表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫の集会所  作者: 眞乃鋳
2/10

1・猫の儀式

 ある夜一人の男が、集会所に面した道を通りかかった。すると数メートル先の空き地から、話し声が聞こえてくる。

「今日は、儀式の日だ」

老人のような声だった。こんな夜中に誰だろうと思い、急いで行ってみると、空き地には何十匹もの猫が集まっていた。

一匹の猫をぐるりと取り囲んで、様々な猫達が人語を喋っている。男は好奇心から木の陰に隠れ、そのまま様子をうかがう事にした。

「皆やり方は解っているな? どんな奴でもいいから、人間の肉を食べるんだ。そうすれば、明日の朝にはもうすっかり、猫又になっている」

どうやら、最初に聞いた声の持ち主は、その真ん中の猫らしい。

遠目にも、年老いているということがはっきりわかった。そしてその猫は、すでに猫又であるらしい。尻尾が、二つに分かれていた。

それを見た男は、途端に恐ろしくなって、その場を去ろうと木から離れた。しかし、慌てすぎて足がもつれ、その場に転んでしまった。

「おい、人間だ! 皆、あそこに人間がいるぞ!」

それに気付いた猫が、大声で叫んだ。すると、我先にと猫が押し寄せてくる。男はすぐに起き上がり、助けてくれと泣き喚きながら逃げ出した。後ろからは、猫達が自分を引き止めようとする声が、次々に迫って来る。 

なんとか猫達を撒こうと、男は方向かまわずでたらめに走り出した。しばらく走ると不意に、追ってきているはずの猫の声が、しなくなった。そこでようやく、男は足を止め、今来た道を振り返った。しかしやはり、どんなに目を凝らしても、どこにも猫の姿はなかった。これは助かったと思い、男は自分のアパートに帰った。


 玄関に入る前に、ポストに手紙が入っているのに気が付いた。取り出して、中に入ってからその白い便箋を良く見た。すると差出人欄には「猫の集会所より」と書いてある。

急いであけてみると、手紙には…

「お帰りなさい、待ちくたびれましたよ。私はもう、すっかりはらぺこです。」

その時だった。背後から、手紙と同じ内容の、小さな声が聞こえて来た。振り返ると、そこには一匹の三毛猫が、じっとこちらを見つめながら立っていたのだった。


 その後、この男の姿を見た者は、誰一人としていないという。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