表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫の集会所  作者: 眞乃鋳
3/10

2・見張り番

 少年達はその日、夕日ヶ丘二丁目の空き地で遊んでいた。いつもの空き地は、別の子ども達が使っていたため、普段はあまり来たことの無いここへ来たというわけだ。

しばらくサッカーをしていると、十歳くらいの少女が一人やってきた。そして、空き地の隅の方へ座ると、じっとサッカーをする少年達を眺め始めた。

最初のうちは、仲間に入れてほしいのだろうかと思い、ちらちらと少女の様子をうかがっていた。しかし、サッカーを見るのが楽しいらしく、彼女はその大きな瞳をうれしそうに細めているだけだった。少年達は、誰もが声をかけようか悩んだが、結局近づくことさえ出来なかった。そして数分目をはなしているうちに、いつの間にか少女は消えていた。

 次の日曜日。誰が提案したわけでもないのに、少年達は自然に、夕日ヶ丘二丁目の空き地へ遊びに出かけた。しばらく鬼ごっこをして遊んでいると、またあの少女が現れた。そして隅の方へ行き腰をおろすと、少年達の遊ぶ姿をじっと眺めだした。そこで今度こそはと思い、少年達は思い切って少女に声をかけてみた。

「誘ってくれてありがとう。でも、私はみているだけで良いの」

少女はにこりと微笑んでそういった。


 それから毎週のように、少年達は空き地に通うようになった。少女も毎回姿を現した。依然として、何も言わずじっと少年達を眺めているだけだったが、とても楽しそうだった。一月程空き地に通うようになってから、一人の少年が母親にこんなことを言われた。

「あんた達が最近通ってる空き地だけどね、あれは猫の集会所っていうんだよ。何でも化け猫がでるっていうから、あんまり遅くまでいるんじゃないよ」

しかしこの言葉は、かえって少年の好奇心を刺激してしまった。彼は、いつもの仲間達にそのことを打ち明け、化け猫を捕まえようと言い出したのだった。もちろんそれに反対するものはおらず、次の日曜日には皆、意気揚々と空き地に出かけていった。

そこで、一人の少年がある事に気が付いた。もしかして、毎回やってくるあの少女が、実は化け猫なのではないかと。

少年達はきっとそうに違いないと言い、あの少女が現れるのを待った。ところが、五分待っても十分待ってもその日少女は現れなかった。そのうち日も落ち、そろそろ帰ろうかという事になった。

しかし、その時。少女がいつも座っていた空き地の隅の方で、黒く大きな影が浮かび上がった。影は見る見るうちに巨大な猫の形になると、なんと少年達の方へ迫って来る。彼らは驚いて逃げ出そうとしたが、影猫は空き地の入り口に先回りして、逃げ道を塞いだ。そしていつの間にか、影猫の数はどんどん増え、少年達は四方を取り囲まれてしまった。

影猫が大きな口をあけて威嚇する。真っ黒な口の中には、真っ白く尖った歯がびっしりと並んでいる。このまま食べられてしまう、誰もがそう思った時だった。

突然影猫達が苦しみだし、締め付けられた様な声をあげながら、地面へ倒れていった。

しばらくすると、その姿はだんだんと消え、仕舞いにはなくなってしまった。

少年達が呆然としていると、いつの間にかあの少女が、空き地の隅に立っていた。そしてこちらにやってきた。

「危ないところだったね。あの影猫達は、いつも空き地の隅からあなた達を狙っていたのよ。今まではいつも私が座っていたから、手が出せなかったのだけどね。今日はごめんなさい。今晩の集会で、皆に配るマタタビを用意していたら、ここへ来るのが遅れてしまって」

少年達は、少女が言う言葉の意味が、しばらく理解できなかった。

「でももう、私が退治したから大丈夫よ」

少女はそう言うと、くるりと踵を返した。すると途端に、その姿が少女から一匹の虎猫へと変わった。


虎猫は一声鳴くと、どこへともなく消え去ったのであった。

今回は、人間に友好的な猫の姿を書いてみました(^^)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