VS裏切者……
若干前回の話を変えさせていただきました。
なぜか急に現れたナイフが気になったので……
「裏切者?何を言ってるんだお前は?」
目の前の男は不気味な笑みを浮かべ続ける
しかしその顔には…汗が滲んでいた
「つい先程。参加者の緋色楓さんの死体を教室のロッカーで見つけた」
俺は表情を変えずに口を開く
「しかし鬼は俺が倒していた。つまり鬼以外…参加者の誰かが殺したことになる。だから裏切者がいるんだよ」
「なるほど…しかしどうして俺なんだ?」
「今までは俺の単なる憶測でしかなかったんだが、今のお前の一言で確信した」
『お前…なんでここが鬼のスタート地点ってことを知ってる?』
「__ッ」
男はしまった…という顔をした
「そ、それは……そう。鬼が体育館から出るところを見たんだよ」
焦り、誤魔化すように言い訳を述べる
「ふーん。どういう鬼だった?」
「なんか筋肉がすごい鬼だったぜ?」
「なるほど…あいつか」
「そ、そうそう」
男は誤魔化しきったって顔をする
そこで俺は、口を曲げ…
「嘘だな」
と短く声を出した
「う、嘘だって?そ、そんなわけないだろ」
「いんや嘘だ」
男の否定をすぐに首を振って否定する
「鬼が体育館から出ていったタイミング。体育館の近くに居たやつ。そして体育館の入り口を見ることが可能だったやつは居なかった」
「な…なんでそんなことわかるんだ」
「俺のスキルだよ。これのお陰でやりやすかった」
「んな……」
「それともう1つあるぜ」
俺は人差し指をまっすぐピンッと立てて
「お前はなんで最初俺を攻撃した時。共犯者だと判断した?校長は何も言ってないし説明にも書かれてなかったぞ」
「あ…」
男は絶望する。この状況で挽回するなど無理だろう
「………」
「無言は裏切者だと言ってるようなもんだ……ぜ!」
俺は勢いよくナイフを振り下ろす
しかしそのナイフは獲物を刈り取る前に弾き返されてしまった
そしてそれと同時に強烈なボディブローが俺を襲う
「ったく面倒だな」
その拳をナイフを持っている反対の手で受け止める
しかし威力は止まらず俺は吹き飛ばされてしまう
「異彩さん」
雫は俺の元へかけやってくる
「ああ、大丈夫だ」
雫はホッとする
「その行動は認めたと見做していいか?」
「ああ、それで構わない。だが…」
徐々に歩みながら口を開く
『お前らの命はそこで終わりだけどな』
あたりには空を切る音。床の悲鳴など様々な音が聞こえる
「ったくなんでお前そんな強いんだよ」
俺は拳を払いつつ問う
「お前に言うとでも思うか?それより、ついてこれるお前がおかしいんだよ」
……そう、俺達は今命をかけて戦っている
今までは鬼との戦闘だったが…今回は人だ
注意深く戦わないと足元をすくわれるだろう
「そりゃ鬼と散々戦ってきたからな。負けるわけにはいかない」
ナイフで反撃しつつ答える
そのナイフも軽々避けられカウンターが飛んでくる
「俺はアイツラとは核が違うぞ」
「だろうな。人間ってのは知能を持ってるから嫌いだ」
こんな話しながら戦っているが、互いに隙は見せない
見せた瞬間死を意味するからだ
左手で牽制しつつナイフを突き出す
相手はそれを受け流しカウンターのパンチを繰り出す
俺にそれを受け止める力はないため。避ける
「っらぁぁ」
俺は一旦縮地を使用し離れ、着地と同時に縮地を使用し距離を詰める。
そしてそれと同時に渾身の拳を叩き込む
「っぐぅ、流石に効いたぞ鳩鏡ぉ」
その攻撃を受けてなおそいつは身じろぎすらせず反撃をしてくる
俺はその攻撃を足場にその場を離脱する
「っは……しんどこれ」
詰めていた息を吐き出す
「どうした鳩鏡ぉ…まだまだ終わらねえよなぁ?」
嫌な笑みを浮かべつつ、男は距離を詰めてくる
(どうすれば勝てる…?どうすればこの現状を打破できる?)
考えつつ攻撃を避ける
「はぁ…このまんま続いてもつまんねえな」
男は距離を取り呟き、何かを考える素振りをする
そしてその後すぐになにか妙案を思いついたのか、俺ではなく雫を見る
そこで俺は何か嫌な予感がし、雫の元に駆け寄ろうとするが…
「良いこと思いついた…」
次の瞬間。とても不気味な笑みを浮かべた男が、雫の前で攻撃態勢を取っていた
「え…」
雫は呆気にとられた表情になる
そして男は雫に拳を振り下ろす
「やめろぉぉぉぉぉ!!!」
縮地を使い全力疾走で雫の元へ向かう…
多分拳が雫に当たるまで残り0.5秒
今の縮地だと間に合わない…
それを知っていてなお、俺は向かう。
諦めたくないから、認めたくないから…
もう、失うのは嫌だから…
『諦めないで』
次の瞬間。何処からともなく声が聴こえた
その声は…とても優しく、とても愛おしく
とても、懐かしい声だった
そこで俺の体に変化が起こった
体がとても軽くなったのだ…
………いや、戻ったといったほうがいいだろうか
そして、今の俺には力が満ち溢れていた
(これなら…)
地に足をつけ、もう一度縮地を使う
「___ッ」
俺の体は、次の瞬間には雫と男の間にいた…
そしてそのままナイフを男の腕に突き刺す
それと同時に軽く跳ね上がり、ナイフで腕を切り裂きつつ男の顔面に強烈な膝蹴りをお見舞いする
「な、なんだ…」
「異彩……さん?」
二人は呆気にとられた表情をする
それもそうだろう。なんせ届くはずなかったからな
俺は自分の手を眺め、軽く握ってから…
左腕を雫を庇うように広げ、右手で持っているナイフを目の前で仰向けに倒れ、顔だけをこちらに向け呆気にとられている男に突き出し、口を開く
『さぁ、SHOW TIMEだ』




