泥酔哀歌
酔うほど饒舌になる貴方
重ねる言葉は虚ろ。
シシトウの串焼きには生が一番合うと気取るけれど
貴方の舌は恰好だけ。
あたしは知っているのよ、
家では安い発泡酒と愛すべき家族が待っていることを。
どうせあたしは安い女、
つまみにもなりゃしない。
虚ろな言葉にあたしはジョッキを傾ける、
虚ろな温もりに酔うために。
酔うほど寡黙になる貴方
重ねる杯は虚ろ。
まるで敵のように刺身のつまを平らげていく。
貴方の悲しみはきっと焼酎よりも深い。
あたしにはわからないわ、
何が貴方をいらだたせるのか。
どうせあたしはお頭の軽い女、
貴方を怒らせる事さえ出来ない。
虚ろな視線を合わせずに乾杯する、
虚ろな肌を確かめるために。
酔うほど体を寄せる貴方
重ねる掌は虚ろ。
キープしたコニャックをもったいぶって勧めるけれど
貴方が気にするのは財布だけ。
あたしは知っているのよ
家族はいないし、貴方を敬う部下もいないことを。
どうせあたしは醜い女、
連れて歩く価値もない。
虚ろなグラスをあたしは嗅ぎもせずに飲み干す、
虚ろなお札を手にするために。
酔うほど愚痴っぽくなるあたし
重ねる涙は虚ろ。
苦労が、人生を豊かにすると説教するけれど
本当のあたしは説教する資格もない。
あたしは知らない
たった一人の恋人が、なぜ逝ったのかを。
どうせあたしは残り物、
振り返る価値もない。
花冷えに触れて今夜もひとり呟く、
虚ろな今を忘れるために。
熱燗に唇寄せて今夜も酔っぱらう、
あなたの分まで酔うために。
ぬる燗に頬ずりして今夜も酔っぱらう、
あなたの分まで生きるために。




