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第四十話『竜罰のお伽噺』




『して、それは誰だ。』


『命竜です。

命竜ミャウメイン……千年前に

リュゼーヌ王国の兵により殺された

五頭の内の一頭。』


『死竜たる貴様の反対にいた竜か。

確かに、彼奴ならば貴様のカラスも

浸蝕可能ではあろうが……死んでいたのか。』



命竜ミャウメイン。

死を司るネゥロデクスと違い、

命を司る“現象”の竜だった。

美しい鬣を靡かせ、温厚で争いを

好まなかったミャウメイン。


かの竜は大した抵抗もせず、人間に

殺されてしまったのだという。

正直、ディルギーヴは面識がほとんど

無かったので、死んでいる事を

知らなかったのだが。


何なら他の“現象”の竜に、一度も

遭遇する事なく死ぬ竜もいる。

お隣さんが数百キロ先とかが

ザラにある“現象”の竜界隈では、

わりとよくある事例なのだ。



『ええ、ミャウメインの死体は

他の犠牲になった竜達と共に、

あの大樹の根本に埋葬しましたよ。


生きている他の命竜は既に調べましたが、

シロだと確定してしまいました。』



今から千年前の話である。


当時のリュゼーヌ王国の国王、

スピス・ラ・シック・リュゼーヌが

大きな過ちを犯した。

それは偶然発見した“現象”の竜の

亡骸を解体し、多くの武器、今で言う

“ラドの刃”を作り出した。

そして、余った部分を各国に売り捌いて

富を得たのだ。


“現象”の竜達としては、武器を作るのも

亡骸を売り捌くのもそれだけならば

何とも思わなかった。

その竜の友ならば思うところはあったろうが、

どうせ亡骸は朽ち、世界に溶けて

また別の竜として甦るのだから。

そう、この時点ではまだ赦されていた。


元々は慎ましやかで民思いの王と

呼ばれていたにも関わらず、

得た資金で豪遊するようになった国王。

だが、愚かなる国王は更なる欲をかいたのだ。

遊ぶ金が尽きると、作った武器を兵に持たせ、

生きている“現象”の竜を殺してしまった。

また解体して武器を作り、

肉や鱗、瞳を売り。


岩竜ガダダ、命竜ミャウメイン、

湖竜ラバニージドヌ、風竜カンゼア、

砂竜ビュザデ。


比較的大人しく、人間に友好的だった

五頭の“現象”の竜が殺される。

この事態に世界各地の“現象”の竜が

集まり、戦争派と穏健派、中立派の

三つに分かれて討論を繰り広げた。


当時、竜姫エトワスタは

リュゼーヌ王国の姫の一人と親友だった。

姫は変わってしまった父に深い悲しみを

抱いており、竜への贖罪を願ったが

父王は聞く耳を持たなかったのだとか。


エトワスタは戦争派の竜達に

激しい抵抗と怒りを見せ、連日命の危険に

晒されながらもシャルドームと姫と

共になって人間達に改心を説き続けた。


“現象”の竜達による話し合いは

何日も平行線を辿っていたのだが、

中立派において最も強いネゥロデクスが

突然、戦争派に変わったせいで

一気に流れは戦争派に傾く。


友を殺された事、そして人間達により

毎日傷付いて帰ってくる我が子を守る為。

竜王サヴァンは重い翼を広げ、

リュゼーヌ王国へ宣戦布告を吠えたのだった。



『貴様の裏切りは、突然

“戦争派”に鞍替えした事だ。

まあ、“中立”の貴様が態々裏切ったのは

あの番が関係している様だがな。


だが、エトワスタ様は

貴様に少し思う事がおありだ。

この後お会いする時、小言どころか

大言を呈されるのを覚悟しておけ。』


『……こちらにも事情があったのです。』



ジト目でネゥロデクスを睨むディルギーヴ。

当のネゥロデクスは笑みを消したまま

目を伏せる。


エトワスタやシャルドーム、

そしてディルギーヴの予想では

戦争の始まりは避けられないとはいえ、

もう少し先のはずだった。


しかしあまりにも早く戦争が勃発。

説得は間に合わず、予定を

変更せざるをえなかったのだ。

リュゼーヌ王国全てを滅ぼさん勢いの

“現象”の竜達をどうにか抑えるべく、

エトワスタは強硬策に出た。


それが“名無しの大樹”になる事。

自身を樹にして失わせる事で

両親の戦意を喪失させ、国を二つに分け

分断ではなく棲み分けが出来るようにした。


父達を止められなかった人間の姫も

樹になる事を望み、シャルドームと

ディルギーヴの双子は準備と

時間稼ぎに奔走する。


リュゼーヌだけではなく世界も

滅ばないように、ディルギーヴには

闇の制御を。

王国が二度と過ちを起こさないよう、

シャルドームには監視を。


エトワスタは忠実なる双子へ任を与え、

姫と共に去った。

変化させるのはあくまで肉体のみ、

魂は千年後に転生するように組み込んで。



『そう言えば思ったのですが。』


『何だ裏切りガラス。』


『お前はエトワスタ様の側近でしょう。

何故あの戦いでは、“現象”の竜側に立って

戦っていたのです?』


『……。』



ディルギーヴは“現象”の竜側として、

戦場で暴れていた。

そして“ラド”と三日三晩の大立ち回りを

繰り広げ、全身ボロボロの状態で

あの“ラド”に勝利する。

その時、周囲の“現象”の竜は

自身の戦いそっちのけで見入り、

歓声を上げていたのだが。


ネゥロデクスはあの時、“カラスの目”を

使っている暇など無かったので

ディルギーヴが戦っていた理由を知らない。



『……貴様の言葉、

そっくりそのまま返してやる。

“こちらにも事情があったのです”とな。』


『おやまぁ。』


『ディルギーヴ! ネゥロデクス!

