危ない場所
耳を澄ませできるだけ、男たちの話を聞く。できるだけ多くの情報を、できるだけ正確な情報を手に入れるため、しばらくその場を動かなかった。様々な情報が話の中で飛び交っていたが、どの情報も信憑性の薄い『噂』の域を出ないものばかりだった。
交代制らしく、新たに男が二人建物の前へやってきた。もともといた人が何かを手渡し、どこかにつながる道――獣道に入っていった。あとを追おうと動こうとしたが、背後でかすかに草の動く音がしたので、動きを止める。
男たちはもう見えないところへ行ってしまったので、仕方なく新たに来た男たちの話に耳を傾けた。
「噂なんだけどよ、大臣の何人かはこの戦争に反対らしいぜ」
「そんなの大臣から外されるだろ?」
「いやなそれが、総理の前ではそんなこと微塵も感じさせないんだ。俺だって、見てもそんなことわからないから、デマだと思うけどな」
「そう考えるのが打倒だろ」
男たちは笑いをこらえるように、喉の奥を鳴らしながら笑う。
おもわず飛び出しそうになる体を必死に抑え、頭を冷やす。しばらくしても、世間話しかしない男たち。何かあるのではないかと思っていたが、そんなこともないようだった。そんなとき、建物の中から出てきた小太りのおじさんが男たちを連れて再び中へと入っていった。
周りに誰もいないのを確認し立ち上がる。しばらく体を縮こまらせていたため、体が硬い。体をほぐすように、少しだけ動かす。
もうここにいても何もないだろうと思い、私は踵を返した。
カチャリ、音が耳元でなる。
死のにおいがかすかにしたが、自分に向けられている物がなんだか分からないわけではなかった。
『銃』だ。ちょうどこめかみの部分に触れない程度。だが、よけられない程度の距離に添えられている。恐怖に一瞬体が縮こまり、息をすることすら忘れてしまう。数秒……沈黙が続き、私は頭が冷静に働く。どこかで、死にそうなのもなれてるんだな、なんて考えてる自分もいた。
「お前は誰だ?」
その声にはどこかで聞いたことのあるような声だった。記憶を巡らせ、頭の片隅に埋もれるそれを、救い上げる。たどり着いた答えに驚きながらも私はテレビの中でしか見たことのなかった人の名前を口にした。
「市川早瀬防衛大臣……?」
「お前は誰だと聞いている」
「風です」
名前だけ告げると、探るような目つきでこちらを見ていることがわかる。しばらくすると、銃は降ろされ、その人は私の足元に座り込んだ。
「お前、よく俺を知っていたな。その歳で……」
市川大臣は若い。確か26歳ぐらいだった気がする。これも、さっきの男たちが言っていた「総理の味方」というわけだろう。だが、普通一般市民にこんな場所を見られたら殺すのではないだろうか?と思いその疑問を口にする。
「お前、ここがどういう場所か知ってるのか?」
「だいたい予想はついてます。ここからは死のにおいがするので……」
恐る恐るその言葉を口にすると、驚いたようにこちらを向き、立ち上がった。
「そうか。なら話は早い――」
死ぬのかな?という考えが頭をよぎったが、次の言葉に私は驚き思わず声をあげそうになった。
「この国を止めるのを手伝ってくれ」
この話に出てくる人(設定、場所、も含め)は、私の頭の中で作ったものです・
遅くなりました。
毎回、毎回、、すみません。
今月は忙しかったもので、要領の悪い私には物事を並行してする能力がないのです。
来月は暇になるので、更新できると思います。