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第9話:非公式緊急クエスト

 いつかまとめるつもりですが、その前にランクについて、少しここに書いておきます。

特に知らなくても問題ありませんが、なにか参考にしてもらえば、と思います。

ーーーーーーーーーーーー


SS 400~

S+ 350~399

S 300~349

A+ 250~299

A 200~249

B+ 150~199

B 100~149

C 80~99

D 60~79

E 40~59

F 20~39

G 0~19


・冒険者ランクは集会所で行われる実戦テストなどで決まり、ステータスとは関係ない。


・冒険者ランクで一般的に

G   :一般人レベル

F~D  :初心者レベル

C~B :中級者レベル

B+~A :上級者レベル

A+~S :有名パーティーレベル


・モンスターのランクは単純な強さ。

※クエストのランクは大体モンスターのランクで決まる。

※モンスターのランクはそれと同じ冒険者ランクの者が複数で安定して倒せるレベル。

広々として落ち着きのある喫茶店の様な内装で、白を基調とした壁や天井のあるここ王立魔法学校の食堂には、何個か机が並べられており、1つの机につき4~6個の椅子が備えられていた。

 

そんな席に座り、カズオは、いつものようにさみしく朝食を食べていた。彼に周りの視線が相変わらず突き刺さるが、もうそんなことは気にせず、着々と食べ進めていく。


先ほど、最近ルナと一緒の日課となりつつある闘技場での朝の魔法練習を終え、今は朝食の時間であるのだ。とはいってもカズオは最近、魔力操作の基礎だけを練習しているし、そこまで目立つ事はやってないので、加護についてばれる心配など全くないので大丈夫である。


「今日から近接戦闘と総合技術の授業が始まるなー……」


カズオは、そんな独り言をいうと、友達を持っていないということをあらためて再認識してしまい、余計に独り悲しくなるのであった。


そんなことはともかく、今日から強制参加の授業の説明や前置きの時期が終わり、本格的に授業が始まるのである。冒険者志望の者が多い第5クラスは、この日を境に人数が減少するのである。だが、この学校では授業に出なくても実力テストで良い成績をとれば卒業出来るので問題となることはないが。


ちなみに、言い忘れていたが、この学校に筆記の授業なんて無い。入学試験には筆記試験などというものは行われるのだが、それも一般常識が出題されるだけでそれ程重要ではないからである。


こうなると王立魔法学校なんて名ばかりのように思えるが、それなりに優秀な学校であるのは間違い無いので安心してほしい。


「ねぇねぇー、そこの隣座っていいー?」


カズオが1人で食事をとっている時、彼は、そばで誰かが立ち止まる気配がし、斜め後ろから聞こえたその少女の声に反応、後ろ向く。


そこにはすこし茶色に焼けた肌と、白い髪に水色の綺麗な瞳にウサミミという獣人の美少女が立っており、身長は160くらいでカズオより少し低くルナやマリア達より少し高いくらいであった。


「あ、あぁ、別にいいけど 」


カズオが少し戸惑いながらそう言うと、獣人の美少女は、甘い良い匂いを纏いながら、彼のすぐとなりの席に座る。


その後、カズオは残り少なかった食事をすぐに胃に納めると、白髪のウサミミ美少女が何か言ってくるのだろうと思い、様子をうかがう。


だが少女は、その空色の瞳でカズオの顔をジーっと見つめたままであり、彼女から喋ってくる気配が一向に無かったため、彼は、彼女が何故ここにきたのかかわからなかったが、こちらから喋りかけることにした。


「えっとー…、何か用があったりするのか?」


他に席が空いていない訳でもないし、そのウサミミ美少女に食事が運ばれてこないことから、彼女はもう既に食事を済ましているのだろう。故に彼がそういうことを尋ねるのは、当たり前の事である。


「…………あっ、ごめんねー。つい見とれちゃってたよー。なんたって黒髪に黒目なんて珍しいからね」


カズオは彼女のさっきからの動作を見て、無駄が無いことに気が付き、彼女が手練れであるのではないかと思った。だが、そんなカズオの考えに気が付くことなく、ウサミミの少女は話を続ける。  


