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第四十一話『竜域会議』




エトワスタとディルギーヴ達が

移動したのは“名無しの大樹”の根本。

この場所は開けており、巨大な

体躯の個体もいる“現象”の竜達が

集まっても問題ない。


海竜といった陸地を移動出来ない

特殊な竜以外で、呼び掛けに応じた

“現象”の竜が既に多く集まっていた。



『おいディル坊!お前いつになったら

娘連れてくるんじゃ!』

『はよ会わせい!

会う前に寿命で死ぬわ!』

『あと千年は死なんだろうにワシら。』


『貴様等は教育に悪い。

そう簡単に会わせる訳無かろうが。』



集まった“現象”の竜の一部から

ディルギーヴへ声が上がる。

闇竜の娘が生まれた事を、エトワスタを

通してつい最近知ったばかりの竜達である。

だが、ディルギーヴはピシャリと

突き放す。

あちこちからブーイングが上がった。


話が変な方向に行く前に、

エトワスタが咳払いをして話を止めさせる。

竜姫は木の根元に座る両親の前に立ち、

竜姫に相応しい威厳を放ちながら

言葉を続けた。



『ゴホン!

今日集まってもらったのは他でもない、

“現象”の竜の周りに渦巻くナニカに

ついてよ。


ネゥロデクス、お願い。』


『かしこまりました。

それではまず死竜ネゥロデクスが

五つ、話をさせていただきます。


千年前に起こったリュゼーヌ王国との戦争、

それ以来、我等“現象”の竜の周囲に

どうも怪しい動きが見られます。


一つ目、私の監視網への妨害行為、

詳しく言えばカラスへの浸蝕が

行われていました。


二つ目、竜と人間の特徴を備えた

新種の生物の出現。

我々は“トカゲ人間”と呼ぶ事にしました。』



『新種の生物?』

『何じゃそれ……こわ……。』

『変化ではないのか。』

『間の子かしら?

でも、それにしては両方の特徴を持つって

不思議よねぇ。』



長く生きてきた“現象”の竜達も、

両方の特徴を兼ね備えた存在など

見た事がない。

ざわつく竜達に、ネゥロデクスは

更に踏み込んだ話をする。



『三つ目、その存在による

番や“揺籃の雛”、“唾付き”の誘拐。

ディルギーヴのお嬢さんも二回、

誘拐されかけています。』


『はぁ!?』

『情報量が多すぎる。』

『番や雛の誘拐じゃと?』



『そして四つ目、大量の“ラドの刃”の

量産と、それによる“現象”の竜の殺害。


確認出来ただけで、

未遂を含めれば五頭です。』



それを聞き、一気に場がピリついた。

“ラドの刃”による人間達の愚行が、

また引き起こされたとでも言うのだろうか。

当時戦争派だった竜達は分かりやすく

怒りの表情を浮かべ、中立派や穏健派は

何とも言えない表情だ。


カラスに頼らず世界を片っ端から

調べ上げ、ネゥロデクスが確認した

“ラドの刃”による“現象”の竜の殺害事件は

先代鋼竜コァドを始め、三頭。


娘の屍竜ネェロネペと、相手を国ごと

壊滅させて生き延びた海竜ガルガランの

二頭は未遂で済んでいる。



『“ラドの刃”による殺害だと

断定出来たのは、百年前に死んだ

鋼竜コァド、四十年前の雷竜サスペ。

そして先日炎竜ヴァナチカが巣にて、

番と共に傷だらけの状態で

死んでいるのを確認しました。


最近発見された“ラドの刃”には、

彼等の外殻や鱗が多く使われています。』



『!!!!!!!!!!』

『あっつ!』

『燃えてる燃えてる!!!!』

『こんの馬鹿樹竜!

何で炎竜の側におるんじゃ焦げとるぞ!』

『誰かヴォルチナを止めろ!』

『ヂーシィ、お前番だろうが今すぐ止め……

溶けてる!?』

『無理、最愛、激怒、制御、不能。』

『す、涼しい顔をしておる……。』



先日、ネゥロデクスが亡骸を発見した

炎竜ヴァナチカは雌の虎を番としていたが、

その虎と共に殺されていた。

全身には深い傷跡が残ってたので

“ラドの刃”による犯行だと判断したのだ。


普段ヴァナチカの体表を覆っていた炎は

消え失せ、剥き出しになった皮膚や鱗が

あちこち剥ぎ取られていた有り様だった。

鋭い岩に引っ掛かるようにして

死んでいた雷竜サスペの亡骸の骨にも、

刃物による傷跡が残っていた。


そして、炎竜ヴァナチカの

きょうだいである炎竜ヴォルチナは

その死を聞いて大激怒。

全身を包む炎が更に燃え上がり、

赤から青色に変わっている。


その炎が何故か横にいた樹竜の角に

燃え移り、反対側でヴォルチナの

番、氷竜ヂーシィの凍てつく氷の外殻を

溶かしていた。



『襲撃のパターンは主に二つ。

入手経路が不明の“ラドの刃”を使い、

人間達が行った犯行。

そしてもう一つは、トカゲ人間による犯行。


おそらくですが、トカゲ人間達が

“ラドの刃”量産に関係し、人間達への

武器の提供を行っているのだと

判断しました。』


『やっぱ戦争か????』

『しないっつっとるじゃろボケ。』

『おい、ちゃんと滅ぼしたんでしょうね?

