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双炎の魔剣騎士  作者: メープルシロップ
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第五章:《編入生と学園の女王2》

 編入生と風宮会長との申請試合。その噂は瞬く間に広がり、校庭には大勢の観客が集まっていた。


 「両者、準備は?」


 金剛寺が言った。


 「いいわよ。」


 「もちろん!」


 二人がそれに答える。


 「では、申請試合はじめ!」


 金剛地が試合の開始を宣言した。そして、それと同時に動いたのは風宮会長だった。


 風宮会長は、試合の模範のように円滑に簡易デバイスを起動。会長の武器は主に砲撃。大量の砲撃系の武器を瞬時に展開し、相手に反撃の隙を与えることなく相手を鎮圧する。


 会長はいつものように、得意技の広範囲一斉射撃を展開。簡易デバイスとはいえ、会長の攻撃は威力が半端ではない。この攻撃に耐えることのできる奴は、そうは居ない。


 そして、会長の攻撃で希の居た場所は土煙で覆われた。


 「さあ、これでわかったでしょ? あなたは私に勝つことはできない。神裂 希、あなたは退学よ。」


 土煙で覆われている希に会長が退学を宣言する。


 「それは、おかしな話ですね。風宮会長。」


 希の声が聞こえたのと同時に、希の影が浮かび上がった。


 「会長のあの攻撃を食らって立っているだと?」


 審判の金剛寺が驚きを隠せないでいる。


 「たいしたものね。どういう技を使ったのかしら?」


 風宮会長が希に問いかける。


 「当然ですよ。会長もわかっているはずですよ。」


 煙の中から希が歩いて出てくる。


 「な、その武器は――――――。」


 風宮会長はおろか、その場に居た観客の全員が驚いた。希の持っていたその武器、それはつまり、練成形態の武器であったからだ。


 「あなた、あの攻撃の間に練成をしたとでも言うの?」


 会長は少し、動揺しているようである。


 「いいえ、違います。この武器で風宮会長の攻撃を防いだんです。」


 希は当然の如く答える。


 「会長も知っているでしょう? 簡易デバイスでは練成形態には勝てない。それは教科書にも載っている当然のこと。それは、この学園の一番の実力者である風宮会長であったとしても、同じことが言える。」


 そう言って、希は土煙の中から出てきて、持っている刀を構えた。


 「今度はこちらから行きますね。」


 そう言うと、希は地面を強く蹴り、風宮会長との距離を一気に詰める。


 「しまった!」


 希の「瞬間練成(仮)」に動揺した会長は、次の動作にわずかな遅れを生じさせた。


 「これで終わりです!」


 会長の目の前に辿り着いた希は、そう言って刀を横一線に振り抜いた。


 「カン!」


 会長に向けて振り抜いたはずの刀から、本来ならば聞こえるはずの無い金属の衝突音が聞こえた。


 「そう簡単に倒されないわよ!」


 会長は両手に持っている一挺のライフル型のデバイスで、希の攻撃を防いでいた。


 「さあ、今度こそ決着よ!」


 風宮会長が周りの砲撃の第二射の準備を終え、全ての銃口を目の前の希に向ける。これでは、希はどこにも逃げることができ無い。


 「っ――――――。」


 会長の攻撃は狙い通り、希に全弾命中。申請試合は会長の勝利という形で幕を閉じた。




 「痛ったー。」


 私が目を覚ましたのは、医務室のベッドの上だった。


 「あ、大丈夫ですか?」


 私に問いかけてきた人物は、目がパッチリと大きく、背が少し小さめのナース服を着た少女であった。彼女の印象は、どことなくウサギを彷彿させるように思えた。


 「あ、あの……。ここは……?」


 私が彼女に聞くと、彼女は慌てて答えた。


 「あなたは会長に申請試合をして、それに負けて、怪我をしたので、ここにつれて来られたんですよ?」


 そうか、私は負けたのか。久しぶりに負けたということを思い出し、思わず苦笑いをしてしまう。


 「私は医療科の愛川 恵と言います。あなたと同じ、高校二年生です。あと、会長が運んできてくれたんですよ?」


 自己紹介と同時に意外な発言が彼女から発せられた。


 「風宮会長が?」


 私は、驚いた。そのまま学園の外に放り投げられるかと思っていたからだ。


 「愛川さん、会長はどこに?」


 私はベッドから立ち上がり、愛川さんに会長の場所を聞いた。


 「そう言えば、会長があなたを呼んでいました。目が覚めたら会長室に来るようにって。」


 会長室?ということは、退学の手続きか何かかな?


