棘のある薔薇
真っ赤な薔薇が匂い立つような芳香を放つ。
叩きつけるようなタッチで打ち込む君。
怒りを込めた呟きがネットに乗って拡散し、
まるで巡航ミサイルのように怒りの先へ収束していく。
君は知っているだろうか、
無知な呟きが、加害者でも被害者でもある当事者たちを傷つけることを。
君の怒りが棘のように僕の心に刺さる。
明るい黄色の薔薇がそよ風に凛々しく揺れる。
プラカードを高く掲げながら練り歩く君。
そのシュプレヒコールがテレビで拡声され、
まるで雷鳴のように不協和音を引き起こす。
君は知っているだろうか、
無責任なスローガンを黙ってやり過ごす職場があることを。
君の叫びが棘のように僕の耳を突き通す。
コーヒー色の薔薇がパサリと花びらを落とす。
電話、マスコミ、ブログ、あらゆる手を使う君。
運動のためならどんな手段でも許されるのだと
正義のためなら理がなくとも許されるのだとテンションを上げていく。
君は知っているだろうか、
聞く耳を持たない君に、語りかけ続けて燃え尽きてしまった者がいることを。
君の情熱が棘のように僕の皮膚を切り裂く。
真珠色の薔薇が花粉で蜂をおびき寄せる。
動物好きなのよと子犬を抱き上げて微笑みかける君。
虫も殺さぬ顔で殺虫剤をまき散らし、
いつしか、それは澱となって海溝に降り積む
君は知っているだろうか、
癒されるような微笑も鈴のような声も、死んだ目には、演技に映ることを。
君の演技が棘のように僕の目に刺さる。
君は薔薇、君は棘。
君の笑顔は、僕には眩しすぎる。
君の声は、僕にはもったいない。
君の仕草は、僕には理解できない。




