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「で、君は来訪者症候群と診断された」

 それが医者から俺への死刑宣告だった。

「それ何ですか?」

 猫の声が聞こえる。なのに、それが変なことだと思えない。

 それに対する答えとして、なにやらの症状だと言われた。それなら、高校生の俺にだってわかる。今、俺が精神的な疾患を抱えていると言われたのだ。そして俺はそれを平然と受け止めている。

 これほど空々しいことは無い。

 遠くを見ている俺をそのままに、医者は続けた。

「猫は喋らないよね。そう、そこは君も納得している。ならば君は何故猫の声が聞こえるのか、君の聞いた台詞はなんだったのか? それはね、その正体は、君がそうなったらいいなあと思った『想像』なんだよ。おや自分はそんなことを考えていない、って顔をしているね。でも、考えているんだよ。人間、意識していないだけで色々なことを深層心理の中で考えている。普段は表に出さないそれが、たまに夢という形で現れることもある、君は、原因は不明だが脳の覚醒と睡眠が同時に起こるんだ。いや、同時というのはおかしいかな。そう、君にはそこらにいる人が持つ「起きる」と「寝る」の間にあるスイッチが無いんだ。消失している。だから君は自分では起きているつもりでも脳が睡眠状態になることがある。その症状で君は判断力を失ってしまった。君には自分がみているものがおかしい、という気持ちが欠落してしまっている。妄想と現実の区別は認識できるのに、それが同時に起こることを、奇妙だと思えない。むしろ奇妙であることが当たり前と認識してしまう。己のこうなったらいいなあ、という願望や実はそうなんじゃないのかな、という妄想が意識の外側を通り抜けて勝手に認識に飛び込んでしまう。それは心の中から願っていることなので非現実的でありながら違和感を感じることは出来ない。現実の世界と、想像の世界が重なって見えていて、君はどちらの世界も正しく思えて、同時に生きることになる。そう、見知らぬ土地に来た来訪者のように君は常識が通じないことを気にしなくなる……。え? つまりどういうことだって? あー、だからさ【だから、君は起きたまま夢を見てしまうんだよ】 え? 信じられない? けれど君は、今もこうして夢を見ているだろう? え、と、名前は? ……高山和時(たかやまかずとき)君? ふむ。なら和時君。君は本当に誰もいないはずのお昼休みに、診察室にいるだけのこの正体不明がお医者さんに見えるのかい? 白衣を羽織っているいるだけのこの和服美人が」

 白衣を纏った美しい彼女は、そう言ってバカにするように笑う。

 そういえば、目の前にいる彼女は……結構自分のタイプだった。

 これも、深層心理の見せる幻だというのだろうか。

「ああ、ちなみに言っておくと私は幻だけれど、来訪者症候群という存在は本当だよ。私は君が望んだつい三十分前に君が医者から聞いた来訪者症候群の話をかいつまんで言う人物の夢、なんだ」

 突然、医者モドキの体が、消えてゆく。足元から煙のように、消えてゆく。

「というわけで、夢の世界にようこそ来訪者」

 本気かよ。

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