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ベルフが冒険者として好き勝手にやらかしていくお話  作者: 色々大佐
第二章 主人公、別の町に到着する

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第四十四話 副神殿長

「ゴードンさん、なんでベルフさんをエデンに閉じ込めたんですか!」


 神殿の一室で、レイラが椅子に座っている一人の男へと詰め寄っていた。


 その神官は、頭を剃っているのか髪の毛は一つも生えていない。顔は目が醜く垂れていて、皺と皮膚のたるみが非常に醜い。腹はでっぷりと出ていて中年太りそのものだ。指にも脂肪がついていて、ついでに指毛も濃い。


 どう見ても醜くだらしないおっさん。彼こそ、このラナケロスの街の副神殿長、ゴードンである。


 レイラがバンバンと机を叩く。エデン攻略の最重要人物であるベルフに対して、あのような仕打ちをするのは、全くもってマイナスしかならないからだ。


 ゴードンの方はレイラの言葉に笑みを浮かべて答える。

「しかしですな勇者様。自警団からの脱走に、未遂とはいえ聖剣破壊の現行犯。あのような凶悪犯を見つけたのならば、こちらとしても何もしないと言うわけには行かないのですよ」

 不敵に答えるゴードン。レイラの問にふふんっと余裕たっぷりの態度であった。


 さて、ゴードンが何故ベルフを発見できたのかと言うと、ぶっちゃけ、レイラを見張っていたからである。

 ゴードンは、ここ数日、神殿からちょくちょくいなくなるカイとレイラを不審に思っていた。当代の勇者様が周りに告げず姿を消していたら、そら不審に思うのは当たり前だ。


 ゴードンは部下に指示してレイラを見張っていたのだが、そこでレイラ達と一緒に地下のエデンへと降りていくベルフを発見した。

 ベルフは前述したように神殿で大騒ぎを起こした人物でもある。ベルフが脱走したとの話は、似顔絵付きの手配書と一緒に自警団から神殿に回ってきていた。


 そんなわけでゴードンは、今回のベルフ閉じ込め作戦を実行したわけだ。


「本来なら隙を突いてあの男だけを閉じ込めるはずでしたが、偶然にも勇者様と神殿長だけが先に地上へ上ってきましたからな。これも神の思し召しというやつでしょう。あとは、水も食料も無いあの場所で衰弱した所を、自警団に引き渡すだけで終わります。いくら腕利きの冒険者と言っても、ああなったらお終いですからな」


 はははと笑うゴードン。レイラはそれを聞いて頭が痛くなってきた。


 レイラは、究極のクソ野郎であるベルフが反面教師となっているせいか、自分の癇癪というか器の小ささを、最近自覚してきている。

 まあ、自覚しただけで直す気はないのだが、そんな自分でもサプライズやカイから聞いたエデンという場所は、なんとかしないとやばいと思えるレベルに酷い場所だった。

 しかし、レイラの目の前にいるクソデブハゲ親父はエデン攻略の重要な要員であるベルフを捕まえて自警団に引き渡す事しか考えていない。エデンをどうにかしよう等とは全く考えてないのだ。


 レイラは頭に登っている血をひとまず下げて、努めて冷静に話すことにした。

「ベルフさんを捕まえるのは良いとして、エデンについてはどうするんですか? 彼の力は絶対に必要ですよ」

 その言葉に待ってましたとばかりにゴードンの目が輝く。

「それならご安心ください。そもそも、エデンなどという場所はカイ神殿長が言うほど危険な場所ではないのです」


 レイラがきょとんとする。危険な場所ではない? あのアンデッドが無数に蠢く場所が?


