Scene 4
風を切る音がすぐ近くでして、次いでツーッと頬を伝った生温いもの。それが僕の血だというのは分かりきったことで、その血が流れたのは目の前に居る馬鹿弟が撃った銃弾のせいだというのも同様だった。緑斗が得意の刃物を投げて片方は翠斗の腕からはじいてくれたけど、碧の蔦は双丁銃だから二つあるんだよね。
「紫依乃に当たったらどうするつもり?」
「ボクの狙撃の腕舐めないでよ。紫依乃ちゃんに当てるはずないでしょ」
「ふぅん。結構な自信だね?僕よりずっと弱いくせに」
「今日こそその首討ち取ってやるから、今のうちにほざいてなよ?」
「兄に対してその口の利き方はよくないね。蒼の狂気がちゃんと研げたのか、翠斗で試そうか」
視界の端で緑斗が頭を抱えてるのが見えた。まあ普通に考えてそうだよね。緑斗や翠斗じゃ、到底僕には敵わないんだし。(要は止めることができないってこと)。僕の腕の中で二度寝しようとしている紫依乃の頬に僕の血が滴って、それを舌でぺろりと舐め取れば、目の前にいる翠斗が「なッ」と声をあげるのが聴こえた。
「んっ、くすぐったいよぅ」
「ごめんね?翠斗がこんなことしたせいで」
「だ、だからって舐めなくてもいいだろ!」
「クスクス、うらやましい?うらやましいよねぇ。だって翠斗はこんなこと紫依乃にしたことないし」
紫依乃の頬を舐めた舌をベッと突き出してあからさまに挑発すれば、「~~~ッ!!!」と、いかにもといったように翠斗は頭に血が昇りだす。紫依乃をソファに移動させて蒼の狂気を手にとり笑みを向ければ、少し後ずさりする翠斗。これくらいでびびってちゃまだまだだなぁ。ま、たまにはこうやって弟と遊んであげなきゃね?