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双炎の魔剣騎士  作者: メープルシロップ
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第零章:プロローグ≪破滅の光と漆黒の影≫

 第零章:≪破滅の光と漆黒の炎≫


 その日、目を覚ますと電子時計が、AM 4:00を示していた。


 「私にしては珍しいわね。いつもなら、目覚ましが鳴っても起きないのに。」


 私は自分に“よくやった”と心の中で自分を褒め、ベッドから体を起こした。

だとしても、まだ朝の4時。朝食を作るには早すぎる時刻。どうしたものかと考え、取り敢えずカーテンを開けてみた。


 季節はまだ春。朝日は昇っていないはずだった。


 しかし、カーテンを開けた窓に映っていた光景は私の予想を遥かに凌駕していた。


 「こ、これは……。」


 私はこの光景に見覚えがあった。それはつい先日、仕事の合間にニュースで見た光景であった。


 そのニュースによると、町の中心部から原因不明の異常な魔力と虹色に輝く光が放出され、その日のうちに町の魔力が無くなり、町の全てが黒い灰に変わり、そして消えてしまうというものだった。


 「まずい!」


 私は直ぐに部屋を出て、魔力の放出元に走った。


 「私の部屋の窓から見た景色から、場所はおそらく噴水のある広場。」


 私は全速力で広場に走った。私に何ができるかは分からないが、広場に向かわずにはいられなかった。

 

 「ここを曲がれば――――。」


 広場に出る角を曲がった途端、大量の魔力の放出による衝撃波と光が、私の全身を容赦なく襲った。


 その衝撃は凄まじいもので、私の体を、広場に隣接している建物の壁に勢いよく叩き付けた。


 「くはっ!」


 壁に叩き付けられた衝撃で、私の口からは鮮やかな紅色をした血液が吐き出され、口内は血液の味で満たされた。


「げほっ! どうにか……しないと……。」


 私は衝撃に耐えながら立ち上がり、一歩ずつ魔力の放出元に近づいた。壁に叩き付けられた衝撃で鎖骨の片方と肋骨の2本が折れていたが、今はそんな事を気にしている暇は無い。一刻も早くこの現象を止めなければいけない。


「――――くっ!」


 やっとの思いで放出元の場所に辿り着き、衝撃波と光の強さに圧倒されながら、この現象を止める方法を考えた。


 しかし、いくら考えても方法が見当たらない。それもそのはず、放出元の地面は割れ、その下から噴火のように勢いよく魔力が放出していて、魔力の放出を止めることは到底出来ない状況にあったからだ。


 「どうすれば……。」


 誰よりもいち早く気づき、駆けつけることが出来たのにもかかわらず、何もできない自分にどうしようもない不甲斐無さを感じ、それと同時に体の力が一気に抜け、私の体は再び壁に叩き付けられた。


 「ごめん……。私、何もできなかった……。」


 私の目からは、涙が溢れ出していた。その涙は、親友との約束を果たせなかったことや、大好きな人に告白できなかったこと、そして、この町を救うことが出来なかったこと。私が出来なかったことの全てがその涙には含まれていた。そして、力を入れても動かない体を悔み、私は願った。


 「……力が……欲しい。」


 しかし、その声は激しい衝撃派と光によってかき消され、また、その命も付きようとしていた。意識がだんだん薄れ、視界が黒く覆われた時、その声は聞こえた。


 「……力が欲しいか?」


 薄れゆく意識の中、最期の力を振り絞り、目を開くと、そこには黒い影が立っていた。その影は黒よりも黒い、漆黒の炎を纏っているように見えた。


 「……あなた……は?」


 逆光のせいか、黒い影の顔は識別することが出来ない。


 「……力が欲しいか?」


 黒い影は再び聞いてきた。


 「……そうね。力は……欲しい。」

 私は素直に答えた。この影が何者なのか。何の意図があるのか。そんなことを考える暇など無かった。私の望みは1つ。この町をニュースで見た光景にしたくない。ただ、それだけだった。その為だったら、どんな力でも欲しい。私はそう思った。



 「……ならば、与えよう! この世の全ての力を!」


 黒い影は、漆黒の炎をとりこむように黒い刀に姿を変え、私の右手の甲に黒い六芒星を浮き上がらせた。そしてこう言った。


 「契約は成立した。さあ、私を使え! 貴公の願いを叶えよ!」


 その言葉と共に、私の体から黒い力が溢れ、瞬く間に傷が癒えていく。ズタズタになった服は赤い竜の紋様が入った漆黒の服へと姿を変えていった。


 力が体の底から溢れ、さっきまで立つことすらできない状態であった自分が嘘のように思えた。


 「これなら……、いける!」


 私は、思いのままに刀に魔力を注いだ。私の魔力は1つの柱のように天高く上り、漆黒の雲を発生させた。


 「この町を灰にはさせない!」


 地面を強く蹴り、空高く飛び、刀を天に向ける。天に向けた刀は漆黒の雲に呼応するように怪しく光った。次の瞬間、漆黒の雲から黒い雷が刀に降り、その力が刀に宿る。私はそのまま刀を構え、魔力の放出元へと飛び込んだ。


 「魔力よ! 止まれー!」


 強い光と大量の魔力が私の周りを包み、私の視界は真っ白になった。



 どれくらいの時間が過ぎたのか、気がつくと私は町の外れにある廃工場の中にいた。月明かりが窓から差し込み、工場の中を静かに照らしていた。


 私は慌てて右手を見た。そこには月明かりに照らされて、漆黒に煌めく刀が握られていた。そして手の甲には黒い六芒星が刻まれていた。



 「町は救われた。そして、貴公の願いは叶った。」


 刀から聞こえるのは、黒い影の声だった。


 「そうね……。この町は、あなたに救われたわ。あなたは何者なの?」


 私は廃工場の窓から見える月を見ながら、静かに刀に問いかけた。


 「それを答える必要は無い。貴公は我と契約した。そのとき、私の記憶も見たはずだ。」


 刀は静かに答えた。そして、少しの沈黙が私と刀の間に流れた。


 「……あなたは、私に……何を望むの?」


 私は刀に問いかけた。


 「我は何も望まない。望むものは貴公の望み。」

 

 迷い無く刀が答える。


 「あなたはそれでいいの?」


 私は刀に問いかける。


 「……」


 刀は何も答えない。再び、刀と私の間に沈黙が流れる。


 「わかったわ。あなたの願い、私が叶える。」


 私は刀に言った。


 「貴公は、……それで良いのか?」


 刀が私に問う。


 「私たちは契約者同士よ。」


 私は刀に言った。


 「……」


 刀は何も答えない。


 「そうと決まれば、出発するわよ。」


 私は漆黒の刀を片手に、月夜に浮かび上がる廃工場を後にした。


 「破壊とは何か? 創造とは何か? 光とは何か? 闇とは何か? 正義とは何か? 悪とは何か? さあ、あなたの答えは? あなたは答えることができるかしら?」


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