Scene4
『そう。僕が秋のシュウ。あっちで熱心に本を読んでいるのが、冬のトウ』
「……うん、やっぱり意味が分からない……」
『春夏秋冬の季節だよ? まだカナト君くらいの歳じゃ知らないのかな?』
「いや、それは常識だから知ってる」
『おいシュウ、お前さー、カナトをバカにしすぎだろ。お前のかわりに俺が説明してやる』
さっきまで夢中になって漫画を読んでいたトウが、突然口を開いた。最初にバカ呼ばわりしたのはトウの方なのに、なんだか釈然としない。トウはもう読み終えてしまったのか、手にしていた本を元の場所に戻すとシュウの横に並んだ。口は悪いけど、面倒見がいい性格なんだろうな。
『まるで信じられない話だと思うけど、シュウがいうように、俺たちは、季節そのものなんだ。最近何でも擬人化するじゃん? ご当地キャラとか言ってさ……だから、季節も擬人化できるって思ってくれたら話は早い』
なるほど。そういえば僕の町にも、キャラクターの名前の一部が町の名前になっているゆるキャラがいたなぁと思い出した。
『ついでに補足すると、俺とシュウはこの町限定の季節だからな。隣町には、隣町担当の季節がいる』
「へぇ、そうなんだ。季節って、ほんとにご当地キャラみたいだね」
『お前、信じるの早すぎないか?』
トウが、僕のことをすごく不安そうな目で見てくる。その目つきは誰がどう見ても気持ちのいいものではなかった。
『騙されやすそうなタイプだよね。カナト君、大人になったら気を付けてね?』
トウの側で、シュウもかなり不安げな様子だった。
「ちょっと! 信じてほしいのが前提で僕に打ち明けてるんじゃないの!?」
『それはそうだが……お人よしだよなと思って』
トウの言葉に、シュウが何度も首を縦に振った。お人よしと言われて悪い気がしないけど、何だろう、この虚しさは……。
「……話題を戻してもらっていいかな」
『お、おう、そうだな。……で、俺は冬。こいつが秋。カナトはさ、最近ずっと、自分の町は暑いな~って思わないか? お前の今日のその格好、誰が見ても八月くらいだろ。でも、隣町に行くと、肌寒い。半袖でなんか、とてもじゃないけど過ごせない……違うか?』
気を取り直して、トウの話に耳を傾けた。トウの話に、僕は大きくうなずいた。十一月なのに、毎日汗をかいてしまうほど暑い。それも僕が住む町だけ。まるで、夏がずっと続いているかのようだった。異常気象だとテレビでは言っていた。だけど、それにはもしかしたら、僕たちが知らない理由が隠されている気がしてきた。
「うん。確かにそうだよ。でも、今の季節が暑いのと、君たち二人はどう関係してくるの?」
二人が季節である、と受け入れないとこれ以上話は進まない。あり得ない話だけど、信じることにした。