幕間
ちょっと短いですが、これにて本作品のチュートリアルは終わりです。第二章は大体書き終わっていますので、書き終えてからまとめて投稿いたします
炭化した四肢は折り曲げるように硬直し、立ち上る煙は風に乗って運ばれていく。
人里離れた荒野にて、複数の遺体が転がされ、周囲は凄惨な状況となっていた。
ゴブリン達の焼死体の中、それらを見下ろす陰が二つ。
一人は眼光の鋭い痩せぎすの男。そしてもう一人はこれまた長身痩躯の男。
枯れ枝のような長身の男は、眼鏡のブリッジを持ち上げると呪文を呟く。すると、一陣の風が吹き、男を縛っていたロープだけを器用に切断した。
拘束を解かれて晴れて自由の身になった男はコキコキと首を鳴らし、腕を回して凝り固まった筋肉をほぐす。
「貴公は一体何をされている。あの二人であれば楽に勝てる相手であったろうに。それをたかだかゴブリン達と手を組まれたくらいでそのような体たらくとは……。どういう事だゲイル」
ゲイルと呼ばれた男は肩をすくめるとやや遠慮がちにぼそりと呟く。
「彼女のレイピアには白薔薇の紋章が入っていたんですよガドモン様」
「――――何?」
ゲイルの言葉にガドモンは眉を顰めると胸中で反芻する。あの国はとうに崩壊し政権も交代しているはず。その崩壊する以前の象徴である紋章を持つ意味とは。
様々思考が浮かんでは消え、思索にふける。
「そういうわけで殺すわけにはいかなかったんです。あのガキが思ったよりも厄介だったのは計算外でした。油断していたとはいえ危なかった。だからしばらく泳がせる事にしたんですが……まずかったですかね」
「…………いや、その判断は正しい。事は私と貴公だけで判断できるものではなくなった。これは主様に報告せねばならない事案だ」
納得したように頷くとガドモンは転移の呪文を唱えると、足元に魔法陣が現れる。
「行くぞゲイル。同胞も主様もお前の帰還をお待ちだ」
「了解です。実験のデータに加えて報告する内容が増えましたね」
二人の体が紫色の光に包まれ、消えていった。
京介達はまだ知らない。あの何気なかった事件の一つがやがて自体を大きく動かす序章に過ぎなかった事を。