ほろ酔い賛歌
貴方を真似て、缶ビール片手に厚いステーキを焼く
だけど、ご馳走されるのは私でもなければ、貴方でもない
社員旅行で、上司の機嫌をとる私
貴方を真似て、カップワイン片手にサラダをつまむ
だけど、眼前に広がるのは高原でもなければ、大海原でもない
休日の朝に、私は一人、平日の穢れを洗濯する
貴方を真似て、料理酒片手にいなり寿司を詰める
だけど、冗談を言いながら一緒に作業する貴方はいない
実家で、母の小言を聞きながら新盆の準備をする
貴方を真似て、ブランデー片手に洗い髪をかきあげる
だけど、誘惑されるのは私でもなければ、貴方でもない
今宵、私は、平凡な男に抱かれる
貴方を真似て、梅酒片手に怪獣映画を見る
だけど、一緒に見るのは、ヲタクでも恋人でもない
中古マンションに、子供たちの奇声が響く
貴方を真似て、焼酎片手にラノベを読む
だけど、派手な表紙に眉をひそめるのは私じゃない
不可侵の境界が夫婦の間にくっきりと見える
ほろ酔い気分が私達だけの思い出を守る
ほろ酔い気分が私と世界を優しく橋渡しをする
ほろ酔い気分の私には、あの時の貴方が理解できる
白黒をつけたくなかったあの時の貴方が理解できる




