Scene 7
「紫依乃ちゃん、はい氷袋」
「うぅ、翠斗ありがとう…」
「ご、ごめん。まさか止めようとしてるとは、思わなくて」
今、目の前で紫依乃が具合を悪そうにしているのは自分のせいで、少し顔をしかめながら「だいじょーぶ、朱華姉のせいじゃないから」と言われれば、余計に居た堪れなくなった。翠斗は心配そうにはらはらしているし、寝起きだった紫依乃はこの通りで、蒼乃君は不機嫌だし、本当、やっちゃったな自分…。
「朱華姉、あんま落ち込んでんじゃねーよ」
「う、うん。ありがと」
背後から緑斗に頭をぽんぽんと軽く撫でられる。自分よりも随分背の高い緑斗の手は大きくて、少し安心する。ついこないだまで小さかったのになぁ。
「…ま、朱華姉は意図してやったわけじゃないんだし?意図してやってたら殺してるけど、そうじゃないから許したげるよ」
じくじくと棘のある視線で紫依乃にはりついている翠斗を睨みながら不器用な励ましの言葉。蒼乃君が紫依乃以外の人を励ましたりとかって滅多にないから、つい口元が緩む。そんな蒼乃君にも、緑斗と同じように謝礼の言葉を「ありがとう」と述べれば、「別に。僕は器が広いからね」と返された。なんとも素直じゃないその返答が蒼乃君らしくて、また微笑んでしまう。
「んだよ、にやにやして気持ちわりー」
「し、してないし!」
「、でも、さっきの表情よりはずっといい」
「…えへへー」
「気持ちわりーってば」
「照れない照れないー」
「照れてねぇし!」
みんな、大好き。