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アメリカの匂い

アメリカ市民の窓口を横目でにらみ、どきどきしながら入国審査を待つ。

辺りには香水の匂いが漂っていた。

空港のバス停に降り立つと、からりとした風が吹き、陽気な運転手が話しかけて来る。

辺りには有鉛ガソリンの匂いが漂っていた。

関取のような女学生が真新しい寄宿舎を案内しながら、次から次へと現れる知人に僕を紹介する。

辺りには、ミントチョコの匂いが漂っていた。


忘れていた夢がふとよみがえる、アメリカの匂いとともに。

ああ、アメリカに憧れていた俺の青春。




傷だらけの中古車を愉快そう乗りまわし、破れたジーンズを着こなすクラスメートは饒舌に語りかける。

彼の言葉には、自由の匂いが満ちていた。

パーティだと言ってケーキを買い、デートだと言って花を買うメキシコ系先輩は疲れを知らない。

驚くほど安い買い物には、豊かさの匂いが満ちていた。

分厚い本を、薄いコーヒー片手に読み進めては、ノートに要点をメモしていく。

クラスには、競争と公平の匂いが満ちていた。


忘れていた情熱がふとよみがえる、アメリカの匂いとともに。

ああ、アメリカに張り合った俺の青春。




ダンスパーティーの激しさに圧倒されて、ホールの隅で大人しくしていた留学生の君と僕は出会う。

二人の外側でバーボンの匂いが立ち込めていた。

友人に借りた車で郊外のショッピングモールに君と出かけた帰り、広すぎる駐車場で途方に暮れる。

二人の間で戸惑いと平穏の匂いが立ち込めていた。

先に修了した君は、故郷に帰ればエリートなのだと寂しそうに笑って、目をつぶる。

君の唇にハイビスカスの匂いが立ち込めていた。


忘れていた思い出がふとよみがえる、アメリカの匂いとともに。

ああ、アメリカに癒された俺の青春。




古き良きアメリカは、あの日、あそこにあった。

アメリカの匂いとともに。


僕ら異邦人の夢は、あの日、あそこにあった。

アメリカの匂いとともに。


僕ら二人の思い出は、あの日、あそこにあった。

アメリカの匂いとともに。


ああ、アメリカにあこがれていた俺の青春。

あのアメリカはどこ忘れて来たのだろうか。


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