Scene 3
久しぶりの休日。情報収集の予定もないし、ゆっくりまったり体を休めよう。そう思っていたのにあいにくあの変わり者な兄も休みだった。
「本当僕って可愛いよねぇ」
「またそれかよ…」
蒼乃兄専用の斧、蒼の狂気の刃を研ぎながら蒼乃兄はほうと溜め息をついた。どうやら綺麗に磨きあげられたその刃にうつりこむ自分に見惚れているらしい。確かに、蒼乃兄は綺麗な顔の造りをしているし、子供っぽくて中性的な顔立ちでありながら、その自信に満ち溢れた表情は妖しさを潜ませていて、今にも背筋がぞくりと粟立つような感覚に陥る。かといって自分に見惚れるのは些かどうかと思われるのだが。
「ま、そんな僕よりも可愛いのが―――…」
そう言いつつ、背中を預けていたのを離してそのまま抱きつく。いきなりの衝撃に抱きつかれた側はその紫の髪を揺らして大きく前のめりになった。
勿論その相手は紫依乃姉だが、あいにく俺には蒼乃兄と紫依乃姉の顔はとてもよく似ていると思う。俺と翠斗は二卵性双生児なので雰囲気や顔はあまり似ていないが、蒼乃兄と紫依乃姉は瓜二つである。
でも、二人は、双子ではない。
「寝てたでしょ紫依乃ー?おはよー」
「お、はよぅ…」
「ほら、そんなに目を擦ったら傷がつくよ?」
「んー…」
蒼乃兄は眠たげに目を擦る紫依乃姉の手をパシと掴んでやめさせ、そのまま腰を引いて抱き締めた。そのまま紫依乃姉の鎖骨に顔を埋める。そんな兄と姉に内心舌打ちをし、またいちゃいちゃし出すのならとソファから立ち上がったその時、
「あーッ!また蒼乃兄がボクの紫依乃ちゃん抱き締めてるー!!!!」
そう言いながら銃をぶっぱなそうとする弟に頭が痛くなった。どうしてうちにはマトモなのが居ないんだろう…どうしてこのタイミングでこいつなんだ…せめて橙乃あたりにしてくれ…。増していく頭痛に米神を軽く揉みつつ、近くにあったぺティナイフを素早く投げて銃を翠斗の手から落とさせる。この室内で銃弾なんて飛び交われたら敵わない。
「なに!緑斗までボクの邪魔するの!」
「ちげーよ。こんな室内で銃なんて撃たれたらかなわんだろうが!」