「……それで用があるかってことだったね……実は君にとっても重要なお願いがあるんだ」


そう言うと、ウサミミ美少女はこちらを正面に椅子を向き直し。さっきまでとは違う真剣な空気が漂い始めた。


「これからあたしの言うことに驚くかもしれないけど、最後まで聞いてくれるって約束してくれないかな?」


「え? あ、あぁ……よくわからないけど約束するよ、一応最後まで聞く」


「ありがと。じゃあ単刀直入に言うね……」


急に変化した彼女の空気に、カズオは彼女の口調からなにか重大なことを言われるのではないかと予想した。すると彼女はゆっくりと口を開く。


「ーーーー君に私の村を助けてほしいの」


「……え!? たすける?」


だが、カズオにとって、それは予想の斜め上をいくものであった。彼は、初対面の人からその様な事を言われるとは全く予想していなかったのである。 


そして彼女はそんな反応をスルーして話を続ける。


「あのね、実はあたし故郷の村がここ王都セントラルからかなり北に在るんだよね。正確には結構東よりだけど……。まぁそれでね、昨日、村がBランクモンスターの“スノーウルフ”に襲われて危機的状況にあるっていう情報が入ったんだ……。村のみんなは建物内に篭城してるらしいから、そこそこ長くは耐えれてるみたいなんだけど…、それでも冒険者や騎士団からの助けが来るまで長くもつとは限らないの……」


ウサミミ美少女は話をするにつれ、徐々にうつむいていった。余程そのモンスターに襲われているという故郷の村ことが心配なのだろうとカズオは思った。そして、少女は強い意志を宿すその水色の目を真っ直ぐと彼に向けた。


「ーーーだからね、村のみんなを助けてほしいの、君に。君のその力に!」


彼女の目は真剣そのものであった。目を見たところでは悪意など感じさせないような、むしろ、心が透き通っていると思わせるほどに。だがカズオは、そんな唐突な願いをいきなり聞く事は出来ない。


「ちょ、ちょっとまってくれ。意味が分からないことだらけなんだけど。まず、もしそれが本当なら、俺なんかが行くより緊急クエストの発行を待った方が確実なんじゃないのか?」


緊急クエストとは、集会所にモンスターや魔族による緊急を要する問題が発生したと通達された時に発行されるものである。それに報酬も普通のクエストより遙かに高く、誰でも受注可能であり、誰かが既に受注してても、重ねて他の人が受注できるという点も緊急クエストと普通のクエストとの違いでもある。


「……緊急クエストの発行なんか待ってたら、たぶん村のみんなが危ないよ……」


「それもそうか、…なら急いだ方が良いって事なんだな」


でも、と言い放ちカズオは続けた。


「もう一つ疑問に思っているんだが、何で俺なんだ? 強い奴を探してるのなら俺なんか的外れじゃないのか?」


カズオは、この白髪ウサミミ美少女が“魔法学校の恥”と悪名高い自分に、わざわざ村を襲うモンスターの討伐という戦闘能力が必要なことを頼んでくるのを不思議に思ったのである。


「カズっち。あたしね、君のことを知ってるよ?……それに、君の強さもわかってる」


「……どういうことだ。強さって……それに、俺は“魔法学校の恥”と言われるような奴だぞ? さっき会ったばかりだし、何でステータスボードも見てないのに俺の強さがわかるんだ?」


何で俺の名前も知っているんだ?ともカズオは聞きたかったが、たぶん“魔法学校の恥”と名高い自分のことなんてみんな知っているのだろうと思いふれなかった。


そんな彼の焦り気味な発言を気にすることなく、彼女は表情を柔らかくし、少し微笑んで答えた。


「ーーーあたしね、加護持ちなんだ」


カズオはその言葉に驚き、呆気にとられてしまった。


それもそのはずである、加護というものは、それほど珍しいものである。この優秀な王立魔法学校でも学年に1人でも加護持ちがいれば、それはすごいことであると言えるほど珍しいものであるのだ。


ちなみ学校の入学試験の時に、成績優秀者は、先生の特殊なステータスボードにより、加護持ちであるか調べられるということがある。それは加護持ちが成績優秀となることは過去何年ものデータからわかっているということからであり、それが加護を3つ持っているということを知られたくないカズオが、入学試験で手加減した理由の1つであったりする。結果的には、誤った情報により手加減をし過ぎてしまったのであるが。


