Scene5
そして、話の続きを聞いてみる。
『季節が変わるタイミングで、俺たちは引継ぎをしなくちゃいけない。駅伝のランナーをイメージしてくれ。ランナーは、決められた範囲を走るだろ? 俺たち季節も同じさ。春夏秋冬、季節は移り変わっていくものなんだ。だけど、シュウがうまく引継ぎできなかったせいで、このザマ。来月には、暦でいくともう冬なのに、未だにこの町の気温は高いまま。シュウはもちろんだけど、俺も冬としての役目がこのままだと果たせそうになくて困ってる。こんな異常気象が続けば、この町だけじゃなくて、いずれ他の町にも影響が出るかもしれない。植物も動物も星座も、季節に合わせて姿や形を変えてるんだ。最近おかしいのは気温だけじゃないんだぜ? カナト、最近夜空を見上げたか?』
そこまでトウは一気に喋った。トウの話は分かりやすかったのでなんとなく僕の頭の中で整理ができた。でも、最後の質問の意味はよく分からなかった。怪訝そうな顔でトウを見ると、
『空、見てみろよ』
とだけ言った。僕は促されるまま部屋の窓から空を見上げた。月が見える。雲は一つもない。そして、一つだけ、違和感を覚えた。
「星が、見えない」
星らしきものが、一つも見当たらなかった。今日の日中の天気は晴れていた。星が見えてもおかしくない天気だったのに。
『星は、日中の天気や気温ほど、人の生活に影響しないからな。そこまでニュースで大きく取り上げられてないかもしれないけど、一部の人の間では大騒ぎだよ。ちなみに一か月以上この状態は続いている』
「それって、やばくない?」
何がどんな風にやばいのかはうまく説明できないけど、当たり前にあるものがそこにはない。それが一日二日というレベルじゃなくて長い期間に渡ってということになれば、今までのいろんなサイクルが崩れていくんじゃないかという不安が僕を襲った。さっきトウが説明してくれたように、少しずつ僕の周りがくるっていくような気がした。
『それでね、カナト君。お願いがあるんだ』
しばらく黙ったままだったシュウが弱々しく言葉を発した。
『僕が季節を引き継ぐお手伝いをしてほしいんだ』