 「あー。退学かー。」


 私がベッドの上で声に出して言うと、愛川さんが思い出したかのように、私に言った。


 「そう言えば、退学は取り消してもらえたみたいですよ?」


 愛川さんが、持っているタブレットを操作し、私にデータを見せてくれた。そこには、この学園への正式な編入が認められたことが書かれていた。


 「これは、どういうこと?」


 疑問に思いながら、取り敢えず生徒会室に向かうことにした。


 「ありがとね。メグちゃん。」


 私は医務室を出るときに、愛川さんにそう言った。


 「め、メグちゃん……!?」


 愛川さんのパッチリとした目が、驚きで余計に大きくなる。


 「フフフッ。これからよろしくね。」


 私は、そのまま生徒会室に向かった。




 生徒会室に向かう廊下を歩いていると、廊下で優斗に出会った。


 「お、希。怪我は大丈夫だったか?」


 優斗が聞いてきた。


 「うん。大丈夫だったよ。さっきはごめんね。」


 私は謝った。


 「そうだよ。俺の忠告を無視するし、勝手に申請試合始めるし。」


 優斗が苦笑いをしながら言っている。


 「ごめん、ごめん。今度からは無いようにする。」


 私がそう言うと、優斗は私の頭をやさしく撫でた。


 「で、退学は無しになったんだろ?」


 優斗もそのことを知っていた。


 「え、何で知ってるの?」


 「だって、希が気絶している間にみんなの前で言ってたから。」


 「それに、あれは多分、希の覚悟を見たかっただけじゃないかな?」


 「覚悟?」


 私が首を傾げると、優斗が早く生徒会室に向かうよう促した。


 「大体の内容はわかるけど、会長も悪いようにはしないって言ってたから、緊張すること無いと思うよ。」


 優斗はそう言って廊下の角を曲がっていった。


 とは言っても緊張しないなんてできない。なぜなら、生徒会室の入り口のドアがいわゆる大豪邸の玄関のドアのような重高感あふれるデザインだったからだある。


 「こんな所に風宮会長達、生徒会メンバーがいるのか。」


 私は覚悟を決めて、ノックをして中に入った。


 「失礼します。」


 中に入ると、生徒会室のドアから想像される、それ以上の高級感あふれる光景が広がっていた。これは、学園長室に引けを取らないレベルだ。


 「あ、そこのソファーに座って少し待ってて。」


 奥の部屋から風宮会長の声が聞こえた。どうやら、何か作業をしているらしい。


 言われた通りソファーに座ろうとしたとき、背の高い眼鏡の生徒が生徒会室に入ってきた。


 「邪魔だ。」


 男子生徒は私を睨みつけ、それだけ言うと、置くの部屋に入っていった。


 「あの人、どこかで見たような。」


 邪魔と言われたことに関しては聞き捨てならないが、それ以上に、風宮会長が私を呼び出したことがとても気になったので、この事はそのまま見過ごした。


 「そもそも、何で私の退学を取り消したんだろ?」


 私が悩んでいると、奥の部屋から背の高い眼鏡が出てきた。


 「会長が呼んでいる。来い。」


 眼鏡の生徒から、なんとも雑な扱いを受け、少しイライラしながら奥の部屋に入ると、「会長」と書かれた大きな高級感あふれる机に会長が机に肘を付いて、手を組んで座っていた。


