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ベルフが冒険者として好き勝手にやらかしていくお話  作者: 色々大佐
第二章 主人公、別の町に到着する

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第六十一話 エピローグ

 ラナケロスの街から南に続く街道、その街道に一組の男女が歩いていた。

 二人は辺りを警戒するように少し小走りで歩いている。特に女性側の方はその狼狽っぷりが酷かった。


「こっ……ここまでくればもう平気でしょう。ベルフさん、少し休みませんか」

「そうするか」

 先程の街道を歩いていた二人とは、ベルフとレイラであった。

 二人共、街道から少し脇に避けると疲れていたのか地面にどかっと座る。特にレイラの方は疲れているのか、身体を横にする勢いで土の上に寝っ転がった。


「何だレイラ、そこまで無理することもなかったのに。そんなに町の人間に見つかりたくなかったのか?」

『本当に落ち着きが足りない女ですね』

「誰のせいだと思ってるんですか?」

 レイラの言葉にベルフが首をかしげる。はて、自分が何かしただろうか? と疑問たっぷりの表情だった。


「街の三分の一が消し飛ぶような戦いを行って、それでベルフさんが生きているとバレたら袋叩きじゃすみませんよ、ベルフさんの仲間である私まで巻き込まれるのは確実ですからね!」

「なんだ、そんな事か。俺は特に気にしてないぞ」

『それについてはベルフ様がやったわけじゃありませんよ。リッチのやつが最後の悪足掻きで魔法をブッパしただけです』

「そういう問題じゃありません!」


 最後に放ったリッチの魔法、それは正しく極大の一撃であった。ベルフにこそ当たりはしなかったものの、リッチの魔法は街の中央部を突っ切るように直撃。結果としては、街全体のおよそ三分の一を物理的にこの世から消し飛ばすという荒行をやってのけた。


 その後、リッチとの戦闘を終えたベルフが逃げるように街を出ると、そこでレイラと遭遇。彼女を巻きこみながら、ラナケロスの街から完全におさらばということになった。


「まあ言いたいことはわかる。愚民とは、総じて恩知らずなものだ。俺が生きていると知ればきっと、街の惨状のみを見てこちらを糾弾していただろうな」

『全く、ベルフ様がいなかったらいずれ街どころか国すらリッチに消し飛ばされていたかもしれないというのに、本当にあいつらは救えないものです』


 それを聞いたレイラは、ベルフとサプライズのズレた感性には頭が痛くなってきた。

 そして、ベルフが何かに気がついたように声を上げる。

「あっ、だとすると俺達が仕込んでおいた勇者ベルフ計画も無駄になったか」

『そう言えばそんなことやってましたね。あー無駄になりましたか』

 ベルフとサプライズの、そんな戯言にレイラが疑問を持った。

「なんです、その頭の悪そうな名前の計画は?」

「カイ達をぶちのめした後、俺が町の人間相手に勇者プレイをしていただろ? あれは、俺を崇める町の人間達を一定数作って、意識が戻った後で俺を悪者として糾弾してくるであろうカイ達と戦わせる為だったんだが……」

『この分だと完全に無駄になりましたね』

 本当に悔しそうな顔をしてベルフが俯く。サプライズも、そんなベルフと同じように悔しそうな声を出していた。


「あの緊急時によくそんなくだらないこと考えつきましたね。考えるまでならまだしも、行動にまで移す辺り尊敬できますよ」

 レイラが本当に呆れた眼でベルフを見ていた。


『お、なんですか? 生意気ですねこの手下三号は。そんな態度でこれからもベルフ様とやっていけると思っているんですか? 主に対する礼儀を持ちなさい』

 サプライズからの挑発にレイラはニッコリ笑うと

「それについてなんですが、私はベルフさんと別れさせてもらいます」


 レイラからの予期せぬ答えに、ベルフとサプライズが驚いた。

「どういう事だ。死ぬその時まで俺のために無償で働いてくれるんじゃなかったのか?」

『そうですよ、その魂の一欠片までもベルフ様に捧げると熱く語っていた貴女はどこに行ったんです?』

「そんな事は最初から言ってませんからね。まあ、強いて理由を言うならですね、ベルフさんと一緒にいたら命が幾つあっても足りないとわかったからです」


 レイラの答えにベルフがふむ、と答える。サプライズも、ベルフが左腕に付けているリストバンドから同様の声を出した。

「あのですね、普通は冒険者って危険だと思った場所に行かないんですよ。ベルフさん知ってましたか?」

「冒険者なのに?」

「冒険者だからです!! ただでさえ普段から魔物を相手にしてリスクがある職業なのに、そこから危険だと思う場所へ突っ込む馬鹿な行いなんて普通しないんですよ普通は。でもベルフさんは全力で突撃しますよね」