そのお馬鹿な人間共の国。』


『コァドを殺す指示を出した王族は

呪いによって全滅し、

海竜ガルガランを襲った国は

滅んでいますからご安心ください。』


『よし。』

『よしじゃねえよ。』

『はぇ~コァド、呪いぶちかましたんか。』

『ガッツあるのぅ。』

『ガルガランて誰?』

『浅くて温かい方に棲んでる海竜の

子どもじゃなかったかしら。』



王都からも見えそうなほど、

高い火柱と化すヴォルチナを宥めながら

“現象”の竜達はネゥロデクスの説明を聞く。

その反応は怒る者、冷静に判断する者、

どこかのんびりした者とバラバラだ。


しかし、ネゥロデクスが放った

五つの報告、その最後により

全員が驚愕する事となる。



『最後の五つ目です。

……千年前に風竜カンゼアが

死んで以降、この世界には風竜は

一頭しかいませんでした。


今から三年前、その残った風竜タクロタが

寿命にて死んだ後……一頭も、風竜が

生まれていません。』



『何!?』

『どういう事よ!』

『我等“現象”の竜は絶える事など無いはず!』

『ああ、代わりが生まれるはずだ。』



“現象”の竜は世界そのもの。

故に、各属性を司る“現象”の竜達は、

例え全ての個体が死んでも即座に代わりが

出現するように出来ている。


だが、千年前に殺されたカンゼア。

そして三年前に寿命によって

死んだタクロタがいなくなった事で

空いた風竜の枠には、誰もいないのだという。



『風竜の不在により、世界各地で

風の異変が観測されています。

竜巻、暴風……逆に風が消えるといった現象も

確認出来ました。


この件に関して、トカゲ人間の関与は

分かりませんが……不可解な異変として

報告いたします。』


『ありがとう、ネゥロデクス。


お父様、お母様、これらの件については

そろそろ本腰を入れる必要があると思うの。

拐われた番の捜索も急務だし、

この事件の影にいるのは、明らかに

“現象”の竜全体の敵だわ。』


『ワタクシに異義はありません。

サヴァンも宜しい?』


『……。』


『エトワスタ、ワタクシ達の

跡を継ぐ者として全権を与えます。

今回の事件、見事に解決して見せなさい。』


『分かりました、お母様。

ではディルギーヴ、次は……あら?』


『……。』



静かに会議を見ていた

竜妃ルェロナと竜王サヴァン。

跡取りたるエトワスタに解決を命じ、

今回は静観すると決めたらしい。


ネゥロデクスの報告も終わり、

次にディルギーヴから話を聞こうとした時、

死竜や一部の竜達が突然一斉に

同じ方向を見た。



『どうしたネゥロデクス。

その方向は……シュラージュか?』


『いえ、ディルギーヴ。

それよりもう少し向こう……アルサフです。』


『なんか変な音しなかったか?』

『遠すぎて分かんねえよ。』

『うわ、めちゃくちゃ嫌な感じがする。』

『絶対何か起きたぞこりゃ。』

『おい、河竜か砂竜あたり連れてこい。

奴等ならヴォルチナでも消火できるだろ。』

『はい、そこで拾ったザンバギ。』

『ちっちゃ……。』




異変を感じた一部の竜達が見たのは

シュラージュ領の方向だった。

ネゥロデクスは隣国アルサフの名を

出した後、そちらを凝視したまま

ピクリとも動かない。


ディルギーヴとエトワスタは

顔を見合わせる。

アルサフで何か起こったのなら、

隣接するシュラージュ領、そして

シャーリーにも影響があるかもしれない。


だが無闇に動く訳にも行かず、

確実な情報を得ているであろう死竜が

口を開くまで待った。



『ディルギーヴ、直ちにシャルドームを

竜域に呼び出しなさい。』


『何?』


『正確で早い連絡係が必要です。

お前達の念話なら、時間のズレも誤りも

無いでしょう。』


『やだ、シャルが来るの!?

鱗を念入りに磨かなくっちゃ!』


『姫君は今すぐ、私やディルギーヴと共に

シュラージュへ向かいますよ。

色恋にかまけている暇などありません。』


『えっ。』



ネゥロデクスはアルサフの方向から

顔を背けずに淡々と言う。



『アルサフは首都ごと“堕”ちました。

シュラージュに、兵が向けられています。


……トカゲ人間のね。』


















ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「……様!

民が、兵が!」


『あら“遅い”のね、知ってるわ。」


「何故そんな悠長に構えているのです!

どこからか分からぬ攻撃だと言うのに!」


『攻撃?

攻撃なんてされてないわよ。」


「なっ……では民達のあの有り様は、

どう説明をすると言うのですか!」


『準備よ、だってまだ

私達は攻撃していないもの!」


「なにを……ぐっ!?

がっ、な、なぜ…何故ぇッ!?」






『ほら、“遅かった”。

何が原因だったのかしら、個体差?

あぁ、彼はあっちに送らなくて良いわ。

集めた子達と一緒に調べておいて。


やっと始まって終わるんだもの、

一人くらい欠けたって問題ないわ!

私にすら、代わりはいるのよ?

















あ、そうそう!

ネゥロデクス、見てる~?」







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