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ベルフが冒険者として好き勝手にやらかしていくお話  作者: 色々大佐
第一章 ベルフ君出発する

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第二十五話 金がないのが悪い

 カリス達が、その場から立ち去ると、倒れていたベルフは身を起こした。どこかの骨にひびが入っているのだろう、身体を動かした時に響く体の痛みにベルフは顔をしかめる。


 続いて、先ほどの攻撃から致命傷を防いでくれた自身の鎧をペタペタと触り始めた。

「この鎧のおかげで、あの攻撃を受けても死なずにすんだ。リークスなんぞに使われるより俺に使われて、この鎧も幸せだろうな」


 鎧は青く、淡く、光り輝いていた。何らかの魔法金属が使われているのかもしれない。どう見ても職人の一品物だ。この鎧はリークスから奪い取った鎧で、それをベルフが装備していた。


 サプライズも納得したような声を出す。

『全く、その通りですね。その鎧をベルフ様に渡したことで、リークスとやらは生まれてきた意味の全てを失ったと見て良いです。奴の天命は尽きました』

 サプライズは、リークスの生きる価値を勝手に決めていた。


 ベルフは立ち上がると、リリスとミナがいた場所を見る。まだ魔法の炎がその場所を包み込んでいた。轟々と燃えている炎は人間二人くらいたやすく殺せるほどだ。

「良い奴らだったが、運がなかったな。お前達のことは忘れない」

『いなくなったら寂しいものですね。まあ、三日位は忘れないでおいてやりますよ』


 ベルフが黙祷をしていると、徐々に炎の勢いが弱くなってきた。それは少しの残滓を残して完全に掻き消える。炎が消えた後には、無残なリリスとミナの姿が……ではなくて、結界石で作られた光の壁で守られた無傷の二人がいた。


 光の壁は、その役目を終えると、すーっとその場から消えてなくなる。

 それを見たリリス達は緊張が解けたのか、その場に座り込んだ。

「死ぬかと思ったわ……」

「もう無理、魔力使いすぎて歩けない」


 リリスとミナは、身体から大量の汗を流していた。恐らくだが、魔法の炎が生み出す熱を完全には遮断できていなかったのだろう。この数分間、サウナのような地獄の蒸し風呂を二人は経験していたらしい。

 

 まだ生きていた二人をベルフとサプライズは驚きで見ていた。

「そういえば、ミナに結界石を持たせていたんだっけか。それにしてもよく助かったな」

 ベルフだけでなくサプライズも

『あの短い時間の間に、結界石を発動させたのですか。中々の判断力ですね』


 ベルフ達の賞賛をひとまず無視して、リリスは周りを見渡す。

「あいつらは何処に行ったの? 姿が見えないけど。ていうか、ベルフが渡したあの石は何?」


 それにベルフが答える。

「あいつらならどこかに行ったぞ。それとあの石は昨日、一階で手に入れた石ころだ。試しに騙せるかなと思ってやってみたが、見事に上手く行って俺も満足である」


 そう、ベルフがカリスに渡した石は昨日、洞窟の一階部分の壁から採取した、あの石だ。鉱物としての価値は特にない。正真正銘の石ころだ。

 洞窟の薄暗い光に加えて、手渡す時に両手で包み込んで石を直接見させないと言う小技を駆使することで、始めて可能となる詐術である。


 リリスは深く考えるのをやめたのか、吹っ切れた顔になった。

「言いたい事は山ほどあるけど今は、あいつらが騙されたと気づいて戻ってくる前に早く移動しましょう。ミナはもう動けなさそうだから私が運ぶわ」

 結界石の発動で、ミナは根こそぎ魔力を使い果たして動けないでいる。彼女はリリスがおぶさる形で運ぶ事になった。


 ミナを軽々と背負うとリリスは、どちらに進むべきか聞いてくる

「それで、どっちに行けばいいの?」

 その言葉に、ベルフはカリス達が消えて行った方を指差す。

「行くならあちら側だな。反対側はジャイアントバットが魔物達を呼びに行った側だ。今の状況で魔物とは戦いたくないだろ?」


 体力は消耗している、ベルフは怪我をしている、ミナは魔力が切れている。これで魔物達と戦うのは自殺行為に近かった。カリスたちが戻ってくるかも知れないが、それでも確実に魔物達と戦う道よりはマシだ。