 「傷は大丈夫?」


 会長から出た第一声が自分を気遣う言葉だったので、少し驚きながら、「はい。」と答えた。


 「あの、風宮会長。私は何でここに呼ばれたのでしょうか。」


 すると会長は、微笑みながら答えた。


 「そうね。私はこの学園で一番強いのよ?」


 「えっと、そうですね。生徒会長ですし。」


 私は会長の答えに対し、少し疑問に思いながら言葉を返した。


 「希さん。あなたが最後に手加減したことについて、私が気づいていないなんて思ってはないでしょうね?」


 会長から出てきた言葉に私は動揺を隠せなかった。しかし、素直に話すわけにもいかないので、私は言い訳を言った。


 「あ、あれはですね。技を出すタイミングがずれてしまってですね。それで技を出さなかったと言いますか。出せなかったと言いますか。」


 我ながら、とても言い訳じみた言い訳だ。すると、会長が言った。


 「そうですか。」


 え、あっさり承諾された? 


 「あくまで言わないつもりですか。」


 やっぱり承諾されていなかった。


 「良いでしょう。言いたくなければ言わなくて良いです。」


 風宮会長が手を組むのをやめ、席を立った。


 「では、本題に入ります。」


 「え、今のは本題では無かったんですか?」


 「ええ、個人的に聞きたかったことですから。」


 私が聞くと、風宮会長はあっさりと答えた。


 「では、本題に入ります。」


 「希さん。あなたの処分ですが、私は退学処分を撤回しました。」


 「あ、はい。さっき廊下で、優斗から聞きました。」


 「ええ。ですが、条件があります。」


 「え、条件?」


 「そうです。」


 会長は私を見たまま微笑んだ。


 「そ、その条件とは何でしょう。」


 私は恐る恐る聞いた。


 「簡単なことです。今から、あなたの隣にいる人と模擬戦を行ってもらいます。」

 

 そう言われ隣を見ると、さっきの眼鏡がいつの間にか私の隣に来ていた。


 「え、えっと。誰?」


 私は率直な疑問を問いかけた。


 「さっき、私たちの審判をやっていた副会長の金剛寺 猛よ。」


 風宮会長が答えた。


 「審判として見ていたが、さっきの申請試合、気になる点がいくつかあった。」


 金剛寺副会長は眼鏡の中からこちらを睨んで言った。


 「へ、へえ。そうなんだ。」


 私は苦笑いを浮かべて返事をする。


 「という訳で、あなたの太刀筋を見ておきたいの。」


 そう言うと、風宮会長は壁にある赤いボタンを押した。


 「わっ――――――!」



 ボタンを押すと同時に、私たち三人のいる部屋がエレベーターのように、地下に降りていった。


 「これから、どこに行くんですか?」


 私は会長に聞く。


 「秘密の場所よ。」


 しばらくすると、そこには大きな模擬戦用の施設が広がっていた。


 「こんなところがあるなんて。」


 私は素直に驚く。そして、会長が言った。


 「ここには、私たち生徒会しか入ることが許されない。つまり、他の誰にも見つからないってことよ。」


 その言葉は、模擬戦場の壁の反響で、拡声器で喋っているかのように響いた。そして、こう続けた。


 「あなたの技が大勢に見られることもない。だからもう一度、全力で戦ってほしいの。」


 会長が真剣な目で言った。


 「それが、条件ですか?」


 私は真剣な目で、風宮会長に聞く。


 「そうよ。ついでに、行動の自由も与えるわ。」


 「行動の自由?」


 「ええ。私の権限で、あなたはこの学園に在籍するだけで、授業に出なくても卒業ができるようにしてあげる。」


 こんな好条件を逃す訳にはいかない。


 「わかりました。でも、手加減はできません。」


 「お前、俺に勝つ気でいるのか?」


 金剛寺が聞く。


 「ええ、本気ですから。」


 私は笑顔で答える。


 「では、位置について。」


 風宮会長が審判になり、模擬戦が始まろうとしている。


 「模擬戦、始め!」


 「BATTLE START!」


 機械音とともに模擬戦場が広大な平原に変わっていく。


 「その生意気な口。利けないようにしてやる!」


 金剛寺が双剣型の簡易デバイスを形成し、私の方に向かって一気に距離を詰めてくる。


 「死なないでくださいよ。金剛寺副会長。」


 私は静かに呟いた。



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