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09 幼き日の記憶




 綺麗なドレスより、格好いい騎士に憧れた。

 キラキラと輝く舞踏会よりも、己の正義をかけて戦う決闘の方が格好いいと思った。


 私の心はいつも、強くて格好いいものに惹かれていた。




「お母様、私乗馬してみたい。剣を振るってみたい!」

「ダメよ、ステラ。貴方は女の子なんだから……」

「でも、お母様」

「良いじゃないか。それぐらい。やらせてあげよう」

「貴方……」




 お父様は私の味方だった。私の憧れだった。

 どれだけお母様が私の興味を引くものをやらせてくれなくても、お父様は私の望むものを与えてくれた。乗馬も、剣術も。

 お母様はいい顔をしなかったけれど、私はお父様に似てたくましく育った。それで、ドレスが入らなくなったなんて怒られて、謹慎を食らったこともあったけれど。私の心はいつだって強いものに憧れていたんだ。




「私、変かな」

「変じゃないよ。ステラは、自分に素直なだけだ」

「お父様……でも、お母様は嫌だって言うの」




 幼い頃、何度も何度も口にした。「私は変なのか」と。本音だった。ずっとずっと心の中で思っていたことだったから。

 お父様は優しく笑って、私の頭を撫でてくれた。その手が大好きだった。

 自分の好きを貫ければ良い。そう思っていた……




「父上にあって欲しいと言われてきてみたが、可愛いこじゃないか。誰が、ゴリラなんて言ったんだ」

「え、えっと……帝国の星にあい、挨拶を……」

「あー、そんなにかしこまらなくて良いから。ね、ステラ」

「へ?」




 ある日、皇帝陛下に呼ばれて、皇宮に行けば、私を待っていたと言うように、第一皇子のソリス殿下が私の方へ走ってきた。キラキラと輝く笑顔に、圧倒的強者のオーラ。それら全てに目を奪われた。でも、眩しすぎて、太陽のようだとも感じていた。




「あ、えっと、でも殿下とは言え、ゴリラ神を罵倒するのはよくないと思います」

「違うよ。罵倒したわけじゃなくて、何て言えば良いかな。ステラは可愛いって言いたかったんだ。それだけ」




と、顔からひがでそうなほど真っ赤になって言われたのだ。




(うわぁ……)




 思わず、引いた。

 いや、別に嫌いとかではないのだが……こう、私に可愛いという言葉は似合わないような気がしたからだ。殿下も悪意あって言っているわけじゃないから、顔に出さないように、出さないようにと気をつけたが無理だったみたいだ。




「ああ、ごめん可愛いって言われるの慣れてない?」

「う……そういうわけじゃ」

「じゃあ、格好いい?」

「ああ、大丈夫です! 嘘つかれるよりかは!」




 何て、本音をついぽろっと言ってしまって私は慌てて口を押さえた。これは、無礼だ……首を落とされてしまうかも知れないと思ったからだ。しかし、そんな心配はなくて恐る恐る顔を上げれば、ポカンと目を丸くしたソリス殿下がそこにいた。そして、殿下は私の顔を見るなり腹を抱えて笑い出したのだ。




「あーバカ正直。ステラは面白いな。気に入ったよ」

「は、はぁ……」




 どう反応すれば良いのか分からなかった。ソリス殿下は気に入ったと、私のことを他の令嬢とは違って可愛いとか、礼儀正しくないといけないとかそういうことを言わなかった。普通、令嬢に求められるのはそういうお淑やかさなのだが、ソリス殿下は私にそれを強要しなかった。




「わ、笑いすぎです」

「だって、ステラ面白いんだもん。中々いないよ? こんな子」

「誉めてるのか分かりません」




 ソリス殿下も大概変わっているなあと思った。

 けれど不思議と嫌じゃなかったのは、彼から感じる優しさと秘めたる強さを感じたからだろうか。私は、心の中で、この人は強い、と確信していた。おさないながらにそう思った。




「なあ、ユーインもそう思うだろ?」

「ユーイン……?」

「そう。ユーイン。俺の弟さ」




と、ソリス殿下は笑うのをやめて、後ろの柱をじっと見つめた。どうやらあそこにいるらしい。


 弟ということは、第二皇子ということだろう。しかし、何故柱に隠れているのだろうか。まさか、私と同じで緊張しているのではないだろう。だとしたら、とても可愛く思えた。




「あの子は恥ずかしがり屋だから、出てこないと思うけど、まあ気にしないでやってよ」

「そうなんですか?」




 その時は、まだユーイン様の顔を見ることが出来なかった。恥ずかしがり屋だから、という理由でその日はソリス殿下と談笑してから帰路についた。

 ソリス殿下とはまた違うタイプなのかなあ何て予想しつつ、ソリス殿下が強い人ならユーイン様も強いのでは? とベッドの中で考えた。しかし、恥ずかしがり屋なら、自分に自信がない? とも。




(それなら、私のタイプじゃないかも……)




 私のことを貶さずに向き合ってくれて、ちょっと変だけど笑顔を振りまいてくれるソリス殿下の事が好きになり始めていた。勿論、恋愛感情じゃなくて友達という風に。

 そうして、またソリス殿下とあう機会があり、皇宮を案内して貰っていると、ふと足が止った。

 廊下から見える庭で、ソリス殿下と同じ銀色の髪をハーフアップにした男の子が見えた。




「あ……」

「ユーイン、ステラがくるって言ったけど来なかったくせに、1人で魔法の練習かあ」




 ソリス殿下はまたか、と言うように頭をかいた。

 けれど、そんなソリス殿下の言葉が耳に入ってこないぐらい、私は目の前の光景に目を奪われていた。

 綺麗だった。

 氷の魔法。水と風の混合属性であるそれは、私には使えないもので、私にとって憧れのものだった。




(すごい……)




 その美しさに目を奪われた。

 キラキラと輝くその景色に、心が奪われた。日の光を浴びてキラキラと輝くそれは宝石のようだった。ダイヤモンド。それが宙を舞っているように思えた。




「ステラ?」

「……凄い」




 思わず口に出ていたその言葉を聞いてか、聞かずか、ソリス殿下は「ユーインの魔法は凄いよ。俺でも勝てない」と感心したように言葉を漏らす。その言い方からするに本心だろうと思った。

 ソリス殿下はその前に、剣術を披露してくれた。大きな大人でも、その体格差をものともせずに勝つ。そんな姿を私に見せてくれた。ソリス殿下は強い。それが確信に変わった。

 けれど、目の前で繰り広げられている魔法を見て、ユーイン様も強いんだろうなとぼんやりと思った。




「あれあれ? 見惚れちゃった?」

「そ、そんなんじゃない……です」

「素直にいいなって、それがステラの良いところでしょ?」




 何て、ソリス殿下にからかわれてしまった。でも、実際そうだった。




(凄い、綺麗……格好いい)




 強くて、綺麗。それが、私がユーイン様に抱いた初めての感情だった。


 その日から数日間、私はずっとずっと彼のことが頭から離れなくなった。





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