「そうね、今は戦いたくないわ」

 リリスも納得したのか、ミナを背負いながらベルフの指差した方へと歩き出す。


 三人とナノマシン一体が黙々と通路を歩き続ける。幾らか歩くと、安全圏まで辿り着いたと判断したのか今まで黙っていたリリスが口を開いた。


「それでこれからどうするの? この状況で、まだレッドオークを討伐できると思っているのなら、甘いと思うわよ」


 リリスは、はっきりと言った。現状、問題点が山積みであり、それを考えると、ここで討伐から身を引くのが最善だと思えたからだ。どう見ても、ここが生か死かの分水嶺だった。

 

 ベルフも、すぐには返答できなかった。彼の才能、と言うより狂人としての嗅覚も、ここがターニングポイントだと思えたのだ。


 そして数分ばかり考えた後に彼は決めた。そう――

「レッドオークとカリス達の二つをぶっ殺すか」

 とりあえず難易度を上げてみる事にする。


 レッドオークだけでも難しい。カリス達だって強敵だ。片方狙うだけでも手に余る。ならば試しに、その二つを同時に狙ってみたらどうなのか? 宇宙的タイミングが湧いてきて、解決するのではないか! 人は道に迷うと、時には逆転の発想が必要になる。今こそ、その時だとベルフの直感は看破した。


『いいですねぇ。ベルフ様に不敬をしでかしたあいつらはもちろん、レッドオークもついでにやっちまいますか』

 サプライズもノリノリだった。


 そんなベルフとサプライズとは別に、リリスは不満気な顔と言うより、こいつらにはついていけないと言う表情を見せていた。しかし、そのリリスが背負っているミナの方が弱々しく口を開いてきた。


「リリス、レッドオークはともかく、ここでカリス達だけでも何とかしないと私達が危ないよ。ここで逃げても、結界石が偽物だとわかったら、私達を何処までも狙ってくるはずだから」

「それは……確かにそうだけど」


 リリスは、魔法の炎で躊躇なく、こちらを殺しに来たルーネを思い出す。ここで逃げてもいつかは、あの魔女と戦うことになる。遅かれ早かれ、あいつらとは雌雄を決する事になるはずだ。


 額に手を当てて、リリスは考えこむ。自分は一体何処で道を間違えたのだろう。いや、わかっている。こいつらだ。ベルフとか言う、疫病神と出会ったところから間違っている。


「あんた達と出会ったばかりにレッドオーク討伐には参加するわ、格上であるベテラン冒険者とは戦うことになるわ。本当に、あんたたちは疫病神ね」

 リリスの言葉に、サプライズが鼻で笑う。

『酷い言い草ですね。逆に聞きますが、私の力抜きで間引き組の依頼を達成できましたか? オーク六匹倒すのも無理だったはずですよ』


 サプライズの言っていることは事実だ。リリス達だけでは、どうやっても時間が足りずに報酬である一万ゴールドは手に入れられなかった。つまり、リリス達はベルフに会わなければ金銭的に破滅していたはずだ。


 ちなみに、リリスとミナは間引き組の依頼達成として一万ゴールドの報酬をギルドから、もう貰っている。しかも、税金の支払期限が迫っていたリリスに、ミナがお金を貸す形で渡しており、昨日の内にリリスは、滞納していた税金を支払っていた。


 つまり、ギルドから貰った報酬をベルフに渡して、これで貸し借りなしね、貴方にはもう付き合えないわとか、そんな格好良い真似はリリス達にはできない。なぜなら二人の手元に、お金はもうないのだから。


「なるほど、税金を滞納していた叔父さんが全部悪いってことね。今度あったら、あいつぶん殴ってやる」


 リリスが密かに自分の叔父に復讐を決意する中で、ベルフも決意する。

「今日は、あの小部屋に戻って休むぞ。どうせカリス達も討伐に参加しているんだ。次はこちらからお礼をしてやる」

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