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キング・ゴールド編 第五章 二大陸戦争⑪

「お父様」

「マリア!」

 ドン王は、ドラゴンから飛び降りると娘を抱きしめた。強く、強く……。

 ――ドクン。ドクン。

 娘の心臓の鼓動。生まれた時に抱きあげ、手のひらに感じた鼓動がここにある。

 ドン王は、安堵の吐息を漏らす。



「よく、生きて」

「フン、ワタクシはあの程度じゃ死にませんわ。それよりも、包囲を維持したまま兵士を少し下げてくださいまし」

「何? まさか、あの戦いを見届けろと」

「……まあ、何て言いましょうか。ワタクシの為に尽力なさったようですし、少しくらいは好きにさせてあげようかなと」



 歯切れ悪くマリアは言った。よく見ると、頬が少し赤い気がする。

 ドン王の目に鋭い光が宿った。

「もしや、あの男に好意を」

「ちっがいますわ、ボケ!」

「ぼ、ボケ……」

「ワタクシがお慕い申し上げているのは、小鞠社長ただ一人。あの女みたいな男は、単なる同僚」

「む、むう。そうか。……しかし、そういうことならば。う!」



 激しく王は咳をする。

 マリアは、咄嗟に父の背中に手を回し支えた。

「……あ」

 マリアの視界に、王の手のひらが映る。その手には、べったりと血が付いていた。

「心配はいらん。まだ、死なん」

「ですが!」

「問題ない。……おい、少し下がれ。怪我をしている者は治療を受けろ」



 王の命令は、伝令係の魔法によってすぐさま伝わった。

 ドラゴンナイト達は、輪を広げつつ後方へ下がる。

 人垣で出来た闘技フィールドに、ヒューリとゾルガが刃と爪で火花を散らす。

 戦況は、どうやらヒューリが不利のようだ。


 ※


「ハア!」

 一息で三度の斬撃。次いで蹴りを放ち、銃を速射し、鋭い突きを出す。

 並の戦士ならば、成す術もなく屠られる攻撃は、悉くゾルガに防がれる。

 足場が悪く、少し動くだけで激しく体力が失われていく。

 ヒューリは、肩で息をしている。だが、ゾルガは息を乱さず、飄々と攻撃を捌いて後ろに跳躍した。



「……次元断ち・散華だったか。あの技を出せたことで、何かを掴んだな。明らかに斬撃の質が変わった」

「へ、そうかよ。全く、ダメージを受けてねえじゃねえか」

「今のところはな。惜しい、惜しいな。お前に才はないのは間違いがないが、自らの技量を高めることに一切の躊躇がない。息を吸うように努力ができる。それは、強者に至る一つの道だ。

 時間があれば、その刃は俺に届いただろう。しかし、出会ったタイミングが悪かった。お前は、俺に殺される運命しか残されていない。――悲しいな。ならばせめて、ワーウルフの強さを体験して屍を晒せばいい」



