橋の上
この話は、幼い頃、熱病に冒されて視る恐ろしくも孤独な夢に包まれた世界では珍しくもない事である。
どこの街にもある錆び付いた歩道橋の上、二人の男たちが 殺し合いをしている 。
人々の記憶から忘れ去られたこの橋は、すでに海に囲まれどこにもたどり着けない。
永遠も半ばを過ぎた頃、二人の内の一方が海に投げ込まれ、夜の碧に溶けていった。
それから限りない夜が過ぎて…
ただひたすらの透明感がひとりになった男を包み込む。
夜空の大きな赤い満月が照らし出す鉄塔の周りに暗い橋が見える。
全てがどこまでも孤独で交じり合う事 のない完成された空間たちだ。
そして、これら全ては赤い月に照らされた鉄塔が見せた白昼夢であり、どこにでもある幻影の街のつまらぬ出来事である。