大体来てくれる“現象”の竜は集まったわ。

今すぐに話し合いを始めたいのだけど、

すり合わせは済んだかしら?』



ディルギーヴとネゥロデクスの前に、

星空を具現化したような美しい

幼竜が現れる。

身体の節々から伸びる長い触覚は、

流星の尾にも、ヴェールにも見えて

姫という立場に相応しい神々しさを

感じさせていた。



『ある程度は。』


『そう、流石ディル!

相変わらず優秀ね。


……それと、ネゥロデクス。』


『何でしょう、姫君。』



ネゥロデクスはいつものように

笑みを張り付け、竜の姫君の顔を見る。

そしてネゥロデクスから微笑まれた

エトワスタは……とんでもなく無表情だった。



『後で大樹裏に来なさい。以上。』


『……かしこまりました。』


『ザマァ無いな。』



見た目だけは幼いが、中身はしっかり

“現象”の竜の姫たるエトワスタ。

ネゥロデクスに『後で一発しばく』と

堂々と宣言した。


その様を愉快そうな顔で眺めていた

ディルギーヴだが、ネゥロデクスとの話で

ふと気になった事があった。

ソレが頭の中で引っ掛かっているのだ。



『陰湿ガラス、貴様シャルには

何処まで話した?』


『何でシャルが出てくるのよ。』


『彼はここに来る予定がありませんし、

急ぎでしたので特に情報は

共有していません。』


『ちょっとネゥロデクス!?

シャルの居場所知ってるの!?』


『知っています。』


『教えなさいよ今すぐ行くから!』


『教えませんよ行って欲しくないので。』



《おいシャル、返事をしろ。》


《!!!!

お、お兄ちゃん!?》



ディルギーヴは目の前で繰り広げられる

姫と鴉の一悶着を無視しながら

目を閉じ、念話によって片割れの

シャルドームに話しかけた。

ネゥロデクスの巣にて、竜の姿のまま

ぐったりと庭に倒れ込んでいた

シャルドームは、驚きで少し飛び上がる。



《いや、知ってると思うけど僕

ちょっと竜域には行けなくて、いやでも

お仕事サボってた訳じゃないの!

ネゥロデクスの奴に『この世界の

カラスを全て調べますから手伝いなさい』

ってこき使われて疲れてて》


《今、それはどうでも良いわ。

お前に聞きたい事がある。》


《えぇ……怖い、何?》



念話にて言葉を数回交わした後、

ディルギーヴは弟との念話を切る。

そしてネゥロデクスに詰め寄る

鬼の形相をした主君に、声をかけた。



『どうやら尻尾が見えた様だ。

本当に、尻尾だけだがな。』

















ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



《“現象”の竜の説明~姿編~》

 解説:ガルガラン


『ご機嫌麗しゅう~!

海竜ガルガランでございましてよ!


今回はあたくしが、“現象”の竜の姿に

ついてお話ししますわ!

お耳に入った海水かっぽじって

ちゃ~んとお聞きくださいな!


“現象”の竜というのは、

一頭一頭の姿が全く違うのですわ。

例えば、ディルギーヴさんは

ドラゴンと言われたら想像する

オーソドックスな見た目ですわよねぇ~!

でもミシケロトクラロさんはとても猫ですわ。

すごく猫ちゃんですわ!

可愛いですわ!


あたくしはサメのパパに似たお顔と、

竜のママに似たほそなが~い体つきですわ。

海竜の中でも、より早く泳ぐ事に

特化した美ボディですのよ。

ヒレと尾はありますが羽が無いので、

ジャンプは出来るけど空は飛べませんの。


でも、すっごい東の方の海竜さんは

あたくしと同じで羽が無いのに

どういう訳か飛べますのよ?

プカプカふよふよしてますのよね。

あたくしもチャレンジしたいのですが、

ナンシーに止められています。

ジャンプの衝撃で津波が起きるからって……。


このように、同じ海竜でも

見た目や能力が大きく違いますの。

それに、深海に棲んでる海竜さんは

あたくしよりも刺激的なお顔を

されてると聞きましたわ!


昔、あたくしがママから聞いた

陸地の“現象”の竜さんの話では、

取り込んだ砂を常に身体から

吹き出している方がいたり、

全身が燃え上がっている方がいたり!

氷で出来た方や、角が木で春になると

綺麗な花が咲く方がいたりするそうですわ!


あたくしもいつかは陸地の方々に

ご挨拶したいですの……

ナンシーのメェル復興が一息ついたら、

お願いして連れていってもらおうかしら?

楽しみですわ~!!!!』













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