 ――雄叫びが轟く。あまりの声量に、兵士達は耳を塞ぐ。

 ヒューリは、頭がぐらつく感覚がしたが、耳を塞がない。そんな余裕はなかった。

 狼は、体を沈めると足に力を込めた。激しく駆動する筋肉。

 ――来る、来る、間違いなく来る。それは、予想するまでもなく確定事項。

 ゆえに、ヒューリは目を見開いた。

 極限の集中力が、一秒を一分に引き延ばし、目に映る全ての動きが愚鈍になっていく。しかし、その中であっても、ゾルガの動きは迅速であった。

「――」



 声さえ上げる時間さえなかった。

 眼前には、十メートルの距離を一秒未満で潰し、爪を振り上げているゾルガがいる。

 迎え撃つは、過去最高速度の刃。究極の脱力、無駄を省いた身体操作、――そして、斬ることに全力を尽くす精神。

 剣に捧ぐことで放たれる斬撃。――その名も、【放浪永礼流 最奥の境地 次元断ち・散華】。

 縦に一直線の斬撃。刃が通り過ぎた後に花開く鮮血。ゾルガの左腕が、斬り飛ばされ雪原を転がっていく。



「が、はあ!」

 しかし、ヒューリとて無傷では済まなかった。ゾルガは左腕を斬られた瞬間、咄嗟に右腕を振るい、ヒューリの脇腹を深く削いだ。

「いぃいやあああああ」

 小鞠の悲鳴が空に響く。



 こちらに向かって駆けよろうとして、護に止められている。

「駄目っすよ小鞠社長。――ッ! 先輩、立って! 僕らと一緒に、まだまだ仕事していきましょうよ。僕らの歩みは、こんなところで終わって良いはずないっすよ」

「……あ」



 返事をしようとして、弱った声しか出ないことに気付く。

 焼けるような痛みが、腹部から全身へ駆け巡った。冷えた汗が吹き出し、温かな血液が流れていく。

「おい、ヒューリ」

 その声は、兵士達の歓声を縫うように聞こえてきた。

 視線を向けると小鞠の横にいたカルフレアと目が合う。普段とは異なり、凄まじく怖い顔をしている。



「そんなもんかよ」

 痛みと遠のく意識の狭間で、確かにそう言われた。

 うるせぇよ。カルフレアに、内心中指を立てる。

「う……」

 足に力が入らず、膝立ちになった。

 ゾルガを見ると、彼は痛みなど感じていない様子でゆったりとヒューリに近寄ってくる。このままでは危ない。反撃しなければ。――しかし、意志に反して、体はピクリとも動かない。



「ヒューリ、根性見せなさい。ここで勝たなければ、あなたは自らの夢に届きませんことよ」

 誰……だ? 

 気だるげに眼球を動かす。すると、騎士達の隙間からチラリと、マリアの姿が見えた。

 必死な形相で、叫んでいる。



 彼女の声は、ちょっと聞こえにくい。大勢の声に、彼女の声はかき消されている。いいや、そうじゃない。意識が千切れてしまう寸前なのだ。

「貴公はそんなものか!」

「ゾルガを追い詰めている。もう少しだぞ」

「立て、もっとすごい所を見せろ」



 周囲でヒューリ達を囲んでいるドラゴンナイト達が、一斉に声を挙げている。

 ――ああ、これだ。まるで次元決闘みたいだ。観客達が叫び、応援してくれるあの一体感。ヒューリの仕事。この道を歩むと決めた場所。

「ヒューリ、負けるな」

「立ち上げるのだ。まだ、勝機はあるはずだ」



 いつの間にか飛ばされて戻ってきたクスが叫び、その横でザーギャが尻尾を地面に叩きつけ興奮気味に声援を飛ばす。

 ――この声援達は裏切れない。だって、ヒューリは次元決闘者なのだから。

 ヒューリは、コクンと頷くと頭を振って叫ぶ。



「うあ、あああ」

 体中の力をかき集めて立ち上がる。

 体を叩くような歓声を力に、業魔の柄を握りしめた。

「……ほう、立ち上がったか。なかなか、骨がある。さすが、あの男の孫か」



 ゾルガは、ヒューリの眼前に立つと緩慢な動きで右腕を上げる。

「惜しい。だが、俺は夢のために生きねばならん。お前を殺し、この場を離脱する」

「させ、るかよ」

「ほう、ではどうするつもりだ? 実際問題、お前に打つ手はない」

 事実だ。立っただけで奇跡。もう、指一本だって動きそうにない。



 ――だが、

「それがどうした。……俺は、辛くても、諦めたくない。歩き続ける。見果てぬ夢かもしれない。泣きそうでも、自分の弱さに嘆きそうだけど、でも! ハア、可能性に挑む幸福を手放したくない。俺は、次元決闘者の永礼 ヒューリ。……ん、俺はいつだってチャレンジャーだ」

 ありったけの力を込めて、刃を振るった。業魔は、いつだって壁を切り裂いてきた。だが、刃はゾルガの体に触れて止まる。

 ゾルガは、ため息を零し、深々と拳をヒューリの胴体に突き刺した。

 激痛、回る景色。

「――ッ?」



 目を開けると、曇天が見えた。仰向けになっていたことに、数秒かけて気付く。

 気を失っていた? いや、そんなことよりも、ゾルガは!