『まあそれはベルフ様ですからね。むしろ、危険地帯を見つけたら全力で行ってますね』

 サプライズが思い返すようにしみじみと語った。


「今回も一歩間違えれば私も死んでましたからね。よく考えてみればベルフさんのせいで、あのクソ聖剣が私の手に渡ったようなものですし。ですので私はここでギブアップします」

 そう言うと、レイラは自身の顔の前で右手を左右に振る。もう無理ですわ、という合図だ。


「それなら仕方ない、俺も無理強いする気もないからな。ところで、これからどうするか予定はできているのか?」

「ええ、これからは父を見習って、一商人として頑張って行こうと思います。ちょうど商売の取引などで役立つ物も手に入りましたし」

『ベルフ様はともかく、私は見逃す気はありませんからね。今はともかく、いずれ迎えに行くので覚悟しておきなさい』

 

 サプライズからの恫喝を極めて理性的に無視すると、レイラは片手で収まる程度の手鏡を一つ取り出した。

 その手鏡は、かなりボロそうに見える。鏡の鏡面自体はきれいに磨かれているが、その縁の石細工などは年代物なのか、かなり欠損が目立つ。

「これは真実の目と言いまして、この鏡に映し出された人間が嘘を言ってるかどうか分かるんです。鏡に写っている人間が嘘を言うと、持ち手に相手が嘘をついたかをテレパシーで真偽を伝えてくれます」

 レイラが手鏡にベルフを映し出しながらそう言った。


『おい聞いているんですか、もう手下三号の生体登録は済ませましたから、たとえ数百㎞離れていようが、位置が分かりますからね。私から逃げ切れると思わないことです』

「例えば、今ベルフさんの姿を写しているので、ベルフさんの体内にいるサプライズさんの言っている事が嘘か本当かわかります。その結果から言うと、サプライズさんはガチで遠く離れていてもこちらの位置が把握できるらしいですね……本当に把握できるんですか?」

『無論です』

 サプライズの返答にレイラの顔が絶望に包まれた。


「で、話を戻すが、それは便利なものだな。どこで手に入れたんだ。使用制限とかもあるのか?」

 ベルフの問に、レイラが気を取り直す。

「これはラナケロスの神殿にありましたよ。勇者として活動している間に、これの所在や使い方をいろいろ調べましてね。まあ、勇者として頑張った私への褒美として、勝手に街から頂戴しました。使用制限は特にないですね、毎日何回でも使えるみたいです」

「ほー」

『ほー』


 ベルフとサプライズが感心の声を出すと、レイラの持っている真実の目をじーっと見つめる。

「なんですか、あげませんからね。これがあれば商売の取引などで非常に有利に立てるんです。何より、これは頑張った自分への御褒美なんです」

『別にそんなものいりませんよ。やろうと思えば私も相手の体調から嘘を言ったかどうかくらいはわかりますし、それに私達も良いものを手に入れましたしね』

「だなー、俺もあの二つだけで満足はしている」

 その言葉にレイラは非常に嫌な予感がした。

「良いものですか? 何なのか教えてもらってもいいですか?」

「いいだろう、まずはこれだ」


 そう言うと、ベルフは腰に付けている剣帯から一本の剣を取り出した。鞘に入っているその剣にはレイラにも見覚えがあった、聖剣パールである。

「ベルフさん、これ、なんでこれがここに。街に置いてきたんじゃないんですか」

「いや俺もそうしようと思ったんだがな、まあ見ていろ。サプライズ、ちょっと強化魔法掛けてくれ」

『あいあいさー』


 サプライズの強化魔法がかかったベルフがマキシマム身体能力を発揮すると、聖剣パールを遠くへぶん投げた。弧を描き、青空へと吸い込まれる様に消えていく聖剣パールをベルフとレイラが見つめている。

「ベルフさん、これがどうしたんですか? 剣の不法投棄をしたことだけはわかりますが」

「まあ良いから見てろ、すぐにわかる」


 そう言って先程聖剣パールが消えた方を二人が見ていると、急に遠くから何かが高速でこちらに向かってきた。間違いない、先程ぶん投げた聖剣パールである。そのまま、剣がこちらに向かってくると、ベルフの目の前の地面に突き刺さった。

