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最終章 また、ここから ~一部完~

「ハア―、ダリ―」


 ヒューリは、スーツのジャケットを脱いで、手に持った。この異世界は暑い。汗が滝のように流れていく。


 ヒューリは汗を拭い、裏路地にあった売店でジュースとおにぎりを購入。最近では、異世界でもおにぎりが人気らしく、見かけることも多くなった。


 のんびりと人気のない道を歩みながら、おにぎりをかじった。少々塩辛い。まだまだ本場の味には追いついていないようだ。


「ああ、なってねーな」


 遠く遠雷のように甲高い音が聞こえてくる。ドワーフ辺りが、鍛冶仕事に励んでいるのかもしれない。


 ――暑い。頭が蕩けそうだ。だからかもしれない。物思いにふけってしまう。


 シルビアとリベンジマンが起こした事件は、異世界中で大ニュースとなった。


 シルビアと繋がりがあった各異世界の重鎮たちは次々と逮捕された。彼女は警察に拘束され、事情聴取に応じているらしい。


 イワサは無能の烙印を押され、ディメンション・スマイルの人気は地に落ちた。


 最低な事件だったが、つがい街の住民に死者が出ず、エンチャント・ボイスの面々が無事に生還できたこと。それは不幸中の幸いだったといえる。


 エンチャント・ボイスの仲間たちは、イワサのことがあり、ヒューリを心配していたが、正直父親の心配はまるでしていない。


 イワサは、生き生きと仕事をしている。あの男のことだ。どうせすぐに会社を立て直すに決まっている。彼は鉄人だ。息子だからよくわかる。


「おっと、ここは駄目だな」


 ヒューリは、人が群がっている道を避け、小道をさらに進む。曲がりくねっているが、目的地に近づいているはずだ。


 ――そういえば、オゴはいつの間にかマザースフィアに格納されていた。


 誰も回収していないらしく、怪談話みたいに一人で戻ったらしい。


 イワサに、問い詰めてみたが、彼は苦々しい顔をしただけで何も答えてはくれず沈黙を貫いた。


 しばし、歩き続けると、大きな闘技場の裏口に到着した。


 ヒューリは、こっそりと裏口から中に入り、選手控室に向かった。腕時計を見れば、午後二時を少し超えたところ。少し早く到着しすぎたかもしれない。


「遅い!」


 控室のドアを開けるなり、ヒューリは小鞠の怒鳴り声を聞いた。


 驚いて目をパチクリする。


 他のメンツはすでに揃っており、イラついた顔でヒューリを見ていた。


「ありえないですわ。遅刻、ですの」


「そうっすよ。もう試合五分前っすよ。ミーティングする時間ないっす」


「これだから残念な後輩君は。チーム戦なんだよ。こんな調子で勝てないよね」


「ハア? 何言ってんの。ほら見ろ。俺は遅刻してねえ。むしろ、早く来たろ」


 ヒューリは腕時計を突き出す。まじまじと腕時計を見た皆は、一斉にため息を吐いた。


「その時計、電池が切れてるみたいよ。一時間前で止まってる」


「え! ……あ、ほんとだ。ま、まあ、ちょうど良いじゃねえか。相手にハンデやらないとな」


「まず謝れ!」


 全員が一斉に怒鳴ったが、ヒューリは口笛交じりに控室を飛び出した。


 後ろからマリア、護、カルフレアが付いてくる。


「ほら、早くしろ。始まっちまうぜ?」


「ありえないですわ。何ですか、その態度?」


「先輩、あとでオゴってくださいよ」


「ゴージャな。この街にある一番高い料理屋。そこでシャーリアの分もオゴれよ後輩」


「……考えとく」


 ヒューリは、業魔の柄を握り締める。


 通路の先に光が見えた。歓声が遠くから聞こえてくる。


「さあ、派手にやろうぜ」


 高鳴る鼓動。


 気持ちを切り替えた。戦いが待っている。


 今日もいつもと変わらず勝利のために死力を尽くそう。


 ――彼の名前はヒューリ。夢は世界で一番の次元決闘者になること。


 この全てが繋がった世界で、果てのない夢を追い求める無謀な男。


 だが、ヒューリは必ず叶うと確信している。


 次元決闘者の物語は、終わらない。


 また、どこかの世界、どこかの闘技場でお会いしよう。


 手に汗握る熱き戦いが、君を待っている。

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