 焦る気持ちで、首を動かす。ゾルガは、先ほどの場所で立っていた。

 どうやら気絶したのは一瞬のようだ。



 安堵したのも束の間、体に痛みを感じないことに気付く。

 体は金縛り状態。虫の息で命を紡いでいるのがやっとのありさまだ。

「さらばだ!」

 ゾルガが、身を沈める。どうやら、止めを刺すつもりのようだ。距離にして五十メートルほど。ゾルガの脚力ならば、瞬きの間にその距離はつぶされるだろう。



 死なない。絶対に!

 体はろくに動かない、だったら頭を使え。

 逆転の可能性を見つけろ。希望にすがれ!

「……業魔」



 業魔は手元にあった。暗黒の魔力がユラリと刀身から立ち上っている。

 この魔剣にできること。

 一つ、闘気を吸って斬撃を強化すること。

 二つ、巨大化と最小化。

 三つ、剣の魔力を用いた爆発。それによる斬撃の加速。



 魔剣の力とはとどのつまり、魔法使いのようにマナを魔力に変換し、貯蔵。そして、その魔力を用いて発揮する機能のことだ。

(ジジイは、最強の戦士だ。その最強を支えていたのが、この業魔だ。何か、他にも機能があるのか?)

 ゾルガが消失した。



 ヒューリは、腹部の痛みを無視して立ち上がろうとする。しかし、上半身を起こすだけで精いっぱいだ。

 ゾワリとした感触。

 間違いない。もう眼前に来ている。少しの時間もない。

「あ、ああああああああ」

 ヒューリは、咄嗟に魔剣の魔力を爆発させた。爆発のエネルギーによって、弧を描く斬撃。火花が散った。

「しつこいぞ」



 ゾルガの爪を、どうにか弾けたようだ。

 次は、どうする。死ぬ、死ぬ、死ぬ。ああ、やめろ。過去の過ぎ去りし思い出が、脳内に飛来する。走馬灯か? 嫌だ、違う。考えるべきことは他にある。

「あ!」

 煌めきがあった。成功する保証もない荒唐無稽なアイデア。だが、縋るしかない。

 ヒューリは、魔力を大爆発させ、ゾルガを大きく吹き飛ばした。



「生き汚い。覚悟しろ、ヒューリ。俺が地面に降り立ち、足に力を込めた時が、お前の死だ」

「うるせえええええ。業魔、お前の魔力を貸せ!」

 ――イメージしろ。俺は知っている。この試みを成功させるビジョンを。



 握った柄から業魔の魔力を感じる。背筋が凍るような濃厚なる力を、ヒューリは手に取って別の形に加工する様を頭で思い描く。――そして、紡ぐ。勝利に至る言の葉を。

「龍は怒り狂った。朝も昼も夜も。幾度月と太陽が巡っても憤怒は消えず、空は曇天のベールを纏う」


 ※


「あれは!」

 マリアは、思わず手で口を覆った。

 ありえない。魔法は学問。だが、扱うには、そもそも魔力発生器官を体内に持っていないといけない。

 アース人は、魔法がなかった世界の人々だ。当然、アース人であるヒューリに、魔力発生器官はない。ゆえに、マナを魔力に変換できず、どれだけ魔法を学んでも奇跡を発動させることはできないのだ。



