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ベルフが冒険者として好き勝手にやらかしていくお話  作者: 色々大佐
第一章 ベルフ君出発する

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第二十三話 魔物達

 画面の先ではベテランの冒険者達が必死に戦っている。

「いけーがんばれー」

「そこだ、もう少しで崩せるよ」


 リリスとミナがそこへ応援を掛ける。後もう少しで憎き敵を倒せそうなのだ。

「頑張れオーク、相手はもう体力が残ってないわよ」

「あー惜しい!!」

 そう、憎き冒険者達をあと少しで倒せそうなのだ。


 ギャーギャーと喚いている二人は無視して、ベルフがサプライズと相談を始める

「で、あの魔物達をどう思う、サプライズ」

『どういうことでしょうね。私達が調べたレッドオークは、あくまでもオークだけを操れる存在なのですが。一応レッドオークについておさらいしますか?』

「めんどくさいから良いや。あっちも決着が付いたようだし俺達も動くか」


 ベルフが映像に視線を向けると、冒険者達が魔物の包囲を抜けだして逃げ出していた。リリスとミナは悔しそうにそれを見ている。

「ベルフ行くわよ、今なら奴らも体力を消費しているわチャンスよ」

「こっちは準備出来てるよ」


 準備万端と言った感じでリリスとミナは立ち上がっていた。ベルフもそれに続いて立ち上がる。休憩は終わりだ。ベルフ達三人組は、拠点である小部屋を出ると、一路、魔物達の蠢く部屋の外へと出発していった。


 

 部屋から出て、迷宮を探索していたベルフ達は、来た時と違って、魔物達とも消極的ながら戦うようにしていた。そうして、小一時間が経った頃……

「ちょっと、どうしてこんなに魔物がいるのよ。来る時はこんなにいなかったじゃない」

 ベルフ、リリス、ミナの三人は、相次ぐ魔物達の襲撃で、逃げ道を失っていた。


 リリスの目の前には槍を構えたオークがいた。顔は豚顔なのだが、眼つきが鋭く、異様な威圧感がある。身体に着ている服は腰ミノだけで、防具の類は着ていない。しかし、脂肪ではなくて全身が筋肉で覆われていることから、かなり鍛えられた個体であるのがわかる。


 リリスは、オークに向かって剣を振り下ろす。それを見切っていたかのように、オークは後ろに一歩下がって避ける。

「こいつ戦い慣れてるわ。ミナ、魔法の援護をお願い」


 リリスの要請を聞いたミナが呪文を紡ぎだす。ミナは短時間で詠唱を終わらせると、不可視の風の刃が、ミナの掲げた杖からオークへと向かって飛び出していく。


 空間の少しの揺らぎから、風の刃の軌道をオークは見切る。近くにいた仲間のリザードマンの首をオークは片手に持つと、迫り来る魔法への自身の盾にした。


 オークは、リザードマンの腹側ではなく、鱗の生えている背中側で魔法を受け止めるように、盾として使っている。結果、ミナの魔法は、わずかにリザードマンの背中を傷つけるだけで収まった。


 突如現れたオークが、歴戦の強者かと思えるほどの貫禄を示す中、ベルフは他の魔物達に囲まれて必死に戦っていた。

 

 ベルフはリザードマンが突き出してくる毒の爪を剣で弾くと、態勢の崩れたそのリザードマンの頭部を一突きに殺す。サプライズからの肉体強化魔法を受けているベルフの神速の突きは、躱すことも受けることも許さずにリザードマンを倒した。


 だが、攻撃直後で隙のできたベルフへ、周りの魔物達が襲いかかる。右から来る、斧を持ったオークからの攻撃をベルフは避け、その隙を付いて来た別のリザードマンの爪を避け、ベルフは何とか、魔物達から距離を開ける。だが、ベルフの移動先で待ち構えていたゴブリンが、棍棒でベルフの頭部を狙ってきた。


 手に持っている剣を、襲ってくる棍棒からの盾にしようとベルフが頭に構えると、ベルフの身体からゴブリンに向かって雷が迸る。サプライズが自身に組み込まれている詠唱プログラムを起動して、魔法を放ったのだ。


