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09 3つの星悪戦苦闘




 ドラゴンが復活するとき、世界は滅亡すると言われた。


 その大きさや、破壊力、内に秘めた魔力と、ありとあらゆるものから魔力を奪うその得意体質は異常というほかなかった。ドラゴンは人間では止められない。何千、何万もの軍隊がよってたかっても勝てやしない。全滅するほどに人間の力ではどうしようも出来ない存在だった。それこそ、神と言わざる終えないその力に、人間はドラゴンを恐れた。

 だが、そのドラゴンさえも倒してしまう存在がたった1人……1頭いたのだ。 


 それこそが、ゴリラ。


 ゴリラはその圧倒的な力と、諦めない心を持ち、群れのリーダーである自覚を、人類を仲間と思っているその熱く優しい心を持ってドラゴンに立ち向かった。初めこそ互角か、推されていたが、ゴリラのフィジカルと、強烈な破壊力を持った拳がドラゴンに炸裂し、ドラゴンは深い眠りについた。

 以降、ゴリラは神として崇められ、帝国の、いや世界の英雄となった。ゴリラ神――――




「……は、はは」




 そんな伝説を知っているからか、ゴリラ神の方が強いと分かっていても、人間が刃が立たないことは分かっていた。

 このドラゴンを復活させるためにどれぐらいの犠牲を払ったんだろうか。この図体、ちょっとやそっとの生け贄で復活できるような存在ではない。年密に何十年も時間をかけて、そして復活させたに違いないと。

 何故、世界を滅亡させようとしていたのかは不明極まりない。聞こうにも、カナールは死んでしまったわけだし、共犯とは言え、何となくナーダが知っているような感じもしないし。

 復活の方法はさておき、まずは、この復活してしまった目の前のドラゴンをどうにかするのが先だと思った。




「ステラ、大丈夫か?」

「え、何で……ですか?」




 敬語が取れてしまったと、慌てて言い直したが、ユーイン様は別にそんなことは気にしないとでも言うように私を見ていた。何か、変なこと言っただろうか、しただろうかと首を傾げていれば、ユーイン様が私の手を優しく握る。私よりも長くて男性らしい指が自分の指に当たるたび、火照ったように熱い。




「え、え」

「震えている……怖いのか?」

「違います!」




 言い訳とか、何を言おうかとか以前にその言葉が出た。ユーイン様も吃驚して、私を見ては、目をぱちくりとさせていた。

 違う。

 この震えは、そんな怖いからとか、恐怖から来る物ではなく、歓喜から来る物だと、私は思っている。ユーイン様の言うとおり私は今震えている。でも、それは恐怖の震えではなくて、強敵と戦えるという喜びから来る震えなのだ。だから、ユーイン様の言葉を否定しながら、私は笑っていた。

 ユーイン様はそれに気づいたのか、小さく笑う。その笑顔はどこか安心しているように見えた。




「僕の婚約者は、ドラゴンぐらいじゃ腰を抜かさないようだな」

「勿論。それに、ユーイン様の隣に並ぶ婚約者はそれぐらい強くないと、ダメでしょ?」




と、私が言えば、ユーイン様は、また嬉しそうに笑っていた。あんな、氷付けにされたみたいな顔をしているのに、そんな風につぼみが花開くみたいな顔されたら、どんな顔して笑い返せば良いか分からないのだ。別に笑い返さなくてもいいんだろうけど。




(さてと……)




 私は、大きく深呼吸をして、ドラゴンを見据える。

 すると、ドラゴンは私を視界に捉え、低く、お腹の底まで響くような声で鳴いたのだ。




「……っ」




 その声だけで身体がビリビリと痺れ、足がガクガクと震え出す。まるで金縛りにあったみたいに動けなくなる。

 しかし、隣にいる彼は違った。




「ステラ、ついてこれるならついてこい」




 そういってユーイン様は、魔法で身体を浮かせると、閃光のような早さでドラゴンへと向かっていく。ドラゴンの頭上でピタリと止まり、手を振り上げれば、上空には数多の冷気を放つ氷柱が出現した。暗くてよく見えないが、ここにいる兵士達よりも多い数。あんなにいきなり飛ばしすぎて大丈夫なのかと心配になるぐらい。