「私もエデンについては独自に調査していましてね、私の友人でもある魔術学院の学院長にエデンについて調べて貰ったのです」

 副神殿長はそう言うと、机の中から書類を取り出した。

 エデンについて纏められた調査報告書だ。


「この報告書を見れば分かりますが、エデンには神殿長が主張しているような周囲数キロに渡って人の魂を集めるなんて機能はありません。ただの死霊がたむろしているダンジョンですよ。当然、死んだ街の人間が魂になってエデンに囚われるなんて事は起きません」


 レイラが机に置かれている報告書を手に取って流し読みにする。

 ざっと見た限りではあるが纏めると、エデンには周囲から人の魂を集める機能など無いと報告書に書かれていた。


 レイラが納得行かないような顔をしてゴードンに尋ねる。

「失礼とは思いますが、この報告書を纏めた人は誰ですか? 実際にエデンへ潜った身としては、あの場所が普通のダンジョンとは到底思えませんが」


 ゴードンがレイラの言葉に笑う。その笑いに、レイラは何かカチンと来た。

「はははは、おっとすいません。その報告書を纏めたのは、先程述べた学院長その人ですよ。このラナケロスで最も権威のある方ですから、そんじょそこらの人間ではありません」


 ふむ、とレイラが報告書を見る。そこには著者名にルドルフ・ゲストと書いてあった。

「ルドルフさんですか…‥」

「はい、ルドルフ学院長。その報告書は彼の責任で記された物です」


 レイラは唇に片手を当てながら思う、旗色が悪いなと。


 学院のトップが作った物であるならば、そこには当然、説得力が備わる。それどころか、学院長自身の名前を報告書に使ったのであれば、ルドルフの研究者仲間や学院にいる部下達もこれに関わっている可能性が高い。一人ならばまだ穴もあるかもしれないが、複数の識者が関わっているのなら、それにも期待できない。


 しかも、そんな相手へ反論するにしても、こちらの味方は人の良い神殿長と、世界クソ野郎筆頭と次席であるベルフとサプライズコンビである。

 あ、こりゃ理屈じゃ勝てないわーとレイラは即座に判断した。


「それとですが、この報告書が作られたのは数年も前でしてな。当然、市長含めて街の要職についている人間は全員、この報告書を知っています。未だに騒いでいるのはカイ神殿長のみ、と言うわけですよ」


 しかも、外堀まで埋められていた。レイラは思う、これ詰んでるわ。

「では勇者様も納得したことですし、話はこれで終わりにしますか。明日は市長にも会ってもらいたいので今日はお早めに寝てください」


 ゴードンはパンッと両手を叩くと話しは終わりだと切り上げる。

 レイラは何か反論がないかなーと頭をこねくり回すが、中々いい案は浮かばない。

 これは諦めるしか無いかなと、レイラががっくりと肩を落としたその時、ふと閃くものがあった。


「そうだ、この街には真実の目がありましたよね。あれでルドルフ学院長が報告書に嘘を書いているか調べてもらえませんか?」


 その言葉に笑みを浮かべていたゴードンの表情がピシリと固まった。

「真実の目ですか?」

「はい、確かこの街には有りましたよね、真実と嘘を見抜くあの神宝が。ライラにいる頃から真実の目について噂だけは聞いていました。あんな便利なものがあるなんていいなーって何度思ったことか」


 ゴードンが落ち着きの無いように自分の顔を触り始める。

「どうしましたゴードンさん、何か不都合でも?」


「いえ、たしかに真実の目はありますが、あれは一度使用すると一月は再使用に時間が掛かりまして。しかも、犯罪の捜査などに優先的に使われるので幾ら勇者様からの要請でも厳しいかと。そもそも、エデンの報告書に関して真実の目を使うともなれば、ルドルフ学院長に、お前が作った報告書は怪しいぞと言っているようなものですから、それも失礼であり――」


 レイラはその様子に勘づいた。あ、これくっそ怪しいわ。


「という事ですので真実の目を使うことは諦めてください勇者様」

「そうですか、わかりました」

 その言葉にふう、と落ち着くゴードン。

 とりあえずレイラもこれ以上は追求せず、この場は切り上げることにしたのだ。

 

 あとは、そのまま適当にゴードンへ別れの挨拶をして部屋から出るレイラ。神殿の廊下を歩きながら今後のことを考える。

「とりあえずエデンについてはチャンスが来るまで放置しておくとしますか。どうせ、あの男が、あのまま大人しくしているわけもないですし」

 

 レイラは確信していた。この神殿にいる奴らは知らないのだ。あいつは周りがちょっかいを出せば出すほど必ず、その分以上に余計なことをしでかす奴なのだと。

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