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番外編六話『ジョージのナイフ』




あ~ら、おじさんのお話?

いやだねぇ、面白い事なんて何もないよぉ。

つまんなくてくだらない話なら

ごまんとあるけどね。


えぇ? それでもいい?

……まいったなぁ、そんじゃ

おじさんの昔話でもおひとついかが?

ハハハ、あとから苦情は聞かないよ~っと。


おじさんはねぇ、北の方にある

サフィって名前の貧しい国に生まれてさ。

下町に暮らしてる、な~んの変哲もない

父ちゃん母ちゃんと弟の四人家族だったんだよね。

そう、二人兄弟だったのよ。


おじさんは生まれつき目が悪くて、

親にも弟にも迷惑かけた。

二つ下の弟なんてしっかり者で

真面目で、良い子でさぁ。

しょっちゅう壁にぶつかりまくってた

おじさんの世話焼いてくれてたよ。


え? あぁ、弟はもういないよ。

住んでた町を治めてる貴族の

バカ息子君がねぇ、婚約者の女の人に

やらかしちゃった犯罪をまるっと

擦り付けられちゃったのよ。


……まだ、十六歳だったってのに。

アハハ、スケープゴートってやつ?

んで、意味も分からないまま

即日死刑になっちゃった。


お国のお偉い方も、国内のバランスを考えて

それが一番だと思ったんだね。

おじさん達がどれだけ違うって言っても

取り合ってもらえなかったし、

罪人として処刑された弟の遺体は

“氷の壁”に入れられた。


あっ、そうそう“氷の壁”ってのはねぇ。

サフィの最北端にあるずっと溶けない、

文字通りの氷で出来た壁。

処刑された罪人の遺体は見せしめとして

その中に加えられる……だから僕の弟は、

遺体すら帰ってこなかった。


それからおじさん達家族がどうなったか、

何となく想像つくんじゃないかなぁ。

町では石を投げつけられるわ、

両親の仕事先に嫌がらせされてクビになるわ。

……町の人達も冤罪だって分かってたさ。

でも、おじさん達を迫害しなきゃ

次は自分達だから。


結局、母ちゃんは自殺した。

弟みたいに首を吊って。

父ちゃんは、夜に家に押し入ってきた

暴漢からおじさんを守って死んじゃった。

おじさん、目が見えないし

その時夜で真っ暗だったのに。


くっきり見えたんだ。

父ちゃんを滅多刺しにして笑う男の

後ろで、家の外で、ケタケタ嗤ってる

あのクソ野郎の顔が。



そんで気付いたら、殺しちゃってた。

アハハ! 父ちゃん殺した男も、

そのクソ野郎も滅多刺しにしちゃったんだよ~。



うーん、ごめんね。

そっからどうやって逃げたのか

あんまり覚えてないんだよなぁ……。

なんか分かんないけど適正ってのが

あったみたいなんだよねぇ、人を殺す適正。


だから十数年は殺し屋やってたかなぁ。

むやみやたらと人を殺したくないから、

対象は悪い人専門で。


ここだけの話なんだけど

実はおじさん、受けた事あんだよね。

……ローズ・アーヴェンを殺せって依頼。

でもねぇ、どれだけ手を尽くしても

一撃すら入れれなくてさぁ。

何とか逃げ切れたけど、若干トラウマなのよ。

無理無理、怖いってあの緋色の目。


ま、でも殺し屋って恨みを買うじゃない?

仕事しながら追手から逃げるのも

面倒になっちゃって、今から三年くらい前に

きっぱり辞めちゃった。

そんで色んな場所を回ってたんだけど。

今は、ナグラ山にある放置されてた山小屋に

管理人として勝手に住んでんの。



でもまあ、ビビりながら怯えて暮らすなんて

おじさんのガラじゃないのよ。

の~びのび、だ~らだらがおじさんの

モットーなんだから。


この場所で焚き火見ながら

暇潰しに楽器を演奏してたらさ、

ニゥちゃんと会ったんだよねぇ。

初めは遠くからぴょこ~っと頭だけ出して

見てるだけだったんだけど、

徐々に距離が近付いてくんのよ。

でも本人は隠れてるつもりだったみたいで?

んふふ、可愛いよねぇ。


だから「おいでおいで~」って声かけて、

隣に座らせて、たわいのないお話を

するようになったの。

今日見た生き物とか花とか、雲の形とか。

あ、一回スッゴいデカいミミズを

お土産でもらった事があるよ。

あれはさすがに困っちゃったわぁ……。


追手? うん、勿論続いてるよ。

ナグラ山にまで追っ手が来たからさぁ、

離れようって思った事も当然ある。


でもねぇ、ニゥちゃんに「行かないで」って

泣かれちゃったもんだから。

……あの子の顔、死んだ弟にちょっと似てるんだ。

だから、離れられなくなっちゃった。


てかさぁ、追手殺したところも

見られちゃったんだけど、ニゥちゃんって

“現象”の竜でしょ?

人間殺したところで何とも思わないんだよね。

『ジョー、わるくないもん……ッ!

ジョーを、いじめる方が、わるいもん……ッ!

おそと行くなら、ニゥも……ついてく!!』って

泣かれちゃったし。


派手なドレスの玉の輿狙いお姉さんも

見事に叩き潰してお肉にしてたけど、

全然メンタルにダメージ受けてなかったし。

おじさん取られる方が嫌だったみたい。


う~ん、いくら幼くて可愛くても

上位存在なんだなって自覚されられたねぇ。


まぁ、おじさんもニゥちゃん好きよ。

素直だし、裏表もないし、お利口さんだし。

とっても可愛いと思ってる。

ニゥちゃんは汚れずに穢れずに、

あのままでいて欲しいよね。


だから、可愛いあの子が気付く前に。

森に来る悪い子はみ~んな、消さないとさ。






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