「どういう、つもりですの」

 ヒューリの姿を凝視する。息も絶え絶えの様子。だが、注目すべきはそこではない。ヒューリの持つ魔剣の魔力が立ち上り、それは宙で渦を巻いている。

「……魔剣の魔力に妙な動きがある。も、もしかして魔剣の魔力を使って魔法を発動させるつもりですの」



 隣にいたドン王が、眉間に皺を寄せる。

「馬鹿な。そんな方法なぞ聞いた事がないぞ。いや、それよりも、あの男が発動させようとしている魔法は、我が国でも指折りの難易度を誇る上級魔法ではないか」

「ええ。ナム・レビン・エクレール。あれならば、ゾルガの速度にもついて行けるでしょう」

「無理だ。素人がいきなり上級魔法を発動させるなぞ。普通は、優秀な師のもとで数十年学ばなければできないぞ」



「いいえ。ワタクシは、魔力の問題さえクリアできるならば、発動できると思いますわ」

「根拠は?」

「根拠は……ないですわ」

 ドン王は、呆気に取られた様子で娘を見る。

 マリアは、なぜか得意げにフフン、と鼻を鳴らした。



「ま、強いて根拠を上げるならば、ヒューリの戦い方ですわね。

 彼の使う放浪永礼流は、万能の戦闘術。しかし、効果的に運用できなければ、意味がありませんわ。あの男は、敵の呼吸、技や魔法の仕組み、筋肉の動きに至るまで観察・考察し、そこから最適な戦闘方法を選択し、勝利していますの」



「ほほう。で、あるならば、ヒューリは観察眼が優れているのだな」

「ええ、ご明察。あの男は、ワタクシの戦いぶりを近くで観察してきた。自画自賛ですが、ワタクシは世界でも指折りの魔法使い。ワタクシを研究することは、魔法使い対策の確立につながりますわ。ならばこそ、魔法を使うワタクシを理解しているならば、そのマネだって可能なはず」

 マリアは、爛々とした瞳でヒューリを見ている。

 ドン王は、僅かに瞳を見開き、朗らかに笑った。


 ※


「雷鳴は彼方より。一つ鳴るたびに命は怯えた。矮小なる者よ、汝らの明日は龍の雷に委ねられた」

 魔力は無色だ。これはただの燃料。これをもとに、別の存在へ作り替える。今回は、雷。マリアのように幾本もの雷を作ることはできない。ならば、一つに絞る。

 できることに注力する。



「ふうううううう」

 ゾルガの長く息を吐く音が聞こえる。

 天高く飛ばされていたゾルガが、とうとう雪原に着地する。

「祈れ。それだけが命ある者に許されたただ一つの行いである」

 ゾルガの姿勢が低くなった。もう間もなくここへ、ヒューリの命を絶ちにやってくる。

 魔法とは何だ? 最強の魔法使い、マリアはどうやって魔法を発動していた。



(あいつは……。詠唱を大事に発音していた。詠唱こそが、魔力を魔法へ至らせるコツだと。イメージをしつつ、詠唱はした。あとは、一節分の詠唱と魔法名を唱えるだけ)

