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二○一五年一○月二九日朝の天使

小柄な君はその日、自転車に乗っていた。

小雨のぱらつく中

ホームルームで司会なんかしたくないと思っていた。

ブレザーの肩を雨が濡らしていく。

学校に着くまであとほんの少し。

ペダルを思い切り踏む。

雨が激しくならないことを祈りながら灰色の空を見上げた。


私服の君はその日、コンビニに居た。

小雨のぱらつく中

夜勤明けの開放感を何かで満たしたいと思っていた。

窓の外では、男達が群れている。

これから職場に向かうのである。

雑誌と弁当を物色する。

しとしと雨の子守歌も悪くないと灰色の空を見上げた。


ふくよかな君はその日、玄関先で慌てていた。

小雨のぱらつく中

車の鍵が見つからないと悪態をついていた。

神経質な夫の顔が浮かんだ。

ゴミ袋を乱暴にひっつかみ

大股でゴミ置き場に向かう。

雨でも槍でも降るなら降ればいいと灰色の空を睨んだ。


色白の君はその日、ベランダにたたずんでいた。

小雨のぱらつく中

干すか、乾燥機を使うか、悩んでいた。

一番外側の洗濯紐がほんのりと湿る。

病で鈍い体では、何をするのも億劫だ。

そっとため息を吐く。

いっそ、土砂降りにならないかと期待しながら空を見上げた。


聡明な君はその日、出発を決意していた。

小雨のぱらつく中

平凡な日常という底なし沼から脱け出そうとしていた。

折り畳み傘を鞄から出して、

またしまい込んだ。

おろしたてのスニーカーで踏み出す。

平凡な天気を忘れまいと灰色の空にそっと手を伸ばした。


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