狂気は凶器
ああ、今日もまた、狂気が闊歩している。
通りすがりの留学生が異国の地に伏せる。
通りすがりの老人がアスファルトに跪く。
狂気は凶器、人差し指一本さえ凶器になる。
ああ、今日もまた、酔気が闊歩している。
仲良し三人組が、おしゃべりの続きを天国でする。
仲良し親子が、思わぬ水中冒険に慌てる。
酔気は凶器、つま先ひと蹴りさえ凶器になる。
ああ、今日もまた、心気が闊歩している。
買い物客でごった返していた市場が一瞬で静かになる。
固いはずの高層ビルが砂のように崩れていく。
心気は凶器、聖人の一言さえ凶器になる。
ああ、今日もまた、嫌気が闊歩している。
テレビは品のない人集めに奔走し真実を偽装する。
紙より軽く、紙より燃えやすいネットに人々は騙される。
嫌気は凶器、曇った眼さえ凶器になる。
ああ、今日もまた、狂気が闊歩している。
あたしは浮上する狂気を笑顔で隠している。
爆発しそうな狂気をガラス瓶に閉じこめながらも、瓶を叩き割りたくなる。
狂気は凶器、気まぐれさえ凶器になる。
誰もが凶器を持っているし、
誰もが狂気を持っている。
だからあたしは普通。
たとえ、ガラス瓶を叩き割ったとしてもあたしは普通、普通の狂人。




