Scene 6
全て、弾かれる。久しぶりの手合せだけど、蒼乃兄の桁違いで化け物じみた強さは健在だった。否、以前より増していると言っても過言ではないだろう。(ボクだって、強くなったのに)、
「ほらほら、全然当たらないよ?」
「ッ蒼乃兄が、トワイライトルーンではじいてるから、でしょ…!」
「読めすぎるんだよ、翠斗は、さ」
「意、味、分かんない…!」
「ふぅ。だからお前はいっつも負けるんだよ」
「!っ」
全部、負ける。手合せも、紫依乃ちゃんのことだって全部全部。どうして勝てないのか、読めすぎるとはどういう意味なのか、分からない。分かれば強くなれるのだろうか。どうせ、今頭に血が昇っている自分の頭じゃ、考えられないだろうけれど。ちらりと紫依乃ちゃんの方を見やれば、不機嫌そうな顔をして緑斗と何事か話していた。ああ、そうやってまた、ボクをみてくれない。ねえ、紫依乃ちゃんはボクがどうしてお姉ちゃんって呼ばないのか、分かってるの?
「余所見するなんて、余裕だね?」
「う、あッ!」
蒼乃兄が一気に踏み込んでボクとの間合いをあっという間に詰め、容赦なく蒼の狂気を振り下ろした。間一髪のところで避けたものの、切られた手の甲からピピッと血が跳ねた。
「よく避けれたね。でも次は、避けさせないよ」
蒼乃兄の殺意と狂気の滲んだ深海のように深い群青色の瞳を見て、途端に恐怖が沸いた。(殺ら、れ)、
「こらーッ!4人してなにお家壊そうとしてるの!!」
ピィイイイイイイ!
「!?っ」
突然、耳をつんざくような高音がして蒼乃兄がよろけた。その隙を見計らって脇に避ければ、大きく音を立ててボクの代わりにテーブルが真っ二つに割れた。銃声に慣れて多少音には強いボクは、今の蒼乃兄みたいに膝をつかなくてもなんとか大丈夫だ。(あ、ちょっと優越感かも)。音のした方を見れば、仁王立ちの朱華姉が見えて納得した。さっきの音は真紅の歌姫か。その隣で、紫依乃ちゃんが倒れるのが見えた。もちろん、まだ蒼乃兄は頭に手をあてて膝をついていたから、ボクが先に紫依乃ちゃんに駆け寄れる。
「(ボクも負けてないよ?)」