「な? 捨ててもこいつどこからか戻ってくるんだよ」

『いやー、感応石の吸収能力はなくなったみたいなんですけど、なんか不思議な機能がついちゃいましたよねー』


 レイラが頬をひくつかせながら言った。

「で、これは安全なんですか? なんか変な方向に進化してますけど」

「たぶん大丈夫じゃないか。感応石の機能さえ復活しなければ」

『あれが復活すると周囲の生命体が全部枯れ果てますからね。使い手のベルフ様以外は』


 やっべー、もし今それが復活したら自分が確実に枯れ果てて死ぬ。レイラはベルフから離れることをますます強く心に誓った。


「で、もう一つがこれだ、リッチの左手」

『いやー、これは凄いですよ。国宝と言っていいですね』

 そう言うと、道具袋から白骨死体になった人間の左手らしきものを取り出した。そう、ベルフとの戦闘でただ一つこの世に残ったリッチの左手である。


 更なる厄ネタにレイラの頬に一筋の汗が流れた。

「で、これはどういうものなんですか。ただ珍しいってだけじゃありませんよね」

「うむ、それはだな、サプライズ説明してやれ」

 ベルフからのバトンタッチにサプライズが元気よく説明を始める。

『これはですね、強力な魔術の媒体になるのですよ。私の記録によると、遥か昔リッチとの戦闘で小指一本が残ったときなんかは、それを媒体にして対軍用の魔法が使えたといいます。それが左手一本まるまる残っているとなれば、どこまで出来るか私でも予想はできません。もしかしたら死者の蘇生すら可能かもしれませんね』


 あかん。レイラは心底そう思った。

 例えばここで、このリッチの左手を盗んで何処かで売り払えば確かに目も眩むような大金になるだろう。だが、それを売り払う途中で横取り発生からの、強盗も発生からので、まず自分は死ぬ。

 いや、仮に上手く売り払えたとしても、話を聞いた権力者達から他に同じものは無いのかと詰問されるか、もしくは情報を搾り取られるために拷問まがいのことまでされる未来が見えた。というか、これを持っていると周りに知れただけでもあかん。死者蘇生とはそれだけの価値があった、いやありすぎた。


 一刻も早くこの男から離れねば、仲間だと周りにばれただけでも自分の身が危うい。レイラはそう判断した。

「どうしたレイラ?」

「いえ、なんでもありません。そうだべルフさん知ってますか、西にあるエールの国でエリクサーが見つかったらしいですよ」

「エリクサー?」

「はい、エリクサーです。不老長寿の薬、万病を癒す薬、欠損した四肢や身体ですら復元できる最高の霊薬、エリクサー。それが見つかったらしいのです」

「ほう!!」

 ベルフがレイラの話を聞くと、目を輝かせた。


「ただ、これはもう大陸中に噂になってるはずですから、早く行かないと誰かにエリクサーが奪われてしまうかもしれません。私が聞いたのも二週間ほど前ですし、エリクサーを手に入れたいのなら今すぐ、即!! 西に向かって旅立つべきです!」


レイラに言われたベルフが西の方向を見る。まだ見ぬエリクサーとやらに、ベルフの胸が高鳴る。そして、その様子にレイラは作戦の成功を確信した。この我儘坊やなら、自分を放ってすぐにでも西の国まで駆け抜けていくだろう。しかし――


「なるほど、それは胸が高鳴るな、だが、俺もそんな薄情なやつでもない。せめて次の街に着くまではお前の護衛をしといてやろう」

「え?」

 レイラが気の抜けた声を出した。


「まあ少しだけ、お前に情も湧いたからな、こんなところで女の一人旅は危険だろ? 安心しろ、街まで確実安全に送り届けてやる」

「えっちょっ」

『かーーっさすがはベルフ様。自分の元を離れる手下三号にもこの優しさ!! もはや普通の器ではありません、これはもう覇王を超えて賢王と呼んでもいいでしょう』


 サプライズがベルフの腕に巻いている多目的リストバンドから、太鼓や吹奏楽器の音を鳴り響かせた。一人パレードである。


「いえ、ほんっとーーーに気にしないでいいです。ええ、すぐにでも西へ向かって旅立ってください、お願いします」

「そう遠慮するな、相手の好意は素直に受け取っておくべきだ」

『そうですよ、ベルフ様の優しさに涙を流して感謝しなさい』


 別の意味で涙を流しそうなレイラの手を強引に引くと、ベルフが南に向かって歩き出す。

「ちょっと止めて、離して、こんなところを人に見られたらどうするんですか、ベルフさんの仲間だと思われるじゃないですか!!」

「そうだ、次の街の冒険者ギルドで俺と師弟関係でも作っておくか。バックに高レベル冒険者がいるぞ、と脅しをかけられれば商売でも有利になるだろう」

『それは良いですねベルフ様、是非やりましょう』

 そうして、ギャーギャーと喚き散らすレイラを連れながら、ベルフ達は地平線の向こうへと消えて行った。


続きも特に考えてないので一旦休憩です。続きを思いついたら再開します。

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