 呼吸が浅くなる。

 ゾルガの姿が消え、彼がいた場所の雪が派手に飛び散った。

 ヒューリは、震える手にどうにか力を込めて、魔剣を真正面に向ける。



「があああああ!}

 突如現れたゾルガの姿。振り上げられた爪は、陽光にぎらついている。

 ヒューリは声帯を震わせて、言の葉を紡いだ。

 マリアは、言っていた。魔法名を告げるのは、蓋を開ける感覚に似ていると。解放しているような、心地よさ……。



 確かにマリアは、魔法を発動させる寸前は、少しだけ口角を上げて機嫌よさそうだった。

 こんな体のどこもかしこも痛い時に、そんな気持ちになんてなれない。だが、魔法使いは皆、どんな状況下でも魔法を放っている。



「龍の怒りは落雷となって堕ちる」

 おかしい……。詠唱の最終段階になっても、雷が現れていない。

 駄目だ、失敗する。

 直感した。このままではいけない。何が、何が足りないんだ。

 振り下ろされる爪。



 心臓が大きく鳴った。

 ――託す。ああ、きっとそうだ。

 当然の話だ。自分が鍛えた技を信じる。ヒューリだって、放浪永礼流の技に全幅の信頼を置いている。だから、命がけの戦いでも伸び伸びと使えるのだ。

 魔法も、魔法使いもきっと同じ。



「ぬ!」

 ゾルガの爪が止まる。

 業魔の刀身に紫電が煌めく。

 危険を感じ取ったのか、ゾルガは瞬間的に身を翻そうとする。



「逃がすかよぉおおおおお」

 ヒューリは、己が命運を魔法に託した。

 今まで溜め込んでいたものを開放するように魔法名を空へ放つ。


 ――【ナム・レビン・エクレール】。


 迸る紫電。音速を超えた雷撃が、ゾルガの体に直撃する。

「が、ああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 苦しそうに呻くゾルガ。彼の美しき毛並みは所々が黒く焼け焦げ、しかし、まだ瞳から闘志が消え失せていない。



「ハア、ハア、ああ」

 疲労が増した。魔法の発動による余波だ。鉛を身に纏ったような重さに苛まれる。

 だが、もう少し。勝つ、勝つ、絶対に勝つ。親父を祖父を超えたい。あの人たちに負けたくない。あの偉大なる人達は、壁でありライバルだ。

 ここでゾルガを超えられないならば、いつになっても彼らを追い越せない。



「今、限界を超える。俺は、負けたくない」

「永礼 ヒューリィイイ。邪魔をするな。俺の、俺の夢を」

 ゾルガは、雷撃に体震わせながらも、一歩、また一歩と近づいてくる。ありがたい。もう指一本さえ、スムーズには動かせないのだ。

 ゾルガは、膝立ちしているヒューリに蹴りを放つ。



 腰の入ってない情けない蹴りだが、ヒューリからすればバットで殴れているのと変わりない。顔、肩、そして怪我をしている脇腹。蹴られた衝撃で意識が遠のく。

 だが、意識を手放さない。

 緩慢な動きで、懐からハンドガンを取り出すと、無造作に三発発砲した。



「ぬ、うう。がはあ」

 腹部に当たった弾丸。ゾルガは、血を吐く。弾丸自体は毛皮に防がれているようだが、衝撃がダメージを受けた内臓に追い打ちをかけているようだ。

「お、のれえええ」

 ゾルガが、爪を振り上げた。

 轟音を上げて迫る死。ヒューリは、前に倒れ込みつつ業魔の切っ先を前に向けた。

 交差する刃と爪。

 周囲から息を呑む気配が満ちた。



「な、ぜ……」

 ゾルガは震えながら自らの腹部に刺さる業魔を見た。

 一方のヒューリは、傷を負っておらず苦しそうに息をしているだけだ。

「お前のその爪。最も自信がある攻撃なんだろ? 止めを刺す時、必ずくると思っていたよ。だから、予測ができた。だから、数瞬速く倒れ込むことができた」



「……そうか。俺は負けたのだな」

「そうでもないさ。あんた、千年龍の攻撃でだいぶ弱ってたんだろ。俺はおこぼれの勝利をもらったにすぎないさ」

「だが、勝ちは勝ちだ。戦いに言い訳は不要。さあ」



 ゾルガは、業魔を腹部から引き抜くと、己が身を差し出した。

「殺せ」

「……断るぜ」



「何故?」

「俺は殺し屋じゃない。単なるエンターテイナーだぜ? それにな、お前の命をどう扱うかは、この世界の奴が決めるべきだ」

 ヒューリが周囲を見渡すと、ドラゴンナイト達が少しずつ輪を縮め近づいてきた。

 ゾルガは諦めたように吐息を漏らす。


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