閑話休題。


そんな彼女が加護持ちであるということに、驚きのあまり言葉を失っていたカズオに彼女は話を続ける。


「ごめんね、急にこんな事言って。ちょっと単刀直入過ぎたね。それでね、あたしの加護の能力の一つは、相手のステータスの能力値だけを完全に把握する能力なの。だからカズっちの強さもわかってたんだよね。あっ……き、君の名前も、君が有名人だから知ってるんだけどね」


その言葉を聞いたとき、カズオは、一応知られたくはない能力値のことが知られてしまったのだと思った。さらに彼は、こうなったら自分の能力値は隠す必要はもうないとも思った。


「……ということは、君はここで、自分の故郷の村を救うことの出来る程の、能力値の優れた者が来るのを待ってたということなんだな?」


カズオがそう確認すると、ウサミミの美少女は黙ったまま大きく頷いた。


「そ、そうか……よくわかった。たしかに故郷の危機なら緊急クエストが発行されるのを待つことも出来ないのもわかるな。でも、仮に俺がその緊急クエストをクリアできる能力があるとしてもだ。今日会ったばかりの人にそんなこと言われて、俺としては、色々とわからないことが多すぎるし、メリットもわからない。だから、すぐにはやるかどうかなんて判断はできないな」


その言葉にウサミミ少女は悲しそうな顔をする。


「確かに急すぎるかもしれないけど、報酬も全額あげるし、素材だって提供するよ! だから、何とか力を貸してもらえないかな?。……あたし……村を助けたいんだ」


カズオの能力値を見たからであろうか、どうやらこの少女はどうしても彼を連れて行きたいようである。


「うーん…もう少し考えさせてくれないか?」


ウサミミの彼女はその言葉を聞くと、沈んだ感情を表すかのように、自身の長い耳を畳んだ。


「そうだよね……そりゃ急すぎる話だし、カズっちの都合も考えてないもんね……ごめんねこんな急な話して。それでも、あたしのわがままを最後まで聞いてくれてありがとね」


そう言うと、少女は後ろを向き、すこし落ち込んだ様子のまま立ち去ろうとした。だが、直後少女の動きは止まった。


その時、カズオの右手はしっかりと少女の右手を掴んでその動きを止めていたのだ。


(ーーーー『リンク』)


彼は無詠唱で無属性魔法リンクを発動すると、彼女と今の思考を共有した。


「なぁ……、もしやとは思うけど、緊急クエストの発行を待たずに、1人で行くなんて言わないよな?」


カズオは、その質問の答えはもうすでにわかっていた。それはつまり、彼女は1人で行く気満々であったのだ。それにリンクにより、彼女からは悪意は全く伝わってこなかったことも彼は気が付いた。そして、そこでどうやら彼女はただ単に協力して欲しいだけであったのだろうとカズオは確信した。


先ほどのカズオの言葉には答えず、無言のままウサミミの少女は下を向いていた。


「そうか、わかったよ、女の子を1人で行かせるなんて、男のする事じゃないしな。……まぁ、そういうことだから非公式緊急クエストということで引き受けるよ」


カズオは、いろいろと資金が必要だったので、この依頼を引き受けることにした。さっきまで落胆の表情を浮かべていた横のウサミミ少女は「ありがとー!カズっち」と言いながら嬉しそうに長い耳をぴょこぴょこと跳ねさせて、こちらに抱きついてきた。


「というか、俺は特になにも準備の必要は無いから、もしそっちの用意が出来ているのなら、すぐにでも出発してもいいぞ」


「えっ!? すぐでいいの? ……準備は……まだだけど早い方がいいと思う。あたしは頑張ってすぐに準備終わらせるから、カズっちは先に王都の大門の外で待っててくれないかな?」


「そうだな、外で待っているよ。あっ……というか、その前にクラスと名前を教えてくれないか?」


「あっ、そういえば教えてなかったねー。あたしは第1クラスのエルレンシア。エルって呼んでねー。よろしくね、カズっちー」


「第1クラスかー……あぁ、俺は、第5クラスだ、まぁもう知っていると思うけどよろしく」 


食堂に現れたむちゃくちゃなことを言う少女。なぜムチャクチャかと言うと、後にカズオは知ることになるが、今回の緊急クエストは、普通であれば大規模なパーティーを組んでやるようなBランクモンスターの群れを狩るというAランクに匹敵するような高難度クエストであったからである。


ともあれ、この食堂での出来事がカズオとエルレンシアとの初めての出会いであった。





いつも読んでいただきありがとうございます。


今日の話は長かった話を分割したものであるのです。

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