(さすが、大魔道士って言われるほどの魔力……これぐらいじゃ魔力が尽きないって事か)




 私には、魔力がからきし無いけれど、地上戦なら得意だと、私はドレスを破り、余った部分は固く結びジャラジャラとしたアクセサリー類は地面に捨てた。こんな物あっても邪魔なだけだ。きっと、お母様もこの緊急事態なら、許してくれるはずだ。

 ヒールよりも、裸足の方が動きやすい。走り出すのと同時に私はヒールを投げ捨てる。そうして、ドラゴンの横に回り込み息を大きく吸って力を込めた右拳をドラゴンの横腹にたたき込んだ。



 スパアアアァァアアンッ! という空を切るなんとも言えない音を放ちながら、ドラゴンの身体が横に傾いた。さすがに、これで倒れるドラゴンではない。



 今の攻撃は様子見だったが、それなりに力は入れていたのだ。だが、ドラゴンの皮膚は思った以上に分厚かった。




「……ダメ、こんなんじゃ」

「加戦するよ。ステラ」

「ソリス殿下?」




 そうやって、私の隣にやってきたのは、ソリス殿下で、彼はウィンクをすると、握っていた剣を一振りし、構える。

 その表情は真剣そのもので、今まで見たことの無いような威圧感があった。これが、皇族の風格というものだろうか。ユーイン様の戦闘姿を見るのは数少なかったが、ソリス殿下は何度か見たことがあった。だが、やはり帝国の剣豪と呼ばれるのにふさわしい佇まいに、実力。

 彼が剣を振るった瞬間、早すぎて何が起っているのか見えなかった。私が、拳をたたき込んだちょうど真ん中に傷が入るように斬撃が入っていた。

 ドラゴンもこれには驚いていたのか、大きな悲鳴をあげ、その場で暴れ始めた。

 これはチャンスと、私とソリス殿下はドラゴンの足に攻撃を仕掛ける。ドラゴンの巨体を支えるその足を重点的に狙う。だが、それでも倒れなかった。寧ろ、攻撃を受けるたびに凶暴になって、その1撃が重くなるようだった。




「これは、ヤバいね」

「ヤバいですか?」

「うん。矢っ張り、人間じゃ太刀打ちできないみたい」

「そんな、簡単に諦めて、良いんですか」




 ソリス殿下が、思わぬことを言うものだから、私は思わず叫んでしまった。諦めるソリス殿下なんて見たくない。というのが本音だが、彼は爽やかなかおをしつつも、これは本当に不味いというようにドラゴンを見据えていた。

 空中で絶えず魔法攻撃を仕掛けているユーイン様も魔力に限界があるだろうし、このままじゃ確かに不味いのかも知れない。やばいのかも知れない。




(なら、どうやって……)




 私がその場で立ち止まって考えていれば、ドラゴンの尾がそこまで迫っていた。ハッと顔を上げると、ソリス殿下が私に被さるように前に立ち、その剣でドラゴンの尾を何とか防ぎ、横へ倒れた。




「殿下!」

「大丈夫、ステラ。これぐらいかすり傷」

「……でも」

「ステラが弱気なんて珍しい。俺の事気にかけてくれるのは嬉しいんだけどね」

「冗談言ってる場合」

「冗談じゃないよ。でも、まあ……このままじゃ不味いのは分かるだろ?」

「だから、どうするんですか」




 そんなの決まってる。と、ソリス殿下は笑った。こっちも、奥の手を使えば良いみたいな顔をして。




「ゴリラ神を蘇らせにいくんだ」




 

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