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ベルフが冒険者として好き勝手にやらかしていくお話  作者: 色々大佐
第一章 ベルフ君出発する

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第二十話 討伐隊出発

 翌日。ベルフ、リリス、ミナの三人はレッドオークの討伐組として沈黙の洞窟入り口へとやって来ていた。

 周りを見ればベルフ達だけではない。ベテランの冒険者達や、討伐隊と一緒に付いて来ているギルド職員もいる。総勢で十五人近くいるだろう。


 そのまま、沈黙の洞窟一階部分の広大な坑道を全員で進むと、レッドオークが居ると目されている地下二階へと続く階段の前に到着する。


 討伐隊はそこで止まると、討伐組に付いて来ていたギルド職員が一歩前に出てきた。この職員は、前日ベルフ達に魔物の間引き組への変更を進めてきた女性職員だ。


 その女性職員は普段と同じように、その小さい身体に職員用のスーツを着込んでいる。仮にも、魔物がひしめく沈黙の洞窟内へと赴く格好ではなかった。一階部分は魔物がでない安全地帯であるとしてもだ。


 女性職員が、冒険者達に向かって声を張り上げて喋り始める。

「さて、では勇敢な討伐隊の皆様。ここからは各自好きに動いて下さい」

 手を広げてクエストの開始を宣言する。その宣言に冒険者達が雄叫びを上げた。双方、気分が高揚しているのだろう。


「期限は、三日後のルナの日まで。その間に討伐できなければ失敗と判断します。報酬は討伐した人間には十万ゴールド。その他の人間にも討伐成功時には三万ゴールドの追加報酬。失敗時でも別枠として参加費一万ゴールドは支払います」

 その言葉に、冒険者達の眼付きが変わった。討伐すれば合計十四万ゴールドの報酬。数日で稼げる額としては破格であった。


 女性職員がハッとした顔で補足の説明を述べる。

「おっと、それと御安心下さい。クエストの期限は三日後までとは言っても、三日後の冒険者ギルド終業時間までという意味です。間引き組のように、明日が期限だと聞いておきながら、実は当日の終業時間までだった、と言うわけではありません」


 その言葉に周りに笑いが生まれる。彼等ベテラン冒険者はギルドの詐欺行為について実は知っていたのだ。自身の力で気づいたのか、それともギルド側から説明されていたかは定かではない。


「こいつら最低」

「だよね」


 その笑い声を聞いていたリリスとミナは、周りを冷たい目で見ている。一応、彼女達二人はベルフの力を借りて、なんとか二人が受けた分の依頼を達成できた。

 その達成報告を聞いた時の冒険者ギルド職員の悔しそうな目は、彼女達の目に焼き付いている。


 ギルドの女性職員は、リリスとミナを目ざとく見つけると二人に話しかけてきた。

「そういえば、何故あなた方二人は、ここにいるのですか? 昨日、間引き組へと依頼を変更していたはずですが」

 リリスとミナは、質問に答えようとしない。相手を完全に嫌っているのだ。


 二人に代わって、ベルフが答えた。

「俺のサポートとして二人を雇った。何か問題でもあるか?」

 ベルフが何か悪いのか? あーん? という態度で応対する。


「いえ、特に問題はありませんよ。依頼を受けた人間以外が参加するのも問題ありません。ただし、その二人がレッドオークを倒したとしても、その二人に十万ゴールドは支払われないので御了承下さい。まあ、倒せるわけはないと思いますが、念のために」

 女性職員の言葉に、周りから幾らかの失笑が漏れる。こちらを完全に見下しているのだ。


 もう話は終わったとばかりに女性職員は〆の言葉を言う。

「では皆様、ここからは御自由に動いて下さい。ここからは早い者勝ちです」


 こうして、レッドオーク討伐は本格的に開始された。



「おい、話がある」

 ベルフ達が地下二階へと続く階段を降りようとすると、一人の男がベルフ達に話しかけてきた。

 背格好はベルフより少し大きい。キツイ目をして、短髪で逆立った黒髪をしている。青色で塗装された鉄鎧を着込んでいる所を見ると、彼は剣士なのだろう。彼の後ろの方にパーティーらしき人間が数人いる。


 その男はベルフ達に横柄な態度で言ってきた。

「お前ら邪魔だ。今すぐ依頼をキャンセルしろ」

 新人の冒険者でありながら、無謀にもこの場にいるベルフたちが目障りなのだろう。高圧的な態度でベルフ達に接してくる。


「レッドオークは何処にいるのだろうか、わかるかサプライズ?」

『残念ですけどわかりませんね。地道に探すしかないかと』

 完全無視の態度でベルフ達三人は階段を降り始めた。相手にしている時間が無駄だと判断したからだ。


「おいてめえら、無視すんじゃねえぞ!!」


 男は、ベルフに掴みかかる為に階段を駆け足で降りる。そして、その隙をベルフは見過ごさなかった。掴みかかってくる男の手を躱すと、足を引っ掛けて盛大に転ばせる。


 平地であれば、ただ転んで終わりだろうが、ここは下りの階段である。そのまま男は下へと転げ落ちていく。そのまま階段の一番下まで転げ落ちていった男は、階段下の地面に激突すると動かなくなった。

 

「おかしいぞサプライズ。あいつらはベテラン冒険者で強いと聞いたんだが。なんか拍子抜けするな」

『ベテランと言ってもピンキリですからね。あれはベテランと言っても質の低い方かと』


 ベルフ以外の全員がいきなりの事に凍りつく。ミナとリリスもベルフがここまでやると思っていなかったのか、動きを止めていた。

「おい、何しているんだ早く行くぞ」

『グズグズしているんじゃないよ雌豚共』


 リリスとミナは我に返るとベルフの後をついていく。まだベルフの暴挙から立ち直っていない周囲の冒険者に先んじて、ベルフ達は二階まで降り立った。近くには、階段下まで転げ落ちて動かなくなっている先程の男冒険者がいる。


「見ろサプライズ、敵が一人減ったぞ」

『さすがですベルフ様。ついでにいらなくなったこいつの裝備でも剥ぎ取りませんか?』

「なるほど、いい考えだな」


 名案だとばかりにベルフが頷く。倒れて痙攣している男に近づくと、着ている鎧や武器を剥ぎ取り始めた。今日初めての戦利品である。

『裝備は中々ですが道具の類いは、まずまずですね。手持ちの金も少ないですし、ベテラン冒険者が聞いて呆れます』


 ベルフが男からの剥ぎとりを終えると一仕事を終えた顔になっていた。実に満足そうである。

「いやあんた、それって強盗じゃん」

 リリスが睨んでくるが。

「違うよリリス、先に絡んできたのはあっちだし自業自得だよ」

 それを制したのはミナだった。地味に、ミナの方がこういう時は冷血なのだ。


 と、そうしていると階段から人が降りてくる足音がする。おそらく倒れている冒険者の仲間達だろう。その足音を聞いたベルフは一目散に逃げ出す。

「逃げるぞリリス、ミナ。こっちだ」


 リリスとミナも駆け足でベルフの後についていく。後には、階段から転げ落ちてクエストをリタイアした冒険者と、裝備も何もかも剥ぎ取られたその男を驚愕の目で見ている他の冒険者達だけであった。

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