 魔法の雷が直撃したゴブリンは、口や耳から煙を吐き出すと地面に倒れた。雷によって体の内部ごと焼かれて死んだのだ。


「助かったぞサプライズ」

『お褒めに与り恐縮です、ベルフ様』


 ベルフは、目の前の魔物達を数える。リリスとミナが相手しているマッチョマンなオークも入れると、残りの魔物は五体と言ったところだ。


 そうこうしている内に、マッチョなオークの近くにいたリザードマンをリリスが斬り捨てた。ベルフから渡された剣の切れ味がよかったのだろう。ミナの魔法でさえ受け止めていたリザードマンの鱗を安々と切り裂く。


 数的優位がまた一つ崩れた魔物側が、全員ベルフ達と距離を開ける。しかし、その中で一匹の魔物がその場から逃げ出した。巨大なコウモリ、ジャイアントバットだ。


 それに気づいたミナが撤退を叫ぶ。

「魔物達の援軍が来るよ、逃げよう!」


 ミナの意見に同意したのか、ベルフを先頭にして三人が逃げ出す。魔物達が追ってこないのも幸いしたのか、なんとかしてその場から逃げ切ることに成功した。


 ベルフがサプライズの探索機能で調べると、周囲に魔物達の気配が無いことを確認する。安全圏に到達したことに安心すると、三人は床に座りこんだ。


 まず口火を切ったのはリリスだ。

「なんで、こんなに魔物達に遭遇するのよ。ミナ、あんた何か知ってそうだけど、説明お願い」

 ミナがそれに答える。

「恐らく、ジャイアントバットを連絡係として魔物達は使っているんだと思う。元々、ジャイアントバットは仲間を呼ぶ性質があるの。それを使って魔物達同士で援軍を呼び合っているんだよきっと」


 先ほどの戦闘でも、魔物が負けそうになるとジャイアントバットがその場から離れていた。もしもあのまま戦闘を続けていれば別の魔物達が援軍として現れていただろう。


 ベルフが、彼にしては珍しく悩んだ顔をしていた。

「だとすると厄介だな。最初に、あのコウモリの魔物から倒さないと、延々と援軍を呼ばれてこちらが詰むのか」


 ベルフ達がそうして話し合っていると、サプライズが探知機能に魔物がひっかかった事を告げる。

『ベルフ様、魔物が一体だけ、あちらの曲がり角から向かってきます』


 サプライズからの警告を聞くと、ベルフ達が武器を構えて身構える。その曲がり角の向こうから、一体のジャイアントバットが現れた。通常のコウモリよりも一回り巨体な身体をした、その魔物はベルフ達を見つけると、来た道を即座に戻っていった。


 そのジャイアントバットの挙動にリリスが冷や汗をかく。

「ねえ、もしかしてだけど、あれって他の魔物達を呼びに行ったの?」

 ミナも同様に冷や汗を掻きながら

「もしかして、ああやって単独で見回って、冒険者達を発見しているのかな」


 二人の言葉に同意するようにサプライズが止めを言ってくる。

『探知機能で調べましたが、あの魔物が逃げた先に魔物のグループが有りますね。間違いなく、この場にいると危ないです。更にですが、別の通路から二人組の冒険者がこちらに向かってきています』


 サプライズが空中に探知画面を映し出す。そこには、ベルフ達の後ろ方向から人間を示す青いマークが二つ、こちらに向かってやってくる。

「前からは魔物達。後ろからは冒険者達か。さて、こいつらは味方なのだろうか」

『悩んでいる暇はありませんよベルフ様。と言うより、すぐそこまで来ていますから』


 ベルフ達が後ろを向くと、向こう側に人影が見える。その人影が、どんどんこちらに近づいてくると、その姿が浮かび上がってきた。

「お? お前らはリークスを倒したガキどもじゃねえか」


 そこには、僧侶姿の中年男性と二十歳前後の女魔術師がいた。


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