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泥酔哀歌 II

飲みたいから飲むんじゃない

ただ、雨に濡れながら泥酔したいだけ


触りたくて触ったわけじゃない

ちゃんと謝ったのに

なのに、あの女は、ヒステリックに俺を悪者にした

怒りで口の利けない俺に、捨て台詞を残して去っていった

明日から一本早い電車に乗らなければならないのだろうか


飲みたいから飲むんじゃない

ただ、誠の星を見ながら泥酔したいだけ


笑いたくて笑っているわけじゃない

活きのいい新人がやってきた

あっと言う間に、俺よりも上手くなった

丁寧な口調で俺のミスを指摘する

いつか、あの新人は俺の上司になるかもしれない


飲みたいから飲むんじゃない

ただ、風に吹かれながら泥酔したいだけ


怒りたくて怒ったわけじゃない

何度も言ったのに

なのに、君は、俺のいうことを聞こうとしない

君の尻拭いをするのは、いつも俺と俺の財布

君と別れるまで、何度も同じことをくりかえすのだろうか


飲みたいから飲むんじゃない

ただ、予感に怯えないよう泥酔したいだけ


休みたくて休んだわけじゃない

楽しむ気力と体力がないこともある

なのに、君たちは、趣味に俺をつき合わせようとする

楽しい振りをするのは、とても疲れること

家族なら、いつも一緒に楽しまなければならないのだろうか


飲みたいから飲むんじゃない

ただ、たまには一人で泥酔したいだけ


黙っていたくて黙っているわけじゃない

娘が万引きしたという

なのに、親として、許さなければならない

人生の先輩として、そんな子を諭さなければならない

いつまでも怒りを抑えておかなければならないのだろうか


飲みたいから飲むんじゃない

ただ、穢れを見ぬよう泥酔したいだけ


覚えていたかったわけじゃない

もうずいぶん昔の事

なのに、俺は、今でも時々思い出してしまう

穴があったら入りたいほどの赤面を思い出す

いつまで経っても忘れられないのだろうか


飲みたいから飲むんじゃない

ただ、鏡を隠して泥酔したいだけ


幸福しあわせを追い求めていたわけじゃない

目の前のことに必死だった

なのに、俺は、すっかり老いてしまった

過ごしてき人生もこれからの人生も酷くつまらなく見える

いつか、誰にも看取られずに消えていくのだろうか


飲みたいから飲むんじゃない

ただ、夢をみながら泥酔したいだけ


飲みたいから飲むんじゃない

ただ、同類を馬鹿にしながら泥酔したいだけ


飲みたいから飲むんじゃない

ただ、君を哀れみながら泥酔したいだけ


飲みたいから飲むんじゃない

ただ、誰かに同情されながら泥酔したいだけ


飲みたいから飲むんじゃない

ただ、雨に濡れながら泥酔したいだけ


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