呟き姉さんのオフライン
指の先に止まったミヤマカラスアゲハ。その宝石箱の美しさと繊細な指にうっとりした。
「この写真、どうやって撮ったのかしら」何気ない私の呟き、
それで私達は呟き仲間になった。
何百というフォロワーの一人だった。
小さな地震があった。ニュースにもならない、小さな地震。
「そっちも地震があったの? もしかしたら案外近かったりして」何気ない私の返事。
その時から、私達は同じ風を感じ、同じ雷光に驚いた。
貴方の歳と家族のことを聞きたくなった。
ドラクエ、ポケモン、FF、はまったゲームのシリーズ名を並べてあって、懐かしむ。
「あっ、そのシリーズ、受験勉強そっちのけではまったわ」
その一言で、私の目的は達成された。
貴方が二歳下だとわかったの。
毎年海辺で開かれる市の花火大会。新しい朝顔柄の浴衣を写真に撮ってみる。
「一緒に行こうと約束していた女友達が急にいけなくなったから、浴衣が無駄になってしまったわ。貴方は誰と行くの?」
しおらしく、女らしく、演技をする。
驚くほど簡単に罠にかかった貴方に、却って疑いを深める。
溜息をつきながら、鏡に映ったBカップの胸を押し上げてみる。
「背が低いし、胸もないし、少し年上だし、期待しないでね」
予防線を張りつつ、ビルから見下ろせる待ち合わせ場所を指定して
オペラグラスを買いに走ったわ。
少し遅れるとDMしながら、オペラグラスで目印の麦わら帽子を探す。
「見つけたわ。イケメン! あれ、ちょっと若すぎない? どう見ても社会人五年目にはみえない」
と呟く横で、私とおなじように外を見下ろしながら電話している奴がいる。
しかもイケメンと同じ麦わら帽子をかぶっている。
分厚い眼鏡の奥で大きな瞳をパチクリさせている。
「そんなつれないこと言うなよ。兄ちゃんが女神様に会えるかどうかの瀬戸際なんだから。とにかく朝顔柄の浴衣の女性が現れるまで待っていてくれ」
男は、電話で話をしながら、視線を私の足元から上へとゆっくり移動させていった。
イケメンとは正反対に近い容姿ではあるが、呟きから感じられる陽気さと優しさを体現した男である。
「あっ、やっぱ、そっちはもういい…… 呟きの女神を見つけたから…… うん、何故か俺の真ん前にいる。結構、可愛いかも…… いや、眼が怖いかな」
男は目を見開きながらも電話を続ける。
それが、私達のオフの始まりだった。




