でナイフを奪おうとした。

 ぼむんっ!びちゃっ!

「…えっ!?」



 ポッドのキュルビスはまず、アニキゴブリンに飛びかかった。武器を持った者の無力化と同時に指揮官を殺る。基本である。

 ただ、使った方法が基本を無視していた。

 フクロウなので、飛翔して突進した。これは、まあいい。

 しかし、アニキゴブリンにぶつかった瞬間、突如アニキゴブリンの頭が爆ぜて飛んだ。

 びゅーびゅーと血を噴きださせる首無し死骸を作ると、力を失ったアニキゴブリンの身体がゆっくりと倒れ伏すのを後ろ目に、残りのゴブリン三匹にも同じことをした。



あっという間の出来事。死すら覚悟したその直後、瞬きすら出来ない内にどうやら助けられたらしい。私は周りを見回し青黒いゴブリンの血に濡れた身をぶるりと振るわせて血糊を払っているフクロウを見た。

「間一髪間に合ったようであるな。我が名はキュルビス。アルファ兄上のポッドである」

「戦闘用ポッドですか。ということは警邏の方がいらしてくださったんですね。私たち…、アリサを助けていただいてありがとうございました。私はリディと申します」

 私はアリサを抱きしめながらお礼を言った。彼女は返り血を少し浴び、蒼い顔色をしつつも、泣き声を上げずに気丈に耐えている。こういうところは父親似かな、などと考えていたら生きている実感が沸いて力が抜けてきた。

「怖かったであろう。外はまだ危ないので奥で少し休まれるがよい」

「外!?まだゴブリンがいるんですか?」

「いや、ゴブリンはもういないのであるが、もう少し厄介なものがおるのであるな。なに、じきに兄上が対処する故、暫し待たれよ」



アルファは裏口に回り、身を潜めた。殺気を放たないように気をつけながら体に力を籠める。相手との距離は五十メートルほど。まだこちらの姿は壁を挟んでいるため見えていないはずだ。

しかし、()()()()()()()()()

「骨教え四匹、さっさと殺るか」

骨教えはゴブリンと組んで狩りを行う鳥類型の害獣だ。ゴブリンに美味しい狩場を教え、時に見張りやかく乱程度の手伝いを行うが、基本的に直接戦闘には関わらない。代わりにゴブリンが狩った獲物の骨を髄までしゃぶる。

石垣が組まれた壁を蹴り越えると、俺はそのまま()()()()()()()()()()()|。

五十メートルほどあった彼我の距離は物の三、四秒でゼロになる。俺は支給されている短刀を振るい、飛び回る鳥の首を刎ねていく。

「おっと!」

ズギュン、と腰から抜いた拳銃を放つ。危なく一匹逃すところだった。あまり舐めすぎるのはよくないな。最近書類仕事がたまり過ぎて現場仕事から離れていたせいもあるだろうか。腕が鈍っていないか心配だ。今日は良いとして、明日から少し訓練所に足を運んだほうが良いかもしれない。

「終わったようであるな、兄上」

 キュルビスが地上をパタパタしながらこちらに話しかけてくる。横には人質となっていた母娘がいるようだ。

「そっち任せて悪かったな。あと、俺は兄上じゃねぇ」

「そうであるか、兄上」

 俺はもう言い返す気もうせて地上に降りた。



「本当にもう、なんとお礼を申し上げてよいものやら…」

 人質になっていた母親 - リディというらしい - は、平身低頭といわんばかりの頭の下げようであった。放っておいたら五体投地でもしそうだ。

「いえいえ、これが私の仕事ですので」

というか、この人隠れ巨乳だな。下げたおっぱいがたゆんたゆんしてる。

「あー、おっほんである、兄上」

「な、なんだよ」

「幼女の前でろりこんアラサーが人妻のきょぬーにジト目は属性が多すぎて処理が不可能である」

 見れば、助けた子ども - こっちはアリサというらしい – が困った顔をしてた。

「…この人、パパと同じ匂いがする」

「な、なんと!幼女の前でろりこんアラサーが人妻のきょぬーにジト目したら幼女にパパ認定されたである!属性過多!属性過多!」

「こ、こら!助けてもらったのになんてことを…。すみません、うちの死んだ夫は浮気性だったものでつい…」

 奥さん、あなたなんのフォローにもなってませんよ、てか、とどめさしましたね。

 ん?死んだ??気にはなるが…、いや、流石に初対面で聞けることじゃないな。相手がうっかり口滑らせたからって聞いちゃいけないことだろう。

「あぁ!私ったらうっかり死んだ夫の話までしちゃって…。まずいわ、一目惚れかしら!?」

 最後の方はよく聞こえなかったがなんだかワーワーキャーキャー言ってる。そしてアリサちゃん、視線超冷たい。



 アルファ=ヘネシー、二十九歳男性、彼女なし。彼はポズナス警邏所に努めるごくごく末端の公務員である。しかし彼は軍の士官学校を優秀な成績で卒業しており、なぜか普通の公務員に就職した変わり種である。相棒のポッドはフクロウのキュルビス、彼には幾つか戦闘向きの特殊能力が備わっており、その【加護】によりアルファ自身も幾つかの特殊能力を使用することが出来る。

「今日の報告書が終わんねぇ!あー、また残業かぁ…」

 これはそんな彼と…、

「一目惚れだわ!」

 吊り橋効果もびっくりな一目惚れをキメた猪突猛進系未亡人リディアと…、

「…シーーーーン」

 実は一番常識人?ツンデレ系幼女アリサの…、


 日常とちょっぴりの冒険を描いた物語である。


いかがでしょうか?読んでわかるかと思いますが、説明部分が長く一番面白い活躍部分が短いです。しかも能力未詳だし。これは、長編の序章として書き始めたせいなのです。評判良ければ続きも書いてみようと思いますので、よろしくお願いします。

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