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番外編第五話『ガルガランの牙』




『あたくしって、怖いんですのね……。』



海竜ガルガランに衝撃が走ったのは、

両親の元から独り立ちをしてすぐの事だった。


ガルガランの母は“現象”の竜の中でも

特に大きな個体である。

元々、海竜は身体の大きな竜が多いのだが、

その中でもずば抜けて大きいのが

ガルガランの母シャナシャンヌ。


生息地にて“海の手綱”とも呼ばれている

かの竜が伴侶に選んだのはこれまた

超巨大なサメ型の魔獣だった。

そんな番同士から生まれたガルガランは、

母譲りの細長い身体と父譲りの

恐ろしいサメの口を持つ“現象”の竜へと

孵化をする。


だが、ガルガラン自身は

自分の事が怖いと思った事はない。

母親からは世界で一番可愛いと溺愛され、

父親からは立派な牙だと褒められて育った

ガルガランは、自分を可愛いと

信じてやまなかった。


……船に乗った人間達に、

とてつもなく怯えられるまで。


ある日、海を気ままに泳いでいた

ガルガランは (彼女からすれば)

とてもとても小さな人間の船に遭遇する。


母から人間の存在については

教えられていたけれど、実物を見るのは

それが初めて。

興味が湧いたので近づいてみたのだ。

しかし、ガルガランに遭遇した船乗り達は

大混乱に陥った。


全長の予測がつかない巨体、

船を一噛みで藻屑に出来る恐ろしい顔。

そんな“現象”の竜と遭遇してしまった挙げ句、

竜が近付いて来てしまったのだから。


屈強な船乗り達でも恐ろしくて

仕方がなかったのだろう。

ガルガランが明るく話しかけても

それどころではないようで、故郷の家族への

祈りや謝罪を口にする者まで出ていた。


誰も話を聞いてくれず、しょんぼりと

その場を離れたガルガランは気付いたのだ。

もしかしてあたくしの顔……めっちゃ

怖いんじゃございません? と。


その後、他の海竜や“現象”の竜に

会ったりもしたが、いつも挨拶よりも先に

『顔が怖い』と言われてしまう。

乙女に対して失礼すぎやしませんこと?


両親から受け継いだ顔と身体は

ガルガランの自慢である……が!

ここまで怖がられてしまうだなんて。

ちょっと悲しい気持ちになりながら、

海竜は独り、広い海を泳いでいく。



まあ、そんな中でガルガランを怖くない、

むしろ牙が綺麗だと言ってくれた相手がいた。

気まぐれで拾っただけだし、ガルガランの

牙より小さそうな人間の少女に言われた

小さな言葉。

それがもう嬉しかったのである!


両親以外で褒めてくれる相手は

初めてだったから、海竜ガルガランは

舞い上がりまくった。

その人間は名前が無いと言うので、

お礼に名前を与えて人間達の住む町へ

送り届けてやる。


別れた後もあの少女の姿と声が、

ガルガランの頭にずっと残っている。

海は広いようで案外狭いので、

彼女が大きくなったらまた会えるかもしれない。

けれど、その時もまた褒めてくれるだろうか。















『うぇ~ん! これ以上は無理ですわ!』


「甘ったれるんじゃないよ!

アンタがメェルを人型になって歩きたいって

言ったんだろうが。」


『窮屈すぎて無理なのですわ~!!』



そんなこんなで、ずいぶん成長したが

可愛いまま (byガルガラン)のナンシーと

再会して、共にメェルという国を復興させる

手伝いをしているのだが。

ガルガランはここ最近、多くの人間達と

触れ合ったので人間体に変化してみたいと

思い始めたのだ。


今まで変化などしてこなかったが、

この前、ここに来た闇竜ディルギーヴも

人の形と竜の姿を交互に取っていたし、

ミシケロトクラロも完璧に猫ちゃんだった。

自分だって“現象”の竜だし、わりと簡単に

出来るだろう、とタカを括っていたのだが……。


海竜ガルガラン、ひとまずは

褐色の肌、真珠色の髪と水色の瞳、

そしてボンキュッボンなナイスボディーの

蠱惑的な美女に変化は出来た。


変化自体は、出来た。



「そんなに出来ないもんかい?

闇竜は簡単にしてたけど。」


『へ、変化は出来てますでしょう!?

問題はサイズ! サイズだけですわよ!』


「そうさね、もう少し小さくなんな。」


『無理ですぅ……。』



そう、サイズが桁違いに大きいのだ。

ナンシーも背が高いが、ガルガランの人間体は

それと比べ物にならない百mを越える

巨人となってしまっていた。

メェルの海に入っても余裕で足が底につくし、

今は「デカすぎて邪魔、顔も見えねぇ。」と

ナンシーに言われたので海に身体を

半分沈めて、会話をしている。

(端から見ると浴槽に浸かっているように見えた。

というのはとある団員の談。)


“現象”の竜の変化で最も難しいのは、

窮屈さに耐える事なのである。

訓練して慣れたなら蝶や蟻といった、

人間よりもっと小さな生き物にすら

変化出来るようになれるらしい。


……身体が大きなガルガランには

少しどころかかなりキツいようだ。



『え~ん! これじゃあナンシーと

デートが出来ませんわ~!

お友達とはデートするもんだ! って

聞きましたのに!』


「……誰にそんな事吹き込まれたんだい?」


『ナンシーのところの団員さん。

で、「お頭とのデートで良い感じになったら

良い感じの宿に直行しな!」って言われましたわ!


……宿って、なんですの?』


「はぁ……あの馬鹿、シメとくかねぇ。

あとさ、ガルガラン。」


『は~い!』


「こんな廃墟しかない島で

デートなんざしても楽しかないだろうに。


復興が終わってからじゃないと

デートもクソも無いだろ?

別に焦らなくたって良いじゃないか。」


『それは……そうですわね!!!!』












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