Scene 5
さっきから周りがとてもうるさい。こっちは静かに安眠していたいのに、銃声やら斧が銃弾を弾く音やらで眠れない。キョロキョロと辺りを見回せば、緑斗が頭を抱えて深い溜め息をついていた。
「緑斗、ちょっとあの二人止めてきてよ」
「俺に死ねと!?翠斗ならまだしも、蒼乃兄なんて止められる訳ないだろ!」
「だってうるさくて寝れやしないんだもん」
そう口を尖らせて紫依乃が言えば、緑斗は困ったように眉をハの字に寄せた。この子は小さい頃からいつもこう。別にイヤなら嫌って言ってもいいのに、困った表情を見せつつも最善を尽くす。なんていうか、ちょっと、いやかなりヘタレなのよね。まあ、それがこの子のいいところだとも思うんだけど。それを分かっててやってるこっちも少しは悪いと思ってるんだよ?ほんの少し、ね。
「じゃあ蒼乃はこっちで止めるから翠斗は緑斗が止めてね」
「! おう、任せろ」
ソファから身を起こしてそう告げれば、俄然やる気になって深緑の刃を両手に構える緑斗。最近緑斗とは共同戦線張ってないから、少しだけこっちも楽しみかも。そう思いつつ自分も薔薇髑髏を構えていると、視界を朱色が掠めた。
「こらーッ!4人してなにお家壊そうとしてるの!!」
仁王立ちで腰に手を当てて登場したのは次女の朱華姉。(違うよ、紫依乃と緑斗は蒼乃と翠斗を止めようとしてたの!)そう反論する前に朱華姉は紅色を帯びた美しい金管楽器に唇を当てていて、あ、やばい、と耳を塞ごうとしたときにはもう遅かった。耳をつんざくような高音が全身を貫いた。