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キング・ゴールド編 第二章 シンデレラマリア②

「うっし、ルールはバトロワ式。最後の一人がマリア姫の夫だ。基本ルールはスリータイム制と同じ。ファーストタイムは、近接武器、小火器、初級魔法だけが使えるぜ。三分経過したらセカンドタイムに移行。特殊武器、重火器、中級魔法の使用を許可する。そして、ファイナルタイムに移行したら、お祭り騒ぎだ、カーニバル。巨大兵器や上級魔法といった規格外の力を使い放題だぜ」



 ミリーは、マイクを握り締め、立ち上がった。

「おーし、始めるぞ。オラ、猛ろ観客ども。この世界の行く末に関わる大きな戦いだぜ! そんで次元決闘者たちは気合入れろ!」

「うおおおおおおおおおおおおおお」



 空気が揺れる歓声。

 高鳴る鼓動。

次元決闘者たちは、己の獲物を見定め、闘志を高めていく。



「構えて……ディメンションファイトレディ」

 ヒューリとカルフレアは、護の背後に移動し、銃のセーフティを解除した。

「三、二、一」

 ミリーが深く呼吸する。

「ゴォオオオオオオオオオオウ!」



 開始の合図と同時に、次元決闘者たちは隣り合う者に刃を振るった。

 当然、ヒューリたちにも数多の刃が閃く。

「ク、うざってぇ」

 ヒューリは、突き出された槍を刀で弾き、真横から迫る斧をハンドガンで受け止めた。

 いずれの攻撃も重く、鋭い。手が、激しく痺れている。



「こいつら、一流の闘技者だ。さすが厳選したって言うだけあるね。ヒューリ、護! ファランクス・ファイアやるぞ!」

 カルフレアが叫び、護は大盾を地面に突き刺した。

「【オヌ、守り給え。三つの門は閉じた】」

 護が妖力を注いだ大盾は、三つに分離。ヒューリたち三人は背中合わせで立っている。その彼らを囲む形で三つの盾は展開し、妖力のバリアを張った。



「それが何だってんだよ?」

 鼻で笑った次元闘技者が、大鎌を振り下ろしてきた。しかし、ヒューリ達は微動だにしなかった。護の張った盾と妖力のバリアは鋼鉄の城壁とイコールの頑強さを誇る。戦車の砲撃であっても、突破は難しいだろう。

「うぇ!」

 案の定、弾かれる刃。



「ざんねーん」

 カルフレアは晴れやかに笑うと、拳を握り締め、瞳を閉じる。

「可愛い俺の小さな焔よ。ダンスの下準備を頼む【ファイア・パーティー】」

 幾百もの小さな火の玉が上空に出現する。周囲にいた次元闘技者たちは盾を構え警戒するが、小さな灯火は浮かぶだけで一向に動こうとしない。

 闘技者たちの構えが僅かに緩んだ。

 ヒューリとカルフレアが口角を上げ、銃を撃つ。

 弾丸の行方は空。呆けたように見守る次元決闘者たち。弾は灯火に触れた。――瞬間、風船のように爆発した。



「ぐあああ」

「あ、なに」

「どこから?」



 周囲にいた次元決闘者たちは、腕や足を撃ち抜かれ地に倒れ伏す。

「へへ、決まったな」

「フフン。どうだ? 俺のファイア・パーティーの味は。爆発で弾丸を曲げ、任意の場所にお届け。初見なら防げん」

 二人の男は、悪戯っ子のように無邪気、いや邪悪に笑う。

 護は、そっと「実は仲良しだよな」と呟いた。


 ※


 刃と魔法が空間を占領し、怒号が入り乱れるフィールド。非日常が繰り広げる中においてもなお、その男は異様であった。

 黄土色の長髪をなびかせ、人の身の丈の二倍はありそうな幅広の両手剣を片手で担ぐ。見るからに立派な武器だが、彼は肩の飾りで済ませるつもりなのか。群がる闘技者を空いた手で殴り気絶させていく。



「おいおい、んだよ、コイツぅうう」

「共闘しようぜ。アイツはバケモンだ」

 十人の男達が結託し、男を包囲する。

 男……ゾルガは、氷を閉じ込めたような瞳で男達を観察した。



「……ほう、盾役が前に、遠距離攻撃が得意な者が後方にか。戦を知らぬ次元決闘者にしては、まともなようだ。そら、俺が採点してやろう」

 ゾルガは、剣の柄を二本の指で握ると、軽々と持ち上げた。さらに彼は、直立不動の姿勢になると、手でかかって来いとアピールする。

 この場に呼ばれた次元決闘者は、いずれも一流の戦士。己こそが強者であると自負している。ゆえに雄叫びを上げ、怒りを発火させるのは、致し方ない反応と言えた。



「死ねえええええ」

 怒りの突撃は、全方位から。ゾルガは、微動だにしない。

 闘技者達は刃を手に、己が鍛え上げた技量を遺憾なく発揮する。

 振るう、振るう、振るう。重撃、最速の一撃を。

「あ?」

 ――これだけの波状攻撃。間違いなく勝った。

 しかし、数人の闘技者達は、仰向けで倒れていた。一体何が、と顔に書かれている。

 体を起こすと、刃を振りぬいた姿勢でゾルガが佇んでいる。



「うそ、だ」

 理解した。痛みと共に。

 敗北者達の顔から血の気が引いていく。彼らは柄しか残っていない武器を投げ捨て、投稿した。

 ゾルガは、それを見届けると、瞳の温度をさらに下げた。

「つまらん。最近の闘技者とはこんなものなのか? ん」



 ゾルガの視線が向かう先に、煙が立ち上っている。多数の弱者が地に倒れ、三人の強者が油断なく立っている。

「おお」

 瞳に僅かな熱がこもった。ゾルガは、自ら蹴散らした次元決闘者には目もくれず、舌なめずりする。その様は、さながら獲物を前にした獣のそれである。



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