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第四話 ようこそ囁きの森へ

 武具屋を出て、街中を走り続けていたベルフは不意に立ち止まった。

「ところで、冒険者ギルドは何処にあるんだ?」

 ギルドの場所がわからない事に、いまさらながら気がついたのだ。


 仕方ないので、先程の武具屋までギルドの場所を教わりに、戻ろうとすると、更なる問題に気がついた。戻る道がわからないのである。 


 この通りでは、日除けの布を上に張った露天商が道を埋め尽くすように商売をしていた。武具屋のある北通りとは、その景観を違うものとしている。つまり、ベルフは全く知らない場所に来ていた。

「サプライズ、先ほどの武具屋までの道は分かるか?」

『すいませんマスター。方角はまだしも、道筋についてはわかりません』


 さてどうしたものかとベルフが悩んでいると、ふと気づくことがあった。この通りを歩いている冒険者らしき人物達は一様に、通りの先にある、十字路を右手側に曲がっていくことにだ。


 あの先に何か冒険者達が集まるものがあるのだろうかとベルフが推測をつけると、相棒のサプライズに相談をした。


「冒険者ギルドと言えば、冒険者達が集まる場所だ。あいつらの後について行けばギルドまで行けるんじゃないか?」

 そう言ってベルフは、十字路を右に曲がっていく冒険者たちを指差す。

『可能性は0ではありませんが、確実性には欠けると思います。ですが、まだまだ資金には余裕があるので、今日すぐにギルドに行く必要も無いのも確かですね』


 ベルフは少しだけ悩むと、通りを歩いている冒険者達の後を追うことに決めた。

「違っていたら違っていたで諦めるか。とりあえず、あいつらの後を追ってみるぞ」

『そうしますか』

 ベルフは、冒険者達の後を追って行くことを決めた。



 現在のベルフの目の前には森が広がっている。

 ちらりと横を見れば、囁きの森へようこそと書かれた看板が一つ。

 更には薄暗いその森の奥からは、ギャーギャーと魔物の泣きわめく声が聞こえてくる。この森の中で魔物たちが元気に活動している証拠だ。


 後ろを見れば、森の魔物を街へ侵入させない為に数メートルの高さの壁が建てられている。街をグルリと囲っているその壁は、魔物の脅威から日々街の人間達を守っていた。


 さて、そんな囁きの森までやって来たベルフは、サプライズに疑問をぶつけた。

「サプライズどう思う? 俺としてはちょっと冒険者ギルドとは違う場所かなと思っている」

『そうですね。冒険者達がこの森の中に出入りしている事実だけを抜き取れば、冒険者ギルドと言えなくはないと思います』


 周りを見れば、いくらかの冒険者達が森の中へと出入りしていた。

 彼等は今からダンジョンへ稼ぎに行く者達か、稼ぎ終えた者達だろう。


「道がわからないからと言って、適当に冒険者達の後を付けるだけで良いやと考えたのは、横着が過ぎたか」


『それは次回への反省点としましょう。それでどうしますか? 私としては、そろそろ宿の手配をするべきだと思いますが』


 時刻はそろそろ夕方に差し掛かろうとしていた。サプライズの言うように今日は宿の手配をするのも悪くない。

 だがしかし、ベルフは予想外の答えを返してきた。


「よし……森の中に入るか」

ベルフは剣帯に吊るしていた鞘から剣を引き抜くと、ダンジョンアタック開始の宣言をする。


『良いのですか? 今のマスターが一人でダンジョンに潜るのは無謀だと思いますが』


 サプライズはてっきり、ベルフはある程度強くなってからダンジョンに挑むと思っていた。実際にサプライズはその為の、ベルフ強化計画を構想していたのだが。


「せっかく冒険者になったんだ、まずはダンジョンに入ってみよう」

 ベルフは目を爛々と光らせている。

 彼はとにかくダンジョンへ潜ってみたかったのだ。


『わかりましたマスター』

 そしてサプライズは、そんなベルフが好きだった。元より、全て自分の言うとおりになる人間など、サプライズは自分の支配者として求めていないのだ。


「じゃあ、まず誰にするかな……よし、あの二人組みに決めた」


 ベルフは周りの冒険者から一組の冒険者を選んで指差した。鉄の鎧を着ている女剣士と、白いローブを着た女魔術士だ。


 剣士の方は髪をサイドテールで纏めた気の強そうな少女だ。フトモモや二の腕あたりをむき出しにしているのはファッションか何かだろう。少し扇情的な格好だ。


 魔術士の少女は白いローブとフードを被っている気の弱そうな子だった。杖を両手に持って保護欲を掻き立てるように、ちょっと上目遣いで女剣士と話をしている。


『あの二人がどうかしたのですか?』

 サプライズが疑問に思ってベルフに尋ねた。

「まずは、あの二人組みについていこう。他の冒険者の動きから、魔物の倒し方を見て盗む」

 サプライズが感嘆の声を出す。

『なるほど、まずは他の冒険者の動き方を参考にするわけですね。良い考えだと思います』


 ベルフとサプライズはそうして、前にいる二人組みの冒険者達の後を追う形で囁きの森の中へと入っていった。

ちょっと改稿

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