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第十三話『これから』




『じゃ、二人共元気でね!』


「お姉ちゃん、おじちゃん、バイバイ!』


『なぁーう』



一悶着あった日の翌日、

ディルギーヴとシャーリーは

シャルドーム一家と朝食を取り、

少しノワエと遊んでから辺境の地へ

帰る事となった。


最初はディルギーヴを怖がっていた

ノワエもすっかり懐き、さっきまで二人に

「帰らないで!』と泣きついていたが、

ミシケロトクラロとザンバギに宥められて

渋々引き下がり、シャルドームの足に

抱き着いた状態でこちらに手を振っている。


そしてシャーリーは父の背中から、

おじ一家に手を振り返したのだった。



「シャルドームおじ様、良い方でしたね!」


『彼奴は昔からああだ、

我と違って誰とでも共に在れる。』



影は影になる存在がいなければ生まれない。

故に、シャルドームは常に誰かの側に

寄り添って生きていくのだ。



『もう少しすればエトワスタ様も羽化される。

そうなれば彼奴の爪も空くであろうから、

馬車馬の如く働かせてくれるわ。』


「……ノワエちゃんの人格とかって、

どうなるんでしょう。」



ノワエが“羽化”をして

エトワスタになるのなら、ノワエ自身は

どうなるのだろうか。

あのあどけない笑顔を思い出し、

シャーリーの顔は曇る。



『そのまま竜になる“揺籃の雛”と違い、

今回は羽化だからな……。


おそらくあのノワエという娘の人格は

消えてしまうだろう。』


「そう……ですか……。」


『……ふむ、慰めにはならんだろうが。


エトワスタ様の幼少期は、

あの娘と殆ど変わらなかったぞ。

羽化をしても大して変わらぬだろうよ。』



両親が年老いてからの子だった為、

早くに親を次いで亡くした

ディルギーヴ達双子は、エトワスタと

きょうだい同然に育てられ、育った後は

側近兼護衛の形で側に仕えていた。

エトワスタは、ディルシャル兄弟よりも

少し後に生まれたので、双子からすれば

妹のような存在だったのだ。


自分達を散々振り回していた、

天真爛漫な“妹”の幼少期をノワエに重ねて

ディルギーヴは何とも言えない顔をする。



『お前ならば、あの御方とも

仲良くなれるだろう。

……多少、振り回されはするだろうが。』


「楽しみと同時に怖いですお父様。」



圧倒的ポテンシャルを誇る“現象”の竜。

しかも姫に振り回されるなんて……

まだ人間の身には荷が重すぎる。



『まあ……エトワスタ様の事は置いておこう。

今回はシャルの正確な居場所を

知れたのが一番の収穫よ。


これで直接会いに行かずとも、

連絡したい時に念が送れる。』



ディルギーヴとシャルドームの双子には

双子故の特性なのか分からないが、

遠く離れていてもお互いの言葉や

見ている景色を送れるテレパシー的な能力が

幼い頃から宿っていた。


お互いが通話するには、ある程度

正確な場所を知っておく必要がある。

離れていれば離れている程、

送る場所を正確に意識、認識しなければ

届かないのだが。



「便利なんですねぇ。」


『我とシャルの間でしか使えぬし、

今回の様に場所が分からぬならば

使えんがな。』


「でも、シャルドームおじ様という

新しい味方が出来たのは心強いです!」


『そう言ってくれると助かる。


やはり、本格的にネゥロデクスの奴を

探すしかあるまいか……。』



シャルドーム曰く、ネゥロデクスは

番が出来てから定期的に棲みかを

変えているのだそう。

どこにでも出現し、用心深い性格の

ネゥロデクスが番と共に暮らす棲みかを

特定するのはシャルドームでも難しい。



『カラスを通して呼び出しても良いが……

いや、彼奴なら面白がって出てこんな。


何なら今の我の状況も知っていて、

嘲笑っておるに違いないわ!』


「では、これからはネゥロデクスさんを

探すのが私達の目的ですか?」


『そうなるな、まずは周辺から

虱潰しに探すしかない。』



ネゥロデクスがこちらに出向いてくれれば

ローズの死に関係するかもしれない事や、

“竜の診療所”の話も聞けるのだが、

如何せん、“現象”の竜は長く生きるせいで

面白い事を求める性分だ。


この、プライドがヅォーガン山並の闇竜が、

必死こいて自分を探しているなど

死竜的には面白過ぎる出来事だろう。

あちらから出向いてくれるとは到底思えない。



『父として、これ以上離れる気は無い。


しかし虱潰しとなると過酷な旅になる。

シャーリーを連れていく訳には……。』


「……あの、お父様。


こんな時にごめんなさい。

お母様の事とは関係がない、

お願いが、あるんですけれど……。」


『む、何だ?』


「実は、二週間後にシュラージュでは

年に一度の大きなお祭りをやるんです。


……お父様が良ければ、

一緒に見て回りませんか?」



シュラージュは古くから、

アルサフからの侵略を幾度となく退け、

竜域から降りてくる魔獣にも

対応しなければならなかった危険な地域。


しかしシャーリーの祖父ジョンに

憧れた強者達が集まり、その強者達に憧れた

強者達が集まり……を繰り返し、

リュゼーヌ王国でも屈指どころか

ずば抜けた軍事力を持つ屈強な領になった。


昔も今も、命の危険もある場所で

生きていく民達にとって、年に一度の祭りは

何よりの楽しみ。


シュラージュ領全体を上げての

大規模な催しであると同時に、

他の場所からも観光客が多く来る

稼ぎ時でもある。


辺境騎士団が狩った巨大魔獣の丸焼きや、

趣向を凝らした出店、各地の名産品、

腕自慢大会、そして祭りの締めは大花火。



「私もお祭りまでに、ある程度は

一人で自分の世話を出来るように

頑張ります!


ですからお父様にはしばらく

シュラージュ周辺を探していただいて、

お祭りが終わったら、遠くまで一緒に

ネゥロデクスさんを探しに行きませんか?」


『シャーリー……。』



これから父と行動を共にするのなら、

自分の世話は自分で出来るように

ならねばならない。

だがそれは、少なくとも一日で

習得出来るものではない。


それに、父ともっと母の話がしたいし、

自慢の故郷を知ってもらいたい。



『……そうだな、我はまた

急ぎ過ぎていたようだ。


死竜探しも重要ではあるが、

まずはお前との時間を取り戻さなければ

ならないというのに。』


「お母様のお話、色々聞かせて下さいね!」


『勿論だ。

……ローズも、その祭りに

参加していたのか?』


「お母様は毎年、腕試し大会以外は

どこかに隠れてサボってたみたいですよ。」


『そ、そうか……。』



辺境領に集う強者達による腕試し大会、

ローズはそれで殿堂入りしている。

ちなみに祖父ジョン、伯父ウィンズ、

従兄ジェイズ、叔父ダムズ…

そして実は、従姉スノウも

殿堂入りのメンバーだ。


……ウィンズとジェイズ、スノウ親子は

顔こそ儚げ美人だが結構なゴリ……

パワータイプである。

(ローズとダムズは父親似)



「私は腕自慢大会こそ出てませんが……

お祭り自体には、小さい頃から

たっくさん参加してますから!


初めて体験するお父様も、

満足させてご覧にいれます!」


『フッ、それは楽しみだな……。


だが、共に回るのなら

民達に我との関係を聞かれぬか?』


「あっ……。

お、お祖母様に要相談、です……ね。」



まだぎこちないながらも、最初とは

比べ物にならない程親子らしくなった

一頭と一人は、二週間後の祭りに

期待を膨らませながらシュラージュへ向けて

飛んでいった。



















ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





『お兄ちゃん、横座るよ~。』


『……あぁ。』


『ど~よ、親子としてやっていけそう?』


『……分からぬ、初めて子を持ったのだ。

しかし我の番はもうこの世におらぬ。


我は我が子に竜の生き方しか

教えてやれぬ。』


『別にそれで良いじゃない。

人としての姪っ子ちゃんは、奥さんの

家族が代わりに形成してくれたでしょ。


そんで、これから彼女は

人を終えて竜に変わっていく。

きっと迷うし、苦しむし、悲しむ。


そんな姪っ子ちゃんのこれからを

守っていくのがお兄ちゃんの

仕事なんだから。』


『そうか……そうだな。

竜としての未来を教え導けるのは

我のみか。』


『そうそう。

てか聞いた感じによると、お兄ちゃんの

お相手ってお兄ちゃんを打ち倒すどころか

尻尾に敷いてたみたいだけど……


力業とはいえ、竜の傲慢を

修正してくれる相手だったから

上手く行ってたんだろうねぇ。

でも姪っ子ちゃんは見た限り

大人しそうな子だし、きっとお兄ちゃんに

合わせちゃうだろうなぁ。


ちゃんと娘ファースト、しなよ?』


『……分